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【新興ASIAウォッチ/第92回】どうなるミャンマー、日本は様子見でいいのか?

日本の「様子見」スタンスに批判

ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、政権を掌握してから2ヵ月が経った。この間、市民の反対デモは長期化し、国軍側の弾圧も過激化。何度も流血の惨事が起こり、収拾がつかない状況が続いている。

ヤンゴン在住の日本人、日本企業の駐在員に連絡を取ると、みなどうしていいかわからず、混乱のさなかにいる。また、コロナ禍にもかかわらず帰国した人々は、心配が募る一方になっている。

それもそのはず、なにより、日本政府のスタンスが定まらないからだ。完全な「様子見」で、アメリカやEU諸国と違って、国軍による市民弾圧を非難することはしても、制裁措置に踏み切るまでには至らない。

そんな日本のスタンスを象徴するのが、丸山市郎・駐ミャンマー大使と、国軍が外首に指名したワナ・マウン・ルウィン氏との会談だ。この席で丸山大使は、国軍の暴力行為を非難する日本政府の意向を伝えたが、ワナ・マウン・ルウィン氏をそのまま「外相」と呼んでしまったのである。

これは、事実上、軍事政権を認めたことになるので、ミャンマーの民主化勢力、それを後押しする国際社会から激しい非難を浴びることになった。日本政府は慌てて、呼称を「当局に指名されている外相と言われる人」としたが、後の祭りだった。

10年間で8.5倍に増えた進出企業

2011年、軍政が民政に移管され、国が開放されたことで、多くの日本企業がミャンマーに進出した。当時、ミャンマーは「最後のフロンティア」と言われ、世界中から投資が集まった。私も“のこのこ”と取材に出かけた。全日空の成田ヤンゴン便が開設されると、観光にも出かけた。

ヤンゴンは、英国が「ガーデンシティ」と呼んだように緑豊かな素晴らしい街で、日本の昭和の高度成長時代のような活気にあふれていた。私の知人の実業家も、「ここなら、もう一度、日本でやったことを試せる」と、さっそく進出してビジネスを始めた。

現在、ミャンマー日本商工会議所の会員数は436社で、民政移管前の2010年度末の51社と比較すると、なんと8.5倍にも増えた。ミャンマー進出の主な日本企業を挙げると、たとえばイオンは現地企業と共同してスーパーの「イオンオレンジ」を運営している。また、丸紅、三菱商事、住友商事などの大手商社は、これまでティラワ経済特別区で工業団地を造営してきた。さらに、ゼネコンと組んでヤンゴン駅舎跡地の開発、軍事博物跡地の開発なども行なっている。

ティラワ経済特別区には、スズキ自動車をはじめとして多くの製造業が進出して生産を行なっている。さらに、ヤンゴン証券取引所は大和総研と日本取引所グループが出資してつくられた。

「混乱が早く収まってほしい」と帰国実業家

国軍クーデター後の混乱で、これらの日本企業は、営業・操業を停止するなどの事態に追い込まれた。従業員の安全のため、事務所を閉鎖したところもある。また、ヤンゴン証券取引所は一時的に取引を中止した後に再開されたが、事実上、まだ機能していない。

すでに私の知人の事業家の1人は、運営を現地の人間に任せて日本に引き上げ、いま、こう嘆く。

「このまま混乱が続くと、事業をたたまざるをえないかもしれない。正直な話、政権が軍でも民主政権でも、きちんと市場経済をやってくれればそれでいい。軍事政権だったときも、民主政権になってからも、賄賂が横行するような点は変わっていない。ただ、開放されて市場経済になったので、後戻りだけはしてほしくない。ともかく、混乱が早く収まってほしい。そればかり願っている」

日本は口だけでなにも行動せず

日本政府の「様子見」というスタンスと比べると、欧米の民主主義国家の対応は素早いうえに手厳しい。民主主義と人権を人類の普遍的な価値としているのだから、これは当然と言えるだろう。アメリカはブリンケン国務長官が、これまで何度も非難声明を出し、制裁措置を発表してきた。EUと英国、カナダも同様の制裁措置を発表してきた。

3月22日に発表されたアメリカの非難声明は、国軍に対し、拘束された人々を解放し、市民やジャーナリスト、労組メンバーらへの攻撃をやめて、治安部隊による殺りくを即座に停止せよというものだった。さらにアメリカは、民主政権に権力を再び移譲しろと要求した。この要求に合わせて、軍事政権の要人たちへ制裁措置、国外資産の凍結、経済制裁などを追加した。

しかし、日本は、アメリカやEUのようなことができない。国軍を非難し、「暴力はやめてほしい」「民主政治に復帰を」と言うはするが、なにも行動していない。日本のミャンマーに対するODAは、他国に比べて巨額なのに、いまだにどうするのか、態度を保留している。

この点を聞かれた茂木敏充外相は、「援助を継続するか制裁を科すかという単純な状況ではない」とし、「さまざまな要素を考慮して決める」と述べるにとどまった。要するに「様子見」を続けるというだけだ。

なぜ、国軍はクーデターを起こしたのか

茂木外相が言うように、たしかにミャンマーの混乱は、「単純な状況ではない」。クーデターを起こした国軍が「悪」であり、アウンサンスーチーをリーダーとするNLD(国民民主連盟)が「善」という見方は、あまりにも一方的だ。また、国軍の背後には中国がいるというのも、単純化した見方にすぎない。

なぜなら、ミャンマーの軍人も一般市民も、みな中国を嫌っているからだ。ミャンマーで取材したとき、人々の本音を聞いたが、中国をよく言う人は一人もいなかった。

「中国はミャンマーを豊かにしてくれない。みんな奪っていくだけだ」と、中国人と商売をしているミャンマーの商人は嘆いた。「日本人のほうがマシです。いっしょに商売して、私たちにも儲けさせてくれる」と言ったミャンマー人もいた。

しかし、中国はミャンマーに莫大な投資をしている。それは、中国にとって、ミャンマーが欠かせない地政学的に重要な地域だからだ。

中国が掲げる「一帯一路」は、ミャンマーとの間の物流ルート「中国・ミャンマー経済回廊」なしでは、実現しない。これが完成すれば、中国は雲南省から直接インド洋に出られるようになる。原油・天然ガスを輸入する際のマラッカ海峡の依存度を、劇的に低下させることができる。

そのため、中国は、欧米諸国よりはるかにアウンサンスーチーに対して、優遇政策を取った。アウンサンスーチーと民主勢力も、中国にすり寄った。国軍も中国とはつながっていたが、さすがに、これ以上の中国との蜜月は許せなかった。それが、国軍クーデターを引き起こした遠因でもある。

スーチー民主派は問題を放置し続けた

アウンサンスーチーは、民主派のシンボルではあるが、政治リーダーとしての資質は欠けている。そのため、ミャンマーの実権を握る国軍とは妥協を重ね、表向きは反国軍を装っても、国軍利権を露骨に奪うようなことはしなかった。2016年にNLD政権が成立したが、これは国軍の既得権益を守ったうえでの民主化だった。

しかし、ここ2年ほどで、スーチーのNLDは豹変し、国軍利権を侵食するようになった。また、欧米諸国にあまり相手にされなかったので、中国と親密になり、そのためにカンボジアやラオスのような「債務の罠」に陥ってしまった。このままでは、ミャンマーはカンボジアやラオスのように、中国の属国になりかねかったのである。

スーチー政権はまた、ロヒンギャの人権問題を放置し続けた。ミャンマーには、じつに100以上の少数民族が存在し、ビルマ族は人口の7割を占めているとはいえ、少数民族の存在は大きかった。民主化した以上、もはや彼らを差別し続けることはできない。しかし、スーチーは、この問題に積極的に取り組まず、ロヒンギャに関しては、事実上見殺しにしてしまった。

ロヒンギャ問題は、ほかの少数民族にも波及する。ミャンマー北部には、カレン族がいるし、中国南部の貴州省や雲南省などの山岳地帯に住むミャオ族の支系とされるモン族もいる。彼らは、スーチー政権に対して不信感を抱き続けてきた。このように見てくれば、ミャンマーの問題が「国軍」vs.「民主派」という単純なものではないことがわかるだろう。

そんなミャンマーに、日本は多大な援助をしてきた。それを考えれば、欧米諸国のような単純なスタンスを取れないわけである。

未来は見ているだけではやって来ない

そうは言っても、国軍と市民(民主派)の対立は深まる一方になっている。国軍は、民主派の力を削ごうと、プロパガンダ作戦に出た。3月23日、国軍はスーチーの「汚職疑惑」を告発する映像を公開した。

これは、スーチーに金銭や金塊を渡したと証言する元地方高官の映像で、彼は米ドル、金塊を買い物袋に入れ、スーチーに繰り返し渡し、「好きに使ってほしい」と伝えて渡したと証言した。また、スーチーの関連財団に、国の不動産を相場の半額以下の賃料で貸す手助けをしたとも述べた。  

この映像公開とほぼ同時に、ミャンマー国軍は反政府メディアを批判し、ネット規制継続の方針を継続すると発表した。国軍の報道官は、「ミャンマーに関するニュースはほとんどがフェイクだ」と訴えた。こうなると、もはやなにが正しくて、なにが間違っているのかわからない。はたして、この先、ミャンマーがどうなるのかは、まったくわからなくなってきた。

私はこれまで、まがりなりにも「ジャーナリスト」として、記事や本を書いてきた。しかし、今回のミャンマーに関しては、確信を持って言えることはなにもない。ただ、数年前、ヤンゴンの街を歩きながら思った楽観論は撤回するほかなくなった。ただし、これだけは言えるだろう。明るい未来は、単に「様子見」しているだけではやってこない。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2021年03月29日


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