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ミャンマーで軍部クーデターが起こり、コロナ禍も続いているので、東南アジアの情勢は混沌としている。タイ、ベトナム、ラオスの3国は、いまだにミャンマー軍部を非難せず、ただ静観しているだけだ。とくにタイは自身が軍事政権だけに、なにもしようとしていない。また、ASEAN全体としても加盟各国は「内政不干渉」が原則だから、動きがつかない。
したがって、欧米がいくらアウンサンスーチーを支持し、ミャンマー軍部を非難しようと、情勢は大きく変化しそうにない。そんなわけで今回は、本来ならレポートすべきこの問題を避け、ほかの問題を取り上げることにしたい。
こう書くとなにかもっともらしいが、正直、私はこの先のミャンマーがどうなるか、本当にわからない。ヤンゴンでビジネスをしている私の知人たちも同じ思いだ。なにしろ、アウンアサンスーチーにはリーダーとしての政治能力がなく、市民の反対デモは起こっていてもリーダーがいない。そのうえ、ミャンマー国民の多くが中国嫌いときているので、欧米もどうしていいかわからないといったところが真相だからだ。
バイデン米政権は、クーデターを起こした軍部を非難してはいる。しかし、実効的な手立てはない。中国も表立っては動けない。となると、ヤンゴンの混沌とした状況は今後も続きそうだ。それを見越して、一部の邦人はANAが飛ばした特別便で引き上げてきてしまった。
さて、そういうわけで今回取り上げたいのは、カンボジアのトンレサップ湖の水位が下がり続け、その被害が甚大になっているという話だ。トンレサップ湖は、東南アジア最大の淡水湖。この水位が急激に下がり、水産資源が大幅に減少し、湖と周辺で暮らす約100万人の人々が困窮しているという話である。
トンレサップ湖と言っても、知らない人がほとんど。日本に暮らす私たち日本人にとっては、話自体がピンと来ないかもしれない。しかし、この湖が世界遺産にしてカンボジア最大の観光地アンコール・ワットのそばにあると言うと、耳を傾ける人もいると思う。あるいは、アンコール・ワット観光のついでに、この湖を訪れた人もいるだろう。そういう人には、ぜひ、知っておいてほしい出来事だ。
アンコール・ワットのあるシェムリアップの町から、車で30分ほど行くと、川岸の村にたどり着く。この村の家はみな高床式で、雨季になると高床を支える柱はみな水に隠れてしまう。つまり、川といってもトンレサップ湖の一部で、そこにはボートが並ぶ船着場がある。この船着場から観光客はボートに乗って、湖観光に出かける。出発してしばらくすると川幅が広くなり、「水上集落」が見えてくる。そして、湖に出るとその広さにあっと驚く。
私もかつて観光客の1人としてボートに乗り、水上集落を見て回った。水上集落といっても、スーパーも病院もあって湖に浮かぶ大きな村である。もちろん、学校もあって、子供たちは船で通ってくる。
湖上には水上集落とともに、観光客用のスポットがあり、湖で獲れる水産物やお土産用の民芸品などを売っている。もちろん、レストランもある。観光の目玉は、ワニの養殖施設だ。ここでは、生け簀にいるワニに餌をやったり、剥製のワニと記念写真を撮ったりできるので、観光客は大喜びである。
私の後輩のライター、旅行作家の中山茂大氏は、なんとこの水上集落に勝手に押しかけ、しばらく滞在した。
「村の人は親切で素朴。多くの人が漁民で、湖で採れる魚で暮らしを立てています。その魚が、じつにうまいんですよ」
カンボジアの雨季は4月から半年間続くが、この間、トンレサップ湖の水位は4、5メートルも増し、湖は水域を広げ、琵琶湖の約20倍の広さになる。その面積は乾期の最大5倍まで拡大し、多くの魚たちの命を育む。そして、10月から始まる乾季に、魚たちはトンレサップ湖からトンレサップ川を下り、さらに大河メコンへと下っていくのだ。
トンレサップ湖の水上集落での暮らしは、前記した中山茂大氏が著書『世界のどこかで居候』の中で紹介している。また、魚料理に関しては、料理研究家のコウケンテツ氏がNHKの番組『コウケンテツが行くアジア旅ごはん カンボジア編』で紹介している。どちらも一読、一見の価値がある。
最近になってようやく、現地メディアや環境意識が高い欧米メディアが、トンレサップ湖の水位低下を報道し出した。メコン川は、これまで上流にできた多くのダムによって水量が減り、それとともに大きな環境問題を引き起こしてきたが、その影響をトンレサップ湖もモロに受け出したのだ。水上集落で暮らす漁師たちが、いま「魚が獲れなくなって生活できなくなった」と訴えている。かつて網を張るだけで1日数百キロも獲れた魚が、まったく獲れない日もあるのだという。
じつは、トンレサップ湖を中心とした水系では、淡水魚たちが地球最大規模の回遊を繰り広げている。その研究を行なっている米国国際開発庁(USAID)のゼブ・ホーガン氏の話を、『ナショナルジオグラフィック』誌が紹介している。
その記事によると、魚たちの回遊は雨季が終わる9月下旬に始まる。雨季でトンレサップ湖の水量がピークに達すると、溢れた水がトンレサップ川に流れ込み、魚たちをメコン川へと運ぶ。そのなかには、絶滅が危惧されるメコンオオナマズや巨大コイ、カンボジアの国魚パーカーホなどがいる。そのほか100種近くの魚たちが川を下るので、川は魚たちであふれかえり絶好の漁期となる。トンレサップ川は約120キロ下流にあるプノンペンで、メコン川に合流する。
しかし、乾季が終わって雨季が始まると、メコン川が増水するので、トンレサップ川の流れは逆流する。今度は、トンレサップ湖に向かって流れ、メコン川上流の産卵場所で生まれたばかりの稚魚たちも、トンレサップ湖にやってくるのだ。
「トンレサップ川を移動する魚の数は、多い年で50億匹をはるかに上回ると推測されます」と、ホーガン氏は記事で述べている。
メコン川からトンレサップ川への逆流が起こるのは、前記したように、毎年、5月から9月末までの雨期のときである。ところが、近年、メコン川が増水しなくなり、逆流量が激減し出した。 2019年、トンレサップ湖への流入量の減少は甚だしく、2000年頃の平均水準から約4分の1も減少した。2020年も同じような状況が続いた。2019年はエルニーニョによる気候変動で、雨季の雨量が少なかったこともあるが、メコン川上流に次々にダムができたことも大きな原因だ。
トンレサップ湖の水位低下の影響は、漁獲量だけの問題ではない。魚の生態系を変えたうえ、湖周辺に広がる湿地帯を消滅させ、湖周辺に生息する絶滅危惧種の動植物の個体数の減少まで引き起こしている。
もちろん、この一帯で暮らす約100万人の人々の生活を脅かしている。漁労生活が成り立たなくなり、観光客も減った(これはコロナ禍の影響もある)。また、水量の変化とともに水質が悪化し、マラリア、デング熱、急性呼吸器感染症、結核などの疾病の蔓延を助長させている。現地の報道によると、水上集落の住民たちは、それでも家を維持するために湖にとどまっているが、若者たちは仕事を求めてシュムリアップやプノンペンなどの都会に出て行ってしまうという。
ここから一気に政治・経済的な話になるが、現在、カンボジアの政治・経済を動かしているのは、中国である。首都プノンペンには中国人街ができ、アンコール・ワットを訪れる観光客の半分以上は中国人だ。そんな中、コロナ禍によって、経済は危機に瀕している。もっとも打撃が大きいのがアンコール・ワットの観光産業で、2020年のアンコール遺跡公園のチケット販売額は1865万ドルと低迷。この額はなんと、前年比91%減だという。
この状況を見越して、中国は今後ますますカンボジア援助を強める意向で、カンボジアも中国依存を強めるほかなくなっている。しかし、中国は、環境問題などまったくおかまいなしである。はたして、トンレサップ湖の水は、今後、回復するのだろうか?
現在、アンコール・ワットの玄関口シュムリアップの新空港の建設を手がけているのは、もちろん中国企業の雲南省投資控股集団である。この空港は2023年に完成する。コロナ禍がいつか収束し、アンコール・ワットに観光客が戻ってきても、そこはほぼ中国となっていて、トンレサップ湖はいまよりはるかに小さくなっているだろう。
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※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2021年02月26日
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