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【新興ASIAウォッチ/第67回】米中貿易戦争で好機到来のASEAN経済

■これまで順調に発展してきたASEAN

2019年が始まって早くも1ヵ月、世界が大きな転換点を迎えていることがはっきりしてきた。米中貿易戦争が今後ますますヒートアップしていくのが確実となったからだ。これは、世界第1位と第2位の経済大国の経済戦争だから、その影響を受けない国はない。影響といっても、それはほとんどが「悪影響」であり経済的な大混乱である。

ところが、この悪影響を受けないばかりか、むしろ好機になると思える地域がある。新興アジア諸国が形成する「ASEAN」(東南アジア諸国連合)経済圏だ。今回は、このことについて、私見を述べてみたい。

まずは、ASEANの現況だが、ひと言で言えば、今世紀に入ってASEAN経済は順調に発展を遂げてきた。域内諸国の発展度に差はあるものの、経済成長率は各国軒並み5〜6%を記録し、域内総生産も確実に伸びてきている。例えば、ASEANのリーダー格のタイは自動車産業を中心に製造業のハブとなり、マレーシアは電機・電子産業の集積地となった。また、遅れをとっていたベトナムも鉱業開発が進むとともに工業化も進み、最近ではIT産業も盛んになってきた。インドネシアもフィリピンも同じように発展し、ASEAN域内の人々の暮らしは、10年前に比べたら格段によくなっている。

ASEANの総人口は、現在、約6億2000万人、GDPは2兆6000億ドルに達している。これは、英国やインドと同じ規模だ。ASEAN諸国は、2015年12月「AEC」(ASEAN Economic Community)を発足させた。これは、ASEANの枠組みのなかでのヒト・モノ・カネの動きの自由化を促進させるというもので、これによりASEANはより自由な経済圏となった。その結果、いまや域内の1人当たりの平均所得は4500ドルを超えた。もはや発展途上国とは言えないレベルであり、これまでの統計から見ると5000ドルを越えると自動車保有ブームが本格化し、中流層が拡大していく。

そんなとき起こったのが、米中貿易戦争である。米中ともASEAN経済に大きく関わっているので、一見すると、米中貿易戦争はASEAN経済の足を引っ張るように思える。日本も欧州も経済的なダメージは避けられないと見られているのだから、ASEANだけがダメージを免れるわけがない。そう考えるのが普通だ。しかし、私はそう考えない。なぜ、そうなのだろうか?

米中貿易戦争は中国の覇権挑戦阻止が目的

米中貿易戦争は、関税戦争である。これまでお互いに報復関税を掛け合い、現在、いったん休戦(3月1日が期限)に入っている。しかし、この戦争ははたして関税戦争だけだろうか?ファーウェイ(華為技術)最高財務責任者(CFO) の孟晩舟(Wanzhou Meng)を逮捕したアメリカの行動を見れば、それだけではないのは明らかだろう。トランプ大統領と米商務省、USTR(米通商代表部)は、中国に対してさらなる市場開放を要求し、ハイテク技術を盗むなと警告している。つまり、これはアメリカの「中国のこれ以上の発展を阻止する」という明確な国家意思の表明である。中国がアメリカの世界覇権に挑戦することをアメリカは許さないと決めたのだ。

アメリカは、トランプ政権になってから急に「中国叩き」を始めたわけではない。アメリカでは以前から、中国の「一帯一路」「中国製造2025」に対する警戒感があり、もはや看過できないレベルになってとき、トランプ政権が誕生した。つまり、「中国叩き」は共和党も民主党も一致している国策だ。トランプと鋭く対立している民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、筋金入りの中国嫌いである。ブッシュ政権時代には、「北京オリンピックをボイコットせよ」と主張したくらいだから、「中国叩き」に関してはトランプに反対しない。中国を徹底的に叩く。そして、2度とアメリカの世界覇権に挑戦できなくなくする。そういうアメリカの国家意思は固いと思うべきだ。

となると、この戦争の勝敗ははっきりしている。中国の敗戦である。この先、日本がプラザ合意で経済敗戦し、半導体産業、コンピュータ先端技術、そして電気産業を失ったように、中国も中核産業を失い、国力を大きく落とすだろう。

中国経済の失速がかえって好影響

米中貿易戦争の結果、中国経済が失速しているという認識が、今年になって世界中で一般化している。最近、発表された中国の経済指標は、どれも軒並み急落している。1月21日に北京(中学国家統計局)は、2018年のGDP成長率が前年比6.6%となり、2年ぶりに前年実績6.8%増を下回ったと発表した。しかし、昨年後半の自動車販売、スマホ販売、輸出入額などを見るといずれも急降下しているので、この数字はあやしい。もともと北京が発表する数字はあやしいので、実際の成長率はもっと低いと思われる。下手をすると、中国の成長は止まったのではないかと思われる。

中国の経済成長モデルは、「世界の工場」というたった一つのフレーズで表せる。モノを安価につくって世界中に輸出する。輸出依存経済と言っていい。したがって、アメリカが中国製品に門戸を閉ざせば、中国経済が失速するのは当然である。ただし、中国でモノをつくっているのは、中国企業ばかりではない。日本をはじめとする世界中の企業であり、これらの企業は中国からの輸出が儲からなくなれば、撤退せざるをえなくなる。

では、撤退して、次の生産基地をどこに求めるのか?中国より人件費が安いASEAN諸国であろう。すでに日本企業も「チャイナ・プラス・ワン」の下に、中国離れを進めてきている。今後は、これに拍車がかかり、本格的な「グッバイ・チャイナ」が進むはずだ。中国にサヨナラして、東南アジアに生産拠点を移す。こうして、ASEAN経済はいま以上に活性化するのだ。

最近のビジネスの傾向は「資本はグローバルでも、生産は地産地消」である。このことも、ASEAN経済には味方する。トランプは世界に出たアメリカ企業に「帰ってきてくれ」と言っている。アップルに対して工場をアメリカ本土に戻すことを要求している。こうした動きが世界中に広がれば、中国にある生産拠点では中国向けのものだけをつくることになり、それ以外は本国か、本国が適さないなら、ASEANのような地域に移すことになるだろう。いまや、生産といっても分業が進み、たとえば組み立てだけなら工賃が安い国がいい。その結果、たとえばバングラデッシュ、インドネシア、ベトナムなどが発展してきた。

独自の「インド太平洋」構想と「RCEP」

このような情勢変化にASEANは敏感に反応している。1月17~18日にタイのチェンマイで開かれたASEAN外相会合では、なんと「インド太平洋戦略」についての議論が活発化した。

ASEANが推し進めようとしているのは日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋構想」とは違うもので、なんといってもASEANが中心的な役割を果たして大経済圏をつくっていこうというものだ。シンガポールが議長国だった2018年4月の首脳会議の議長声明で初めて公式に表明され、これまで議論が進んできた。要するに、アメリカをはじめとする太平洋沿岸諸国、東アジアの日本、中国からインドまで、ASEANを中心に取り込んでしまおうというのだ。

「インド太平洋構想」と並んで、もう一つの大構想が「RCEP」(東アジア地域包括的経済連携)である。これは、日本、中国、インドなどとASEANが自由貿易圏をつくるというもので、実現にはハードルが大きい。アメリカが中国の参加に対して横槍を入れる可能性があるからだ。しかし、もし実現すれば、参加16ヵ国で世界人口の48%にあたる35億人、世界貿易額の29%(9兆ドル)という巨大な広域経済圏が誕生することになり、ASEAN経済はますます発展するだろう。

このほか、ASEANはEU(欧州連合)とも1月21日、ブリュッセルのEU本部で外相会合を開き、FTA締結方針を確認し合った。ASEANとEUのFTAが実現すれば、ASEAN各国に生産設備を置く日本企業にとって、対EUの輸出基地が自動的に誕生することになる。

今年は大きな政治イベントが目白押し

このように見てくれば、米中貿易戦争(覇権戦争)は、ASEANにとっては好機であるのがわかるだろう。ただし、今後の政治状況を見ていくと、不安点もある。まずは、タイで2月に予定されている総選挙。これによって、政治は民政に還るが、延期される動きもある。軍事政権の意思不統一、野心的な国王の存在、政権復帰を狙うタクシン元首相らの勢力などがもつれると、軍部の分裂と民主勢力との衝突などの波乱が起きる可能性がある。日本企業をはじめ、海外企業は民政移管の実現を望んでいるが、はたしてどうなるだろうか?

次は4月に行われるインドネシアの大統領選挙および総選挙。現職で再選を目指すジョコ・ウィドド大統領がこれまで4年間のインフラ整備や物価安定、治安対策などでの実績で有利な選挙戦を展開しているから、波乱は起こらないと見られている。したがって、こちらは問題がなさそうだ。

もっとも安定しているのがマレーシア。マハティール首相が復帰して以来、中国離れを進め、前政権の汚職の摘発などで国民の期待に十分応える政治を行なってきている。ただし、問題はマハティール氏が94歳と高齢も高齢なことだ。高齢と言えば、ミャンマーの最高権力者アウンサンスーチー国家顧問も74歳となったが、後継問題が不透明である。

フィリピンでは5月に上院議員の半数と下院議員全員の選挙、自治体首長、自治体議員全員の選挙という中間選挙がある。ドゥテルテ政権はこれまで「米国離れ中国寄り政策」を展開してきたが、国民は中国を信頼せず、この政策には批判的だ。それがどう出るかだが、この大統領はポピュリズムの人間なので、親米に戻る可能性がある。フィリピンにとって最大の危惧は、中国が実効支配するスカボロー礁などの南シナ海の軍事支配を強めることだ。これを阻止するには、アメリカの力を借りるしかなく、そうなると、米中覇権戦争は大歓迎と言えるのだ。

いずれにせよ、ASEAN10ヵ国のさらなる経済発展は約束されている。ASEAN域内は、タイ、フィリピンを除き、2060年から2070年までの間は人口が増加する。人口ボーナスが続くからだ。

では、最後に、日本はどうすべきかを考えてみよう。日本は米中覇権戦争で中国が弱体化し、今後ASEANから引く可能性があるので、その分の穴埋めを求められるだろう。日本企業は中国から撤退してASEANに軸足を移し、アメリカやオーストラリアと協力して、ASEANとの関係を強化していく。これがベストの道ではないだろうか。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2019年01月29日


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