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【新興ASIAウォッチ/第68回】ジャカルタに日本製の地下鉄が走る日

世界でも最悪の交通渋滞都市ジャカルタ

ジャカルタに行った人なら、このインドネシアの首都が世界でも最悪の「交通渋滞都市」であることを実感しているだろう。もちろん、アジアではワースト1の交通渋滞都市だ。バンコクやシンガポールでも渋滞に見舞われることはある。しかし、ジャカルタの渋滞は度を超えている。なにしろ、渋滞にはまって帰国便に間に合わなかった日本人ビジネスマンや観光客の話を、私は何度も聞いたことがある。それで、ジャカルタに行くと必ず言われるのが、「フライト時刻の最低でも4時間前に出なければダメです」ということだ。

2017年12月に、市内とスカルノハッタ国際空港を結ぶ「スカイトレイン」(空港鉄道)が開通し、約1時間で行けるようになった。しかし、鉄道の駅まで行くのに渋滞にはまってしまうので、結局、出る時間は変わらない。渋滞に苦労しているのは、外国人ばかりではない。地元の人たちは、聞けば、涙ぐましい努力をしている。郊外からのマイカー通勤者は、夜明け前に家を出る。あるいは、バイクタクシーと契約して、毎朝必ず迎えに来てもらうという。

ただ、これはある程度の高所得層の話で、一般庶民となると、「BRT」(バス・ラピッド・トランジット:バスによる高速輸送システム)や路線バス、乗合いのミニバスなどを使うしかない。しかし、これらも渋滞に巻き込まれ、時間通りに運行されることのほうが珍しい。では、歩くほかないと思うが、ジャカルタ市内の道路には整備された歩道がほとんどない。歩こうと思っても歩けないのである。まさに、これこそ本当の「渋滞地獄」だ。

人口増、経済成長でクルマが激増

いったいなぜ、ジャカルタはここまで最悪の交通渋滞都市になったのだろうか?
それは、やはり、人口増と経済成長のせいである。

インドネシアの人口は現在約2億6000万人、2035年には3億人を突破すると予測されている。ジャカルタの人口は、東京23区と同じく約1000万人だが、「ジャボデタベック」(ジャカルタ、ボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシの略称)と呼ばれる首都圏全体では約2500万人に上り、この人口は、いまも地方からの流入で日に日に増えている。

そして、インドネシアは、近年、年平均5〜6%の経済成長を続けている。その結果、中流層も増え、クルマを持つ人が激増した。現在、インドネシアの自動車販売数は、年間100万台を超え、ASEANではNO.1であり、世界でも17番目にランクインしている。いまや、ジャカルタ首都圏には約2300万台のクルマがあるという。このクルマの多くが毎日、市内に流入にするのだから、渋滞が起こらないわけがない。

郊外電車はあっても市内電車網がない

ジャカルタ市内で見かけるのは、ほとんどが日本車である。東京よりも日本車の比率が多いのではと思うほど、日本車が走っている。しかし、高性能の日本車も、ジャカルタの渋滞にはまると、宝の持ち腐れだ。人口増と経済成長のスピードに、都市交通の整備が追いつかない。これが、渋滞の最大の原因で、市当局はあの手この手の対策を講じてきたが、効果を発揮していない。

例えば、市の交通当局は、これまでに「3 in 1」(スリーインワン)という渋滞緩和策を実施した。これは、1台の車に最低3人は乗るとしたもので、1人乗り運転で走ることを禁止した。また、ナンバープレートの末尾番号による偶数と奇数車の規制、大通りのなかにバイク進入禁止エリアを設けるなどの対策を行ってきた。しかし、どれも渋滞解消の決め手にはならなかった。やはり、交通インフラ、つまり、市内の公共交通の整備が最大の解消策だからだ。

ジャカルタには、バスやバイク以外の公共の交通機関がないわけではない。鉄道では、ジャカルタ市内と都市圏の中核都市を結ぶ近郊電車のネットワークがあり、朝夕の通勤客に対応している。東京で言えば、JR中央線や京浜東北線のようなもので、なんと、これらの路線には日本のJRの中古車両が走っている。この近郊路線は6路線あるが、そのすべてが市内と郊外を結んでいる。つまり、JR山手線や東京メトロのような、市内を縦横に結ぶ路線がない。これが、いつまでたっても渋滞地獄が解消されない最大の原因なのである。

世界でも有数の日本の鉄道技術

というわけで、ジャカルタ市が期待したのが、日本の地下鉄の導入である。インドネシア政府は、円借款によるジャカルタの地下鉄整備事業に乗り出し、この3月、ついにインドネシア初の地下鉄(ジャカルタ都市高速鉄道:MRTJ)がジャカルタ市内で開業することになった。

MRTJは中央ジャカルタから南ジャカルタまでの約16キロを約30分で結ぶ。全区間に13駅が設けられ、6駅が地下、7駅が地上に位置する。日本側は当初、駅ができてもその周りに歩道が整備されていないことを懸念したが、州政府により歩道も整備され、いまやオープンを待つだけになっている。すでにメディアにも披露され、試運転に乗った記者たちの評判も上々。日本の鉄道の素晴らしさに、驚きの声も上がったという。

日本の鉄道といえば、その技術力の高さと車両の安全性には定評がある。例えば、アルゼンチンのブエノスアイレスの地下鉄には、東京メトロ丸ノ内線の車両が走っている。中東のドバイの地下鉄「ドバイメトロ」は、三菱重工、大林組、鹿島建設、三菱商事などのジョイントベンチャーが受注し、2010年に開業している。また、エジプトのカイロの地下鉄は日本の技術が導入され、車両は主に近畿車輛と東芝製だ。現在、2022年のサッカーW杯に向けて、カタールの首都ドーハで建設中の地下鉄「ドーハメトロ」も、日本の企業連合が中心になって受注している。

そんな中、特筆すべきはニューヨークの地下鉄で、ここの車両の約3割は川崎重工製である。昨年、ニューヨーク交通局は新たに車両の発注を行ったが、これも川崎重工が受注し、その結果、2023年にはニューヨークの地下鉄車両の5割以上が日本製になる。日本の鉄道事業は、現在、鉄道市場におけるビッグ3とされる中国中車(中国)、ボンバルディア(カナダ)、シーメンス・アルストラム(独仏連合)と比べても、一歩もひけをとらないのだ。なお、ジャカルタのMRTJの車両は住友商事と日本車輌製造が共同で受注、日本車輌の工場でつくられた新型車両がジャカルタの街を走る。

中国の高速鉄道に敗れた汚名挽回

MRTJは南北線の第一期区間に続いて第二区間も予定され、さらに東西線も計画されている。このほど開業する南北線は、前記したように市内中心部からビジネス街の目抜き通りを通って南下する。ASEANの事務局の前あたりで地上に出て、その後は高架を走り、南部の高級住宅街を結ぶ。工事から車両、運営管理などすべてが日本の技術で行われる初のケースとなる。開業時目標は、1日当たり17万人とされているが、関係者は目標達成を間違いないと見ている。ただ、この地下鉄ができたぐらいでは、交通渋滞が容易に解消できないのは間違いない。

最後に、日本人の観点から、ひとつ言い添えておきたい。それは、このMRTJプロジェクトが日本のプライドを賭けた事業であるということだ。インドネシアでは、先に高速鉄道計画(ジャカルタ、バンドン間を結ぶ)が持ち上がり、2015年に、日本と中国が受注をめぐって争った。その結果、中国が勝ち、新幹線を輸出する計画だった日本側は落胆・激怒したという経緯がある。しかし、この中国版高速鉄道はその後紆余曲折があり、昨年秋にやっと工事が始まったばかりである。当初、2019年開業とされた予定も大幅に遅れ、このままでは2024年開業がやっとだろうと言われている。

つまり、MRTJは中国に敗れた高速鉄道事業の汚名挽回のチャンスであり、日本のプライドを賭けた事業でもある。ジャカルタの街を日本の地下鉄の新型車両が走る。その日が、刻一刻と近づいている。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2019年02月26日


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