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【新興ASIAウォッチ/第58回】シンガポールで「シェア自転車」について考える

観光に来た若者に大人気のシェア自転車

「所有」から「共有」(シェア)に。世界はシェアリング・エコノミーの時代に入った。経済の仕組みが変わりつつある。そこで今回は、シェアリング・エコノミーの代表的なサービスといわれる「シェア自転車」について考えてみることにした。というのも、ここ1、2年、シンガポールに行くと、シェア自転車で街中を走り回っている若者たち(ほとんどが観光客と思う)を、本当によく見かけるようになったからだ。

私は自分がまだ十分に若いと思っているが、さすがに自転車で移動するのはきつい。しかし、若者たちにとってはこれほど便利な移動手段はないようだ。
「乗り捨て自由。それに安いです。1日、自転車で走り回れば、主な観光スポットは全部回れますよ」
と、旅行会社の人間も勧める。シンガポールはコンパクトな街だから、たしかに自転車の利便性は高い。しかし、熱帯だけに、日向を走れば汗だくになる。

アプリ一つで利用可能、乗り捨て自由

現在、シンガポールのシェア自転車は3社がサービスを展開しているが、一番人気があるのが「oBike」(オーバイク)。街中のいたるところ、とくに駐輪スポットにはオーバイクのイエローカラーの自転車がいっぱい止まっている。乗り方は簡単。まず、アプリをスマホにダウンロードして、電話番号やクレジットカードを登録してアカウントを作成する。そうして、デポジットに49シンガポールドル払えば、すぐに利用可能だ(デポジットはあとで返却される)。

アプリでは、GPS機能により、近くにある自転車が無数に表示されるので、そこに行き、QRコードを読み取ってBluetoothで自動開錠。これで、自転車はもうマイバイクになり、あとはどこに行くのも自由。乗り終わったら、辺りの適切なところに置いてロックして終わり。料金は30分1シンガポールドルだ。

本当にこんな便利なものはないが、シンガポーリアン自身はあまり利用していないようだ。とくに通勤利用は少ない。というのは、シンガポールでは公共交通が発達していて、バスやMRT(電車)を使えばどこでも行けるからだ。とはいえ、シェア自転車の普及は進み、さまざまな問題が起こっている。故障自転車の「放置」、場所を選ばない「迷惑乗り捨て」などだ。これに頭を痛めた交通当局は、バス停の一角を黄色い線で囲み、そこに駐輪するように促している。

中国では街中に自転車の「墓場」が出現

現在、シェア自転車先進国と言えば、なんといっても中国である。ここ数年で中国の大都市ではシェア自転車があふれるようになり、例えば上海では安価で手軽な移動手段、通勤ツールとして大活躍するようになった。 中国では、あまりにシェア自転車が普及したため、昨年、シェア自転車会社が6社も倒産し、シンガポール以上の問題が起こっている。

中国のシェア自転車といえば「mobike」(モバイク)だが、モバイクはいまや世界最大のシェア自転車会社となり、アジア圏ばかりか欧州にも進出している。もちろん、シンガポールでもオーバイクと市場争いしているし、最近は日本でもサービスを始めた。

モバイクもスマホ一つで利用から決済までアプリ上ですべてが行われる。そこで、このサービスを従来の「レンタサイクル」(貸し自転車)と比べると、最大の特徴は、貸し出し業者(店)が存在しないことだろう。そのため、借りても元の場所に返す必要がなくなり、乗り捨てが可能になった。そうして、街中に乗り捨てられた自転車をまた次のユーザーが使うということで、中国国内であっという間に広まったのである。

しかし、あまりに自転車の数が増えすぎたため、最近は問題が続出。とくに、乗り捨てて川に投棄されたり、壊れた自転車の「墓場」ができたりということが起こっている。要するに、ユーザーのマナーが悪すぎるのだ。ただ、さすが(!?)中国で、人手が余っていて、安い賃金で働く労働者がいるため、そうした放置自転車を人海作戦で片付けても、会社はまだ利益が出るのだという。

台北とニューヨークのドック式バイク

台湾もシェア自転車が普及している。ただ、台北では乗り捨て自由ではなく、固定式のドック(駐輪場)が街中にあり、そこから借りて、またどこか別のドックに返すというシステムになっている。これは公共型のシェア自転車システムとして台北市交通局が始めたもので、「YouBike」(ユーバイク)と名付けられて、市民の足として定着している。

ところが、昨年、シンガポールでお馴染みの乗り捨て式(ドックレス式と呼ぶようだ)のオーバイクが殴り込みをかけた。普通に考えると、ドック式よりドックレス式のほうが圧倒的に便利だ。だから、モバイクがユーバイクに圧勝するかと思ったが、現在のところ苦戦しているというから、不思議だ。マナーの違いなのだろうか。

じつは、同じことがニューヨークでも起ころうとしている。昨年、私は久しぶりにニューヨークに行ったが、驚いたのは、マンハッタンのいたるところ、それこそ2、3ブロックごとにシェア自転車のドックがあることだった。ニューヨークでも、シェア自転車がものすごい勢いで普及しているのだ。

そこで、ニューヨークのシェア自転車会社「CitiBike」(シティバイク)のサイトを見ると、ドックは約800ヵ所、自転車の数は1万車を超えていた。シンガポールと同じく、若者たちは本当によく利用していた。ただし、料金は高めで、1日利用(24時間)で12ドルである。

そしてここに、昨年「LimeBike」(ライムバイク)がやってきた。ライムバイクはすでに全米8都市に展開しているドックレス式のサービス。月に約30ドルを払えば1回1ドルで利用できて、乗り終わったらどこにでも放置していい。はたして、シティバイクはライムバイクに負けてしまうのか、いまのところなんとも言えない状況にある。

大幅に遅れた日本のシェア自転車の現状

というわけで、最後はわが日本。「Uber」(ウーバー)、「AirBandB」(エアービーアンドビー)もそうだが、日本はシェアリング・エコノミーの後進国だ。シェア自転車は、 観光地を中心に観光の補助ツールとして一部でサービスが始まっているが、都市部の移動手段としてはまだほとんど普及していない。

ただ、昨年、中国のモバイクが日本に上陸し、現在、札幌などでサービスを始めている。また、「LINE」と提携して、サービスを拡大していくことを発表している。そういえば、フリマアプリ大手のメルカリも、「メルチャリ」という名称で今年2月末からサービスを開始した。

ただし、先行してきたのはNTTドコモで、子会社のドコモ・バイクシェアが東京の6つの区の協力のもとに、「自転車シェアリング広域実験」を2016年2月からやってきている。しかし、ドック式なのにドックの設置箇所が少なく、アプリの使い勝手も悪いため、ほとんど利用されないという現状だ。

そんな中、いま注目されているのが、セブンイレブンとソフトバンクが共同で始めたサービス。これは、ソフトバンクが展開する自転車シェアサービスのドックをセブンイレブンの敷地内に設置するというもので、まだまだ設置箇所は少ないが、セブンの全国店舗に広まれば、普及が進む可能性がある。発表によると、2018年度中には、1000店舗で設置するという。私が住む横浜でも、このサービスは始まっていて、中区のセブンイレブンの数店舗にすでにドックが設置されている。

このように、日本のシェア自転車は乗り捨て式ではなく、ドック式である。日本は公共の管理が徹底した社会だから、乗り捨て式は認められない。とすると、それは、本当にシェアリング・エコノミーなのだろうか?と思ってしまう。「シェア自転車サービス」とは言ってはいても、単にスマホを使って利用するだけの「無人店舗レンタサイクル」ではないだろうか。まあ、それでも自転車をみんなで乗り回すのだから、シェアはシェアだ。ただ、このままでは、世界からますます遅れていくのではと心配になる。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2018年05月01日


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