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※この原稿は米朝首脳会談が行われるという前提で書かれたものです。しかし、ご承知のように5月24日にトランプ大統領は会談の中止を発表しました。ただし、会談は中止になったとは言え、ここに書かれた「米中対決」の構造は変わりません。そのことを踏まえてお読みください。(2018年5月25日)
今回は、これまでのトピックと違って、ちょっと硬いが、東南アジア諸国にとっては、きわめて重要な問題を取り上げる。もう気づいている方も多いと思うが、アメリカと中国がはっきりと対決する時代が訪れたということ。これを私は「米中対決時代」と呼んで、これまで何本かの記事を書いてきた。ただ、東南アジアからの視点からは書いてこなかったので、この記事でそれを試みてみたい。
まず、国際社会でいま一番の注目は、6月12日にシンガポールで開催される「米朝首脳会談」(トランプ大統領vs.金正恩委員長)だろう。この歴史的会談がどこで行われるか決まるまで、いろいろな観測が流れた。しかし、いざシンガポールに決まってみると、なるほどそうかと思う点がある。
シンガポールに決まった理由として、(1)シンガポールはアメリカ、北朝鮮両国と国交がある(2)国際会議開催の設備が整っている(3)都市国家であり、しかも狭い島国のため安全を確保しやすい(4)金正恩委員長が乗る旧ソ連製のジェット機「チャムメ1号」の安定飛行の範囲である(この飛行機は老朽化していて、安定飛行できるのが5000km程度。シンガポールは平壌から約4800km)などが挙げられている。
しかし、アメリカ側から見ると、もっと重要な理由がある。それは、シンガポールが、アメリカの世界覇権にとって極めて重要で、拡張する中国を牽制できる重要なポイントということだ。
米朝首脳会談といっても、北朝鮮のバックには中国がいる。つまり、北朝鮮に非核化を達成させ、朝鮮半島に平和をもたらすということは、アジアにおける中国の影響力を封じ込めることにもつながる。そういう文脈でシンガポールを考えると、「米中対決時代」にこの地でトランプ大統領が金正恩委員長を迎えることは、極めて大きな意味を持つ。なぜなら、シンガポールはいまやアメリカの同盟国と言っていいからである。
いまから2年半前の2015年12月、シンガポール政府は米軍のP-8ポセイドン哨戒機の配備を承認した。これは、じつに画期的な出来事だった。人口の4分の3が中国系という華人国家のシンガポールが、反中国の姿勢を取るとはっきりと意思表示したことになったからだ。それまでもシンガポールは、チャンギ海軍基地を米軍が使用できる協定を結ぶなどして、アメリカとは強い関係を築いてきた。しかし、哨戒機を常駐させるというのは、明らかな反中行為なのである。
P-8ポセイドンは、シンガポールから南シナ海に飛び、そこで哨戒活動を行う。すでに広く知られているように、南シナ海は7つの人工島により中国の領海化している。島には軍事要塞がつくられ、海には中国の原潜が遊弋している。そこをP-8が哨戒し、米海軍の艦船が「航行の自由作戦」(FONOP)を行う。実際、トランプ政権になってからは、FONOPがたびたび行われるようになった。
「米中対決時代」といっても、昨年まではまだはっきり意識されなかった。中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)をつくり、「一帯一路」構想を進めても、経済の面からこれを歓迎する国が多かった。習近平主席が「中国の夢」を唱え、建国100周年の2049年までにアメリカを抜き世界一の大国になると言っても、それを警戒する向きは少なかった。なぜなら、経済発展すれば人々は自由と政治的平等を求めるので、いずれ中国も民主化されるだろうと思ってきたからだ。
しかし、今年の3月、習近平主席は中国憲法を改正し、なんと事実上の“終身皇帝”になってしまった。さらに、4月になると中国は、南シナ海の3つの人工島に対艦ミサイルや対空ミサイルを配備した。こうなると、アメリカとしては中国の拡張主義に対抗せざるを得ない。中国が民主化されるなど、希望的観測であったことがはっきりしたからだ。うかうかしていれば、アメリカは本当に世界覇権を失ってしまいかねない。
オバマ政権と違って、トランプ政権は強硬派を揃えている。とくに中国に対しては、「ドラゴン・スレイヤー」と呼ばれる「対中強硬派」ばかりで、ウィルバー・ロス商務長官、ロバート・ライトハイザー米通商代表(USTR)、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長、ピーター・ナヴァロ国家通商会議ディレクターとそうそうたるメンバーが並んでいる。彼らと、「アメリカファースト」=「ディール(取引)第一」のトランプ大統領が実行したのが、対中制裁関税だったことは、もはや改めて述べるまでもないだろう。
いまや米中対決は、あらゆる分野に及んでいる。経済面で言えば、関税の応酬による貿易摩擦はこれからが本番だ。これは「引き分け」というようなかたちで終わる問題ではないので、今後もずっと続く可能性がある。
ただし、本当の経済戦争は貿易問題ではない。AI、IoT、自動運転車など最先端テクノロジーの核心技術を巡る争いである。この戦争に敗れると、ほかの分野にも大きな影響が及ぶのは必至だから、両国とも現在、莫大な投資を進めている。現在の最大の注目は、中国のZTE(中興通訊)とファーウェ(華為)が、アメリカ市場でどういう扱いを受けるかである。これは、次世代移動通信「5G」を巡る覇権争いで、アメリカとしてはこの2社に先端を走られることを恐れているのだ。
案の定、この4月、トランプ大統領はアメリカ企業に対して、ZTEとの取引を7年間にわたって禁止する措置を発令した。さらに、5月22日、ZTEに7億ドルの罰金を科すことを発表した。これらの措置により、ZTEは事実上スマホ販売ができなくなり、経営陣まで刷新しなければならなくなった。ZTEについては、すでに北朝鮮とイランに対する禁輸措置に違反していることが指摘されていた。また、ZTEの機器やソフトにはバックドアが仕込まれており、情報が中国側に筒抜けになるので、アメリカ政府は国民に使用を控えるよう警告していた。
現在、中国は世界のどの国よりも早く5Gのインフラを整備しようとしている。この争いに負けた場合、5G上でのイノベーションを中国に持って行かれる可能性がある。
軍事・安全保障面での米中対決は、やはり南シナ海が最大の焦点になる。中国は台湾統一を国家目標の一つとしており、そのためにも南シナ海の制圧は欠かせない。すでに、人工島(要塞)建設により、制圧は完成しつつある。この制圧に協力したのが、フィリピンのドゥテルテ政権である。ドゥテルテ大統領は、フィリピン漁民のスカボロー礁での操業再開と巨額の経済援助と引き換えに、南シナ海問題を事実上棚上げしてしまったからだ。
そのため、アメリカは前記したように、シンガポールを拠点にせざるを得なくなり、ここに空母打撃群(CSG)を寄港させるようになった。昨年、北朝鮮がミサイル発射をくり返していたとき、アメリカは原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群をシンガポールに向かわせた。このカール・ビンソンが、次に朝鮮半島に向かったことは、日本人なら記憶に新しいと思う。
今年の4月7日、アメリカ海軍は南シナ海でシンガポール海軍と合同演習を実施した。これは、空母ルーズベルト打撃群を中心にして、これにシンガポール海軍のフリゲート艦を中心とする艦隊が参加するかたちで行われた。すると中国は、即座に中国海軍として最大規模の観艦式を南シナ海で挙行した。空母「遼寧」を先頭に、軍艦48隻、軍用機76機、兵士1万人余りが参加。習近平主席は旗艦「長沙」に乗り込んで、兵士たちにこう檄を飛ばしたのである。
「われわれは世界一流の強大な海軍を完成させる。それによって国家の権益を、断固として守り抜いていく」
このような米中対決に、今後、東南アジア諸国は必然的に巻き込まれていく。いや、もう巻き込まれていると言っていい。アメリカを取るか中国を取るかである。これまでは、発展途上にあるということで、両方とうまくやって援助を引き出せばよかった。しかし、これからはそうはいかない。
すでに述べたように、シンガポールは安全保障面ではアメリカに舵を切った。これは、中国にとっては大きなダメージである。中東からの石油輸入国である中国にとって、マラッカ海峡は死活的に重要な海上ルートである。ここに、アメリカ海軍がいることは、中国にとっては目の上のたんこぶと言っていい。
シンガポールに続こうとしているのが、ベトナムである。今年の3月初め、米空母カール・ビンソンは、1975年のベトナム戦争終結以来、アメリカの空母として初めてベトナムに寄港した。長年に渡り、中国と西沙諸島(パラセル諸島)南沙諸島(スプラトリー諸島)の領有権争いを繰り広げてきたベトナムとしては、もはやアメリカを頼るほかないからだ。しかし、カール・ビンソンの寄港からわずか3週間後、ベトナム政府は中国の圧力に屈し、南シナ海で進めてきた大規模な油井掘削プロジェクトを中止してしまった。
中国と陸で国境を接するラオスやミャンマー、そしてカンボジアなどは、いまや経済的な結びつきにより、中国圏と言っていい。しかし、ベトナムやマレーシア、インドネシアなどの南シナ海に面する海洋国家は、経済と安全保障を天秤にかけながら、両大国と折り合って行くしかない。非常に難しい舵取りを迫られている。
中国はいまや完全に「大国」として振る舞うようになり、自分たちのルールを世界に押し付けるようになった。その一例が、この4月25日に中国民用航空局(CAAC)が、アメリカを含む世界36社の航空会社に送付した「要請書簡」だ。その内容は、台湾および香港、マカオが中国の一部であることを明確に示せというもので、HPや機内の地図などで「台湾」を「中国台湾」にしたり、地図の台湾部分を中国大陸と違う色にしたりしてはいけないというのだ。もし、これに従わないなら、中国国内で行政処分を課すといのだから、これは一種の脅しである。
もちろん、これにアメリカは強く反発した。5月5日、ホワイトハウスのサンダース報道官は、「超管理主義的な馬鹿げた行動だ。威嚇と抑圧をやめるよう求める」とし、「このような『検閲の輸出』には断固対抗していく」と述べて、中国との対決姿勢を明らかにした。はたして、中国に乗り入れている東南アジア各国の航空会社はどうするのだろうか?
アメリカのデルタ航空は、今年初め、HP上で台湾とチベットを国家として表記していたことを、CAACから非難され、即座に謝罪し修正している。現在、世界の航空会社にとって拡大する一方の中国の航空市場は最重要な市場となっている。国際航空運送協会(IATA)は、昨年、中国は2020年までにアメリカを抜き、世界最大の航空市場になると発表している。中国を取るかアメリカを取るか。これは、東南アジア諸国に限らず、日本にとっても、いや世界のどの国にとっても、本当に悩ましい問題となってきた。
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※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2018年05月24日
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