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昨年後半から、新興国の経済にかげりが出始めた。アメリカのFRBが量的緩和の縮小に入ったことで、大規模な投資資金の逆流が始まったからだ。株価が下がり、通貨安にともなうインフレが進行し、庶民生活が脅かされるようになった。タイでは政変が続き、最近ではウクライナで政権が崩壊した。こうしたことを見て、個人投資家は不安を隠さない。
「この先、いったいどうなるんですか? 本当にこのまま新興アジアへの投資を続けていいんでしょうか?」という相談が金融機関や投資アドバイザーに持ち込まれるようになり、私のところにも聞いてくる人がいる。そこで、今回は、やや専門的な話になるが、今後の新興アジア経済を展望しておきたい。
私の癖として、いつも先に結論を書いてしまうのだが、「心配することはない」とまず言っておきたい。それは、ひと言で言うと、「新興アジアは世界でもっとも“ノビシロ”が大きな地域」だからだ。この“ノビシロ”の大きさを期待して、これまで世界から大量の資金が投入されてきた。
とくにアメリカのFRBによる量的金融緩和で余ったドルは、世界中の投資先に向かい、新興国、とくにブラジル、トルコといった国の株価を引き上げ、不動産市場も引き上げた。新興アジア諸国にも大量のドルが流れ込み、シンガポール、インド、タイ、インドネシア、マレーシアなどの株価と不動産価格を引き上げた。それにともない、この地域でインフラなどへ投資も活発に行われた。
2008年のリーマンショックの最初の衝撃を和らげたのは、中国の4兆元という巨額な公共投資だった。これにより、中国はリーマンショック後の景気低迷を逃れ、成長を続けた。続いて、FRBが大規模な量的金融緩和(QE)を3回もやり、ドルを提供し続けたことで、世界経済は持ち直した。
この間、新興アジア諸国は画期的な成長を遂げた。年率で5%を超える成長は当たり前で、10%を超える成長を記録した国もあった。しかし、昨年後半からの資金流出で、この成長が減速したというのが、いまの状況だ。
これまでアジアでは、日本、韓国、台湾、インドなどが不調になっても、タイ、マレーシア、ベトナムなどのASEAN諸国は堅調という「2極構造」があった。しかし、今回はタイやマレーシアといった国でも減速が見られる。また、インドとインドネシアでは通貨が大幅に下落し、インフレ率は大きく上がった。
そこで、OECDでは「ここ数カ月間の金融市場の混乱や、新興市場の一部でみられた大規模な資本流出が強まり、(世界経済の)成長の足をさらに引っ張る恐れがある」と、昨年末に警告を発した。
では、このような新興アジアの減速が今後どうなるのだろうか?それを決定付ける要素をまず整理すると、以下の三つに絞られるだろう。
一つ目は、減速の原因となったFRBの緩和縮小の影響がどうなっていくかである。二つ目は、新興アジア諸国に大きな影響力を持つ中国の動向だ。そして三つ目が、新興アジア諸国がいずれ陥る「中所得国の罠」である。
それでは、一つ目のFRBの縮小緩和から見ていこう。現在、外に向かったドルは確かにアメリカに戻ってきている。アメリカの景気回復が見込まれている以上、これは当然の流れで、ニューヨーク株価は堅調だ。しかし、いくらアメリカの景気が回復したといっても、その成長はゆるやかである。現在の先進国で年率5%を超える成長が見込まれる国は一つもない。
その結果、リスクをいとわない投資マネーは、再度、新興国市場に向かう。私の知り合いのアナリストは、「高いリターンを追い求めるヘッジファンドなどは、一時的に資金を引き上げても、再度、新興国市場に資金を振り分けるだろう」と言う。ただ、株価は当分、様子見で、長期的なリターンが期待できる債券市場に向かっていると言う。実際、米債券市場は国債や社債を積極的に受け入れ、応札倍率も数倍に達している。新興国国債も活発に取引されている。
続いて二つ目の中国の動向だが、こちらも大きな問題はないと思える。中国はいまシャドーバンキング問題を抱えているが、こうした金融部門の問題は、中国のような民意を必要としない政策を即座に実行できる強権国家では、あまり問題ではないという見方が強い。
中国でもっともはっきりしていることは、中国が世界一の外貨準備を持つ経常黒字国だということ。これが維持されるかぎり、中国経済の減速はあっても崩壊はありえない。
中国の経済低迷によって影響を受けやすい国のランキングというのがある。これを順に記すと、香港、シンガポール、台湾、マレーシア、韓国、オーストラリア、チリ、ロシア、インドネシア、南アフリカという順になる。で、気になるのが日本はどうかということだが、近年の日本はチャイナプラスワンもあって、中国外シフトが進んでいるためか、このランキングのトップ10に入っていない。
そこで、中国リスクを心配する方は、中国本土より、香港、シンガポールを見るべきで、この二つのオフショア市場が健在なら、新興アジアの減速は一時的なものと捉えるべきだ。
では、三つ目、「中所得国の罠」とはなんだろうか?
これは、新興国が主に低賃金の労働力をエンジンとして成長すると、国民の所得が増える。その所得レベルが「中所得」に達したときに陥る問題だ。
一般に中所得国とは、1人当たりのGDPが3000ドルから1万ドルの間の国を指す。ここまで国民の所得が上がると、低賃金だけでは成長が無理になる。というのは、人件費が上がった国からさらに低い国へ、企業は向かうからだ。また、先進国のイノベーションの壁にぶつかり、自国産業を育てないかぎり、競争力を失っていく。 とくに低賃金だけを武器に発展してきた国は、この「中所得国の罠」に陥る。
20世紀後半の歴史を振り返ってみると、低所得国から中所得国になることができた国は多い。しかし、その上の高所得国になれたのは、日本などわずかな例があるだけだ。アジアでは、韓国や台湾が1990年代後半にかけてこの罠に陥ったが、その後、エレクトロニクスとITへの集中投資によってこれを乗り切った。
現在、中国がこの罠から抜け出そうとしている。もちろん、一部沿岸部はとっくに抜け出しているが、内陸部はそうなっていない。この点、中国のような規模が大きな経済が罠を抜け出せるかが注目される。
一口に新興アジアといっても、1人当たりのGDPには国ごとに大きな差がある。以下が、新興アジア各国の1人当たりのGDPトップ10である。じつはここにブルネイが入るが、ブルネイは産油国なので表から外し、トップ9とした。
《新興アジア各国の1人当たりGDP(単位:ドル)》
順位 | 国名 | 1990年 | 2011年 | 増減率 |
1 | シンガポール | 12,000 | 48,000 | 400% |
2 | マレーシア | 2,400 | 8,600 | 358% |
3 | タイ | 1,500 | 5,100 | 340% |
4 | インドネシア | 900 | 3,400 | 377% |
5 | フィリピン | 700 | 2,100 | 300% |
6 | ベトナム | 98 | 1,300 | 1,326% |
7 | ラオス | 217 | 1,000 | 460% |
8 | カンボジア | 105 | 900 | 857% |
9 | ミャンマー | 68 | 800 | 1,176% |
参考 | 日本 | 24,700 | 45,600 | 184% |
ちなみに中国は6,076ドルで、日本の1977年の水準に当たる。この表でハッキリわかるように、シンガポールという先進都市国家をのぞいて、1人当たりのGDPが1万ドルに達している国はない。ただし、インドネシア、タイ、マレーシアは、3000ドルを超えたので、近い将来「中所得国の罠」がやってくる。これにフィリピンが続いている。これを乗り切れば、新興アジアの大発展時代がやってくるだろう。
この表に1990年のときと比較を入れ、その増減率を示したのは、冒頭に書いたように、この地域の”のびしろ“がいかに大きいかを示すためだ。どの国も数百パーセントという凄まじい成長を遂げてきたのがわかるだろう。
中所得国の罠から抜け出すためには、政治的な大転換が必要とされる。強権的な政府、独裁的な政権では、これはできないとされている。より自由で民主的な政府になり、そのうで人材と技術の集積が必要とされる。現在、タイの政治が不安定を続けているのは、じつはこのためと考えるべきだろう。
では、新興アジア諸国は「中所得国の罠」からこの先抜け出せるだろうか?
私が見る限り、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンは可能であろう。それに続く、ベトナム、カンボジア、ミャンマーなどが今後どうなるかは、じつはまだわからない。
しかし、ここでもっとも重要なのは、新興アジアが1997年のアジア通貨危機のときと比べ、大きく違っていることだ。当時の危機を招いた金融市場の脆弱性の大半は、いまは取り除かれている。各国の銀行の資本は増強され、外からの資金調達だけに頼る体質は改善されている。と同時に、かつての固定為替制から変動為替制に世界中が転換したことで、インフレもある程度コントロールできるようになった。また、電力や輸送インフラなどの整備も進んだ。さらに、国民の教育レベルも上がった。
というわけで、以上を踏まえて、今後の新興アジアについて、ご自身で考えていただきたい。私の見方は、このコラムの最初に書いたように「新興アジアの“ノビシロ”はまだまだはるかに大きい」である。
新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2014年02月27日
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