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【新興ASIAウォッチ/第127回】ミャンマーで若者脱出激増!徴兵制を考える

突然の徴兵制発表でタイのビザ申請が殺到

それにしても、ミャンマーはいったいどうなっているのだろうか? 2015年、アウン・サン・スー・チーが軟禁を解かれて以後、民主化が進んだというのに、いまや完全に逆戻り。2021年の軍部クーデターで国軍が政権を再奪取すると、以前よりひどい強権・独裁国家に戻ってしまった。

しかも、この2月10日に国軍政府から徴兵制を実施することが発表されたのである。4月の「水祭り」明けに最初の徴兵が行われ、5,000人を徴集。その後、毎月同程度の人数を徴集し、1年で約5万人の徴兵を行うというのである。

この突然の発表が、ミャンマー社会にもたらした影響は計り知れない。発表以来、国外脱出する人々が跡を絶たなくなった。すでに、世界中で報道されたように、ヤンゴンでもマンダレーでも、タイ大使館に人々が殺到し、ビザ申請の長い列ができた。マンダレーはあまりの混乱で、死者まで出てしまった。

国境越えての脱出が加速、インドは強制送還

民主化が始まったとときのヤンゴンは、本当に活気に満ちていた。やっと新しい時代がくると、人々は希望を次々に口にした。私は、日本ビジネスの中心、ヤンゴンのサクラタワーで、現地進出企業の人間に次々に会い、今後のミャンマーについて話し合った。しかし、いまやそのすべては虚しい。

ミャンマー人は国の将来に絶望して、いま国を捨てて国外に出ている。軍政復帰のときから、すでにこの動きはあったが、いまは命がけで国境を越える人々が続出している。しかし、周辺国はミャンマー人を簡単に受け入れるわけにはいかない。

インド北東部のマニプール州政府は、不法入国したミャンマー人の強制送還に踏み切った。このことに、アメリカは懸念を表明したが、インドは、難民の送還を禁じる難民条約に加盟していない。これまでインドは国境付近の住民に対して、16km以内はビザなしで往来が可能としていたが、この措置を廃止すると表明した。

ミャンマーから避難民に頭を痛めるタイ政府

ミャンマーは、約1,600kmもインドと国境を接している。タイとの国境はそれより長く2,400km超に及ぶ。こちらにも、徴兵逃れの若者や脱出者が殺到した。合法的に国を出ようとする人たちは、前記したようにヤンゴンやマンダレーでタイの大使館、領事館に押しかけ、就労ビザや修学ビザの申請に長蛇の列をつくった。

ちなみに、ミャンマーはASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国なので、タイへの入国は14日以内の滞在であれば、ビザを取得する必要はない。この状況に、タイのセター首相は「合法的に入国するのであれば歓迎するが、違法の場合は法的に厳しく対処する」とコメントした。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、軍政復帰後の2年間あまりでタイに避難したミャンマー人は、4万5,000人に上る。タイ政府は、これまである程度の寛容政策を取ってきたが、今回の入国者激増に関しては、強硬措置を取らざるを得ない。

不足した兵員を穴埋めするための徴兵

それにしてもなぜ、国軍政府は徴兵制を実施することにしたのか?
国軍報道官の発言を裏読みすれば、国軍は民主化勢力や少数民族との戦いで疲弊し、多くの兵力を失い、兵力不足に陥った。そのため、背に腹は変えられず、強制的に徴兵に踏み切ったと言える。

ミャンマーの独立系メディアが伝えるところでは、西部ラカイン州では、以前から少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」の若者たちを、国軍は強制的に連行しているという。徴兵制はこうしたことを正当化するものだ。

今回の徴兵制の概要は、次の通りである。

■対象は、男性は18歳~35歳まで、一部専門技能を有する男性は45歳まで。女性については18歳~27歳まで、一部専門技能を有する女性は35歳まで。(ただし、その後、女性についてはいったん除外すると発表された)

■免除されるのは宗教関係者、既婚女性、猶予されるのは学生、公務員。

■兵役期間は2年間(技術者は最大3年間)、国家の緊急事態では最大5年まで延長可能。兵役を拒否した場合は最高で懲役5年の刑となる。

日本にもミャンマーからの避難民が急増

ミャンマーの混乱が続く中、タイ北部チェンマイの大学では大学の英語科の入学試験が行われたが、定員100人に対して、なん2,100人の応募があり、そのほとんどがミャンマーの若者だった。ミャンマーの若者たちは、なんとしても国外に出ようと、いま、あらゆる手段を取っている。

じつは、軍政復活以後、日本にもミャンマーからの脱出者が急増している。出入国在留管理庁によると、在留ミャンマー人は昨年6月現在で6万9,613人となり、国別では10位台湾、9位アメリカを抜いて第8位となった。これは2020年末の3万5,049人から、たった2年で倍増したことになる。ちなみに、国別の在留者数の1位は中国で78万8,495人、2位はベトナムで52万154人、3位は韓国で41万1,748人となっている。

留学生も急増している。ミャンマーからの留学生は2020年末の4,371人から、2023年6月時点で8,876人に上った。彼らの多くは、 現地の留学仲介業を兼ねる日本語教育機関に日本円で約50万円を払って、来日している。しかし、それができるのは一部だけ。貧しい若者は、国を出られない。軍政府は、徴兵の該当者は約1,400万人と発表している。

徴兵制とは?徴兵制のあるアジアの国は?

ここで、そもそも徴兵制とはなにかを考えてみたい。徴兵制度は、これまで世界の多くの国々で実施されてきた。国民皆兵制度の下に、国民に兵役の義務を課し、徴兵した兵士による常設軍で国家の防衛にあたるというのが、およその目的だ。

一般的に徴兵制度の下では、毎年国民は一定数徴兵されて訓練を受ける。そうしてある期間軍に入り、戦時要員となる。現在、世界では66ヵ国が徴兵制を敷いていて、その制度は各国の置かれた状況によって異なっている。

アジアでも多くの国が徴兵制度を敷いており、以下、主な国を挙げると、韓国、北朝鮮、モンゴル、台湾、パキスタン、ネパールなどがある。一応、中国も徴兵制を敷いているが、志願者だけで新兵枠が満たされるので、これまで強制的な徴兵は行われていない。インドは志願兵制だ。

東南アジアでは、ラオス、シンガポール、ベトナム、タイが徴兵制を敷いている。マレーシア、インドネシア、フィリピンには、強制的な徴兵制度はない。

タイ、シンガポール、ベトナムの徴兵制

徴兵制度のある国は、おおむね対象年齢になると自動的に兵役義務が生じる。貧富、出自に関係がないので、徴兵制は極めて民主的、平等な制度と言える。

では、タイ、シンガポール、ベトナムの徴兵制を見てみよう。

[タイの徴兵制]
18~35歳の男性と18~27歳の女性が対象で、兵役は2年間。大卒は1年間。エンジニアや医師など軍の専門職に就く男性は45歳、女性は35歳まで。兵役は3年間。ユニークなのは、兵役がくじ引きで決まること。18歳の誕生日に予備兵役の登録をし、21歳になる年の4月に徴兵検査。検査合格者はくじを引き、それによって次の4択が決まる。・陸軍入隊・海軍入隊・空軍入隊・兵役免除。くじが赤色だと兵役、黒色だと免除。くじを引かずに志願すると、兵役期間が半年から1年ほど短縮される。

[シンガポールの徴兵制]
すべての男性市民と永住者は18歳になったとき、2年間の軍事訓練を受ける義務が課せられている。兵役先は、シンガポール軍、シンガポール警察部隊(SPF)、シンガポール市民防衛庁(SCDF)のいずれかで、2年間従事する。さらに、兵役終了後も年間最大で40日間予備役として訓練や任務に従事する。

[ベトナムの徴兵制]
18歳〜25歳のベトナム市民は、民族、信仰、教育レベル、職業、居住地等にかかわらず、兵役の義務が生じる(女性は自ら志望し軍に需要がある場合は採用)。兵役期間は2年。ただし、大学、専門学校の教育を受けている国民はその教育期間の兵役義務が延期される。

ミャンマーの徴兵制でなにが起こるか?

現在の世界において、力による国境の変更は国際法によって許されない。よって、ほぼすべての軍隊は自国防衛のために存在する。徴兵制はそのためにある。例えば、ウクライナはロシアに侵攻されたため総動員令を敷き、18歳から60歳の男性は原則、出国を禁じられた。

この総動員令とは別に、ウクライナでは18歳〜27歳の国民に兵役の義務を課していて、大学生は対象外としてきた。いずれにせよ、ウクライナの徴兵は、前記したように国家防衛のためだ。

しかし、今回のミャンマーは違う。ミャンマーでは、国軍と民主派の国民や少数民族が戦っていて、敵国と戦ってはいない。したがって、徴兵は国軍のためであり、徴兵されたら、同じ国民同士で戦うことになる。

つまり、若者が国を出るのは、同じ若者同士でお互いに殺し合いたくないからだ。これが、軍政独裁下の現実である。はたして、4月の水祭り明けに最初の徴兵が行われた場合、その後、なにが起こるのだろうか?

ヤンゴン在住の知人によると、昼間の街の賑わいはいつもと変わらないが、どこでなにが起こっているか報道されないので、そのことが不安だという。もちろん、夜は静まりかえっているという。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2024年03月29日


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