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【新興ASIAウォッチ/第123回】東南アジアで日本車を見かけなくなる日

東南アジアでクルマといえば日本車

例えばバンコク。街を走っているクルマは、ほとんどが日本車だ。タイにおける日本車のシェアは約9割を占め、東京23区内でも日本車はここまで多くない。タイではトヨタをはじめ、日産、ホンダ、マツダ、スズキ、三菱が工場を持っていて、国内ばかりか海外へ輸出している。つまり、タイでクルマと言えば、それは日本車のことである。

これはタイばかりか、インドネシア、ベトナム、フィリピンシンガポールなどでも同じだ。ジャカルタ、ホーチミン、マニラ、シンガポールなどの街で見かけるクルマは、その多くが日本車だ。これは、日本人にとって誇らしいことだが、いまその誇りが失われようとしている。近い将来、日本車を見かけなくなる日が来るのではないかと危惧されている。

その理由は、言うまでもなくEV(電気自動車:BEV「バッテリー電気自動車」)への大転換が進んでいることだ。トヨタをはじめとする日本勢は、このEVシフトに大幅に乗り遅れている。

タイのEVをリードするのはBYDとGWM

東南アジアでEVシフトの先頭を走っている国は、タイとインドネシアである。タイのバンコクは「アジアのデトロイト」と呼ばれているように、世界の自動車産業が集積している。タイ政府はこの自動車産業をさらに強化しようと、次世代カーのEVに対して優遇策を次々と打ち出してきた。

例えば、昨年9月からはEV購入者に1台当たり7万バーツ(約27万円)から15万バーツ(約58万円)の補助金を出すようになった。また、EVには道路税軽減措置を適用した。タイ政府はすでに、2030年までに国内で生産される自動車全体に占めるEVの割合を30%に引き上げることを決定している。そのためには、今後も次々と優遇策を出してくると思われる。

このようなことから、2020年以降、中国のBYD(比亜迪汽車)や GWM(長城汽車)など、EVをリードする中国メーカーがタイに進出、本腰を入れてEVの販売をするようになった。BYD、 GWMの両社は、ともにタイに工場を建設し、現地生産体制に入ろうとしている。

タイでは今年に入ってEVの販売が急増しているが、その7割近くを中国勢が占めるようになり、ことEVに関しては日本勢は完全に後塵を拝している。

資源の強みを活かすインドネシアのEV戦略

インドネシアもまた、EV関連の振興政策と次々に打ち出している。インドネシアにはEVに使われるリチウム電池の原料のニッケルが豊富にある。これを活かしてジョコ・ウィドド政権は、テスラ、BYD、韓国の現代自動車などのEVメーカー、および世界最大の車載用バッテリーメーカーであるCATL(寧徳時代新能源科技)に対して、インドネシアへの投資を促してきた。

インドネシアでは、LCEV(Low Carbon Emission Vehicle:低炭素車)というカテゴリーが設けられていて、これには、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、EVが含まれる。このLCEVカテゴリーで現在、中国のウーロン(上汽通用五菱汽車)、DFSK(東風小康汽車)の台頭が著しい。その結果、LCEVカテゴリーにおける日本勢のシェアは2020年に89.9%だったが、2022年には32.2%まで低下した。

インドネシアは東南アジア最大の自動車市場で、生産拠点としてはタイに次いで2番目の規模を誇る。トヨタとその傘下のダイハツ、ホンダが新車販売台数シェアの3分の2を占めているが、EVシフトの遅れでシェアを失いつつある。

マレーシア、フィリピン、ベトナムのEVシフト

タイ、インドネシアに続いてEVシフトを図っているのが、マレーシア、フィリピン、ベトナムである。マレーシアは2030年までに自動車販売の15%をEVにすることを目指し、税制優遇措置を導入している。

ただ、マレーシアの自動車産業は東南アジアの中では特殊で、自前の自動車メーカーを育成し、日本などの海外メーカーと提携して国民車をつくることにこだわってきた。そうしてできたのが、国民車と言われるプロドゥアとプロトンである。しかし、どちらもEV化には遅れをとり、いま政府の優遇措置によってようやくEVシフトに転じた。とくに、プロトンは、中国のジーリー(吉利汽車)の出資を受け、EVで一大攻勢をかけようとしている。

フィリピンは、今年になってようやくEV普及に本格的に乗り出した。すでに、EVとEV部品の輸入関税に優遇措置を実施してきたが、これをさらに引き下げ、EVシフトを強化していく方針だ。ただ、コロナ禍の後遺症とインフレで、今年の自動車市場は前年比で微減となっている。

ベトナム政府のEV政策はかなり強力だ。EVにかかる特別消費税を引き下げ、登録料も免除するなど、積極的な普及を目指している。ベトナムにはビンファストと言う新興EVメーカーがあり、すでにASEAN諸国に向けてEVの輸出を開始している。ビンファストは今年8月にナスダックに上場し、上場後すぐに自動車メーカーの時価総額でテスラとトヨタに次ぐ第3位となった。

シンガポールは、2040年までにICE(内燃機関車:ガソリン車)廃止する方針を打ち出している。EVの普及拡大のために、EVを新規登録した車の所有者に対して登録料45%の払い戻す、通行税を最大34%減額するなどの優遇措置を実施している。その結果、2022年の新車販売に占めるEV比率は約12%となり、今年は20%に達するとみられている。

トヨタはいまも全車種をやる「全方位戦略」

現在、EVシフトが最も進んでいるのは、言うまでもなく欧州。それも北欧だ。それに続くのが中国。アメリカは州によってバラツキがあるが、カリフォルニア州は2035年までにICEとHEVの新車販売を禁止することになっている。

そんな中、日本は大きく出遅れ、2023年10月時点でのEVシェア率はたったの3.24%である。政府もメーカーも、これまでのICE、HEV、PHEVの販売好調にあぐらをかいて、EVシフトを怠ってきた。とくに、世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、ICE、HEV、PHEV、FCV(燃料電池車)、そしてEVも全部やるという「マルチパスウェー戦略」(全方位)を現在もやり続けている。

しかし、これは非常に危うい戦略で、ある時点でEVシフトがブレークした場合、東南アジア市場、いや世界市場での覇権を一気に失う可能性がある。

タイのEV市場は中国勢が上位独占

このような情勢とはいえ、まだまだEVの普及率は低いので、大丈夫だという見方も根強い。タイの場合、新車販売に占めるEVのシェアはまだ10%強で、残りの90%弱のうち、なんと3分1はトヨタが占めている。よって、トヨタは市場に合わせて、徐々にEVを投入して行けばいいと考えているようだ。

しかし、いまやEVシフトは必然の流れとなっていて、いつか気がつけば「クルマ=EV時代」になるだろう。それが、早いか遅いかという話ではなかろうか。

そこで、タイ市場をさらにEVだけに絞って見てみると、事態は日本勢にとって深刻だ。2023年1~8月のEV(乗用車に限った)の累計新規登録台数をメーカー別に見ると、1位がBYD(シェア34.3%)、2位がNETAオート(シェア19.5%)、3位がSAICモーター・CP(シェア16.9%)、4位がテスラ(シェア14.4%)となっていて、上位3社はいずれも中国メーカーであり、トヨタをはじめとする日本勢はるか圏外だ。

全固体電池の実用・量産化で狙う一発逆転

トヨタは、EVに関しては「2030年までにBEV30車種、350万台販売」という計画を公表している。そして、次世代のバッテリーとして期待される「全固体電池」の実用・量産化を2027、28年に達成するとしている。

全個体電池は現在、EVに搭載されているリチウムイオン電池に比べて、耐熱性が高く、寿命が長く、環境変化に強く、安全性が高い。となると、トヨタが全固体電池搭載のEVを発売すれば、テスラ、BYDを一気に逆転する可能性がある。

トヨタは10月に、EV向け全固体電池の量産化に向けて出光興産と手を組むと発表した。現在、全固体電池の開発では日本がリードしていて、全固体電池向けの特許の世界ランキングでは、トヨタが1位、出光が3位である。この優位を保って、全固体電池の実用・量産化ができれば、ゲームチェンジは可能だ。しかし、あと数年で本当にそれができるのかは、いまのところ未知数である。

ついに輸出で日本を抜いた中国の自動車産業

日本の自動車産業にとって、衝撃的なニュースがある。それは、中国海関総署(税関)が発表した通関統計で、中国が日本を抜いて、世界最大の自動車輸出国になったことだ。2023年上半期の中国の自動車輸出台数は、234万1,000台。これに対して、日本自動車工業会が発表した同期間の日本の輸出台数は202万3,000台。中国が日本を約30万台上回ったのである。

もちろん、これはEVに偏った話ではない。中国の自動車輸出に占めるEV(PHVも含む)の割合は全体の約3分の1で、残り3分の2はICEである。 ということは、中国は従来のIECでも日本を上回るようになったのである。

さらに、この自動車輸出を台数ではなく金額ベースでみると、中国のEV売り上げは全体の半分強を占めている。これは中国で生産されたテスラ車も含んでいるが、それを抜きにしてもこの勢いが続けば、中国EVは世界市場を席巻してしまうだろう。

そのため、アメリカ、欧州では自国で生産したEVでしか優遇措置を与えないという規制を導入し始めた。そのため、中国のEVメーカーは、かつて日本の自動車産業がそうしたように、世界各国に進出して現地生産の乗り出している。もともと欧州で始まったEVシフトは、中国の台頭により、いまや世界の自動車産業の勢力図を変えようとしているのだ。その主戦場の一つが、タイやインドネシアなどの東南アジア市場なのだ。

このまま、日本の自動車産業がうかうかしていれば、やがて、バンコクでもジャカルタでも日本車より中国車を多く見かけるようになるだろう。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2023年11月27日


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