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ラオスの首都ビエンチャンとメコン川を挟んで対岸に位置するタイの町ノンカイは、今年の6月以降、ラオス人でごった返している。彼らは、日用品、食品、ガソリンを求めてスーパーやガソリンスタンドを奔走している。その逆に、ビエンチャンでは、タイ人のほか多くの外国人旅行者で街が賑わっている。その結果、ビエンチャンとノンカイの間に架かるラオスとタイを結ぶ「友好橋」の往来が激しくなっている。
いったい、なぜ、こんな現象が起きているのだろうか?
それは、ラオスが記録的なインフレに見舞われ、通貨キープが暴落し、経済破綻寸前だからだ。東南アジアの最貧国とされるラオスは、新型コロナのパンデミックになる前は順調に経済発展を遂げていた。しかし、コロナ禍でロックダウンを続けているうちに成長は止まり、借金で回していた財政が一気に逼迫してしまったのだ。
ラオスでは、5月末の時点で原油価格が倍以上になり、洗剤や医薬品、衣料品、食品などが不足するか、あるいは庶民には手が届かない価格になった。そのため、おカネを持っている富裕層はタイに買い出しに出かけるようになり、逆にタイからは自国と比べて激安になったモノとサービスを求めて、旅行者が押し寄せるようになったのである。なにしろ、タイの通貨のバーツから見て、キープはコロナ禍前の約半値になってしまった。
もともとラオスは、自国通貨のキープよりタイバーツの方が流通し、「バーツ経済圏」と言っていい。もちろん、米ドルも普通に通用するので、商店、レストラン、ホテル、交通機関など、どこでもこの3つのの通貨で支払いができる。最近は、人民元も通用していた。しかし、キープ暴落後は、誰もキープを受け取らなくなった。
コロナ禍以前(2020年1月末時点)と、現在(2022年9月末時点)のキープの対タイバーツ、対米ドル、対日本円の交換レートを、以下に示してみたい。
1米ドル = 8800キープ ⇒ 1万6500キープ
1タイバーツ = 280キープ ⇒ 430キープ
1日本円 = 80キープ ⇒ 114キープ
対米ドルで日本円は今年大きく下落したが、コロナ禍前の半値ということはない。それに比べてキープはほぼ半値だから、日本の円安の比ではない。 しかも、キープ暴落にインフレが追い打ちをかけている。
コロナ禍前まで、ラオスの年間のインフレ率は平均して2%ほどだった。それが2020年には5%を超え、今年は半年間で6%まで上がった。しかも、6月からは急亢進している。
ラオス統計局(LSB)によると、6月のインフレ率は前年同期比23.6%、7月は同25.6%、8月は同30.0%と、止めようがなくなっている。こうなると、一般庶民の暮らしは困窮の一途となる。
ラオス中央銀行によると、2021年末のラオスの外貨準備高は12億6,300万ドル。この外貨が底を突き、5月からは原油を買えなくなった。そのため、ビエンチャンではガソリンの供給が滞り、ガソリンスタンドの多くが休業に追い込まれた。また、日常品や食料の輸入も支障をきたすようになった。
そのため、ラオス政府は5月9日、それまで続けてきた「コロナ鎖国」政策を放棄し、突然「開国」した。ラオスは中国と同じ、ラオス人民革命党による一党独裁体制の国である。したがって、政策転換は一気にできる。もはや背に腹は変えられないということで、観光業を復活させ、外貨を少しでも稼ごうというのだ。
近年、ラオス政府は観光に力を入れてきており、観光業は鉱業に次ぐ第2の外貨収入源となっている。ラオスを訪れる外国人旅行者は年々増え続け、コロナ禍前までに年間400万人に達した。これを復活させざるをえなくなったのだ。
ただ、開国は少し遅すぎた。インフレとキープ安が一気に進んだからだ。ビエンチャン在住の日本人に話を聞くと、外国人旅行者は戻ってきたが、若者たちの多くが国を出て行ったという。
「観光客に人気のメコン川沿いのナイトマーケットも毎夜開かれていますし、トゥクトゥクも走り回っています。ホテルやレストランも以前と同じように営業し、人気のビエンチャンセンターやタラートサオモールなどのショッピングモールも通常通り営業しています。ただ、市民生活は苦しく、とくに若者にはこのインフレ不況は厳しい。学生たちは2倍以上になった学費が払えず、卒業を断念して国外に出稼ぎに出ていきました」
ラオスには徴兵制があり、ラオス人民軍の兵力は約3万人、民兵は10万人とされる。人口約700万人の国にしてはかなりの軍事力で、徴兵制に嫌気がさしている若者は多い。また、地方の貧困地域出身の若い女性は、ブローカーなどが仲介して、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、そしてラオスに数多くある中国人経営のカジノに働きに行かされている。カジノの歓楽街で身を落としている若い女性の多くが、ラオス人だ。
アジア開発銀行(ADB)が9月21日発表した経済見通しによると、ラオスのインフレ率は2桁に達し、深刻な経済危機に陥ると警告している。ADBと同じく、国際通貨基金(IMF)など多くの国際機関が、ラオスがスリランカに続いてデフォルトする可能性が高いと予想している。
世界銀行(WB)によると、ラオスの政府債務は145億ドルでGDPの88%に達するという。そのうちの半分は「一帯一路」プロジェクトなどによって中国から借り入れたものだ。
米ウィリアム・アンド・メアリー大学のエイドデータ研究所によると、これまで世界の44ヵ国が中国の貸し手からGDP比10%以上の融資を受けることで合意してきたという。その中でもラオスは傑出して高く、なんとGDP比65%で第1位だ。ちなみに、第2位はアフリカのコンゴ共和国で53%である。
したがって、ラオスの経済危機は、中国の「債務の罠」にはまったという見方が強い。スリランカが中国の借金で破綻したように、ラオスも破綻する可能性が高いというのだ。
WBによると、中国の貸し手が2008~2021年に行った債務国への債務再編案件は71件あったという。しかし、再編の多くは債務減免ではなく、返済期限の延長や猶予期間の延長だった。
一般的な途上国向けの二国間融資は、「パリクラブ」と呼ばれていて、これまで主要先進国やIMF、WBといった国際機関が行ってきた。しかし、中国の融資は、パリクラブよりも金利が高く設定され、返済期限も短い。そのため、期限内に返済ができなくなる国が多いが、中国は債務減免や経済改革の手助けなどには応じない。例えば、これまでベネズエラ、セーシェル、ジンバブエは、過去20年にわたって中国との間でそれぞれ5回以上の債務再編を行っている。
今後、中国が債務国に対してどんな措置を取るかはわからない。しかし、これまでの例から見ると、減免はありえない。ラオスも中国の条件にしたがい、返済期限の延長や猶予期間の延長に応じるほかないだろう。
それにしてもなぜ、ラオスは返済不能になるような巨額の借金を抱えたのか? それは、中国によるインフラ整備に丸乗りしたからである。その一つが、中国・ラオス鉄道である。
中国の雲南省昆明からビエンチャンに至る国際鉄道で、これによりラオスは中国からの物資を海路ではなく、陸路で一気に運ぶことが可能になった。また、中国人観光客も大挙してラオスを訪れ、インバウンド効果があるとされた。中国・ラオス鉄道は、2021年12月に開通し、すでに運行が開始されている。
しかし、その総工費はラオスのGDPの約3割にあたる60億ドルで、その7割が中国政府と中国企業が負担し、ラオス側は3割負担だったが、もとより返済原資がなかった。
もう一つが、中国が持ちかけた経済特区である。タイ、ラオス、ミャンマーの国境地帯に「ゴールデントライアングル」と呼ばれる一帯がある。ここに、ラオスは「金三角経済特区」をつくり、中国企業が進出することになった。しかし、進出とともに中国マフィアが経営するカジノが建設され、一帯はチャイナタウンとなって、伏魔殿化してしまった。
まさに中国の自治区で、流通するのは人民元。一般的に東南アジアに数多くある中国カジノはマネーロンダリングとサイバー犯罪などの巣窟で、ここでカジノ経営する中国マフィアのボスは、アメリカにおいて資産凍結されている。ラオスは、まさに、中国の「植民国家」になってしまったと言えるのだ。
今後、中国がラオスをどう扱うかは別として、ラオスの観光地としての魅力は変わらない。かつてフランス領だったこともあり、欧米人にとっては人気の観光地だ。この国を旅行した者は誰もが、この国に「癒しの国」「微笑みの国」「最後の秘境」「桃源郷」というキャッチフレーズが付くことに納得がいく。
なにしろ、時間はスローに流れ、せわしいネット時代とは違う空間が広がっている。かつて「ニューヨーク・タイムズ」紙の「世界で一番行きたい国」第1位に選ばれたり、旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」の読者の人気投票でもアジアで最上位になったことがある。
外国人旅行者は、ビエンチャンをゲートシティとして、世界遺産の古都ルアンパバーンとワット・プーを訪れる。そこで、素朴な田舎町の町並み、数多くの仏教寺院、古代遺跡を見て、モダンなカフェやフレンチレストランで飲食を楽しみ、ホテルやゲストハウスでスローライフを満喫する。
こうしたラオス観光が、キープの暴落で、これまでの半額で楽しめるのだから、タイはもとより、世界中から旅行者が訪れるのは当然だ。まさに、いまのラオスは外国人にとってバーゲンセールと言っていいだろう。このバーゲンセールに行くことは、窮乏するラオスの国民を少しでも助けることにつながる。
ビエンチャンのワットタイ国際空港へは、日本からの直行便は飛んでいない。周辺国の空港でトランジットして行くか、タイ経由でバスや鉄道で行くのが一般的だ。バンコク乗り換えの所要時間は、最短で8時間ほどである。
ラオスは隣の国タイとは兄弟のような国。ラオス語とタイ語、そしてラオス文化とタイ文化は似ているので、タイ旅行に行くなら、そのままラオスを旅行をしても違和感はなく、むしろのんびりできる。
5月のコロナ規制撤廃により、現在、15日以内の滞在に関してはビザ不要で、到着時にアライバルビザ取得すれば30日以内の滞在が許可される。ただし、ワクチン接種の証明は必要だ。
通貨安とインフレに見舞われた点で、ラオスと日本は同じである。開国してインバウンドを期待している点も同じだ。ただ、ラオスには、現代の日本で消えてしまった昔ながらのスローライフがある。
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1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2022年09月29日
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