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【新興ASIAウォッチ/第102回】大英断!? インドネシアが首都移転を決定!

新首都はカリマンタン島の「ヌサンタラ」

1月18日、インドネシアからの報道に、日本のSNSは一部でかなり盛り上がった。「これは大英断だ! 素晴らしい」「インドネシアには未来がある!」「なぜ日本でできないのか?」などと賞賛する声が続出した。もちろん批判的な声もあったが、ほとんどは好意的だった。コロナ禍と経済低迷で閉塞状況にある中で、今回のインドネシアの「英断」がよほど羨ましかっただろう。

インドネシアの英断? それは、首都移転である。かつて日本でも候補地が挙げられ、熱い議論が繰り広げられたことがあったが、いつの間にか立ち消えになった。経済低迷、地方崩壊、一極集中の弊害などの打開策として有効なのに、日本は変化を嫌ったのだ。

しかし、インドネシアは反対の声を押し切って移転を決めた。インドネシア国会は、首都をジャカルタからボルネオ島のカリマンタンに移転する法案を、賛成多数で可決した。併せて、新首都がカリマンタン島の「ヌサンタラ」になることを決定したのである。

国会での決定後、会見に臨んだスハルソ国家開発企画庁長官は、「新首都は中心的な機能を持ち、国家のアイデンティティの象徴であると同時に、新たな経済活動の中心になる」と述べた。 新首都の名前「ヌサンタラ」は、ジョコ・ウィドド大統領大統領が選んだもので、「群島」を意味するという。

なぜカリマンタン島(ボルネオ)なのか?

カリマンタン島といえば、日本では「ボルネオ」と言った方が通じる。島といっても、面積は74.3万km²もあり、マレーシア、ブルネイ両国の領土を除いたインドネシア領だけでも54.4km²で、日本の約1.4倍もある。その多くは熱帯雨林が広がるジャングルで、オランウータンやウンピョウなどの野生動物の生息地として知られている。

新首都となるヌサンタラは、カリマンタン島東カリマンタン州にあり、ジャカルタから1,200km以上も離れている。可決した移転法案によると、新首都の敷地予定面積は約25万6,000ヘクタール。現地には広大な草地や森林が広がっていて、これから都市建設を行うという。とりあえずは、ビジネスや金融など経済の中心としての機能はジャカルタに維持し、省庁や国会などの政府機能を移すという。

じつは、インドネシアの首都移転計画は半世紀以上前からあった。それを、ジョコ大統領が具体化し、2019年8月の年次教書演説で、正式表明したのである。その際、ジョコ大統領は、過去3年間にわたって最適地の調査を行い、東カリマンタン州の主要都市のバリクパパンの近郊を選定したと述べた。

その理由として、地震、津波、火山噴火などによる自然災害のリスクが少ないこと、全国土の中央に位置すること、バリクパパンの近郊にあり、インフラが比較的整っていること、広大な利用可能な用地があることなどを挙げたのである。

移転の最大の理由は格差の解消

首都移転というのは、実際のところそう簡単にできるものではない。しかも、まったくなにもない土地に新しく建設するとなると、国を挙げての一大事業となるうえ、促進するための「大義名分」(国民が納得する理由)が必要だ。過去の成功例としては、オーストラリアのキャンベラ、ブラジルのブラジリアなどがあるが、はたしてジョコ大統領が挙げた移転理由には大義名分があるのだろうか?

ジョコ大統領は、移転の理由として次の3点を力説した。第1の理由は格差の縮小だ。これが最大の移転理由であり、ジョコ大統領はこのことを「ジャワ中心主義からインドネシア中心主義への転換」とした。

インドネシアは約1万7,000の島々からなる群島国家で、その領土は東西5,100kmにも及んでいる。しかし、人口も富も国土の6%を占めるにすぎないジャワ島に集中している。そのため、「ジャワがインドネシアの中心だ」という意識がジャワ島に住む人々には根強い。そこで、首都を東西に広がるインドネシアのちょうど真ん中に移すことで、人々の意識を変える。それによって経済構造も変わり、格差も解消できるというのだ。

実際のところ、インドネシア経済はジャワ島が中心で、製造業の大部分がジャワ島にあり、国内総生産(GDP)の58.5%が生み出されている。これに対して、ジャワ島以外の地域では、鉱業、農業以外にほとんど目だった産業がない。

地球温暖化でジャカルタは海に沈む?

ジョコ大統領が掲げた第2の理由は、首都ジャカルタへの一極集中の弊害を解消すること。現在、ジャカルタ周辺の8県・市自治体をあわせた広域首都圏「ジャボデタベック」の人口は3,278万人にのぼり、人口増加が止まらない。そのため、インフラ整備のスピードが追いつかず、交通渋滞は世界最悪レベルにある。「ジャカルタの住人は、生涯のうち10年を交通渋滞に費やす」と言われるほどだ。

インドネシア国家開発庁は、ジャカルタ広域首都圏での渋滞による経済損失は、年間10兆ルピア(約8,400億円)に上ると試算している。首都移転は、この経済損出をリカバリーできるというわけだ。

交通渋滞ばかりではない、一極集中により大気汚染も進み、さらに地盤沈下も起こっている。ジャカルタは海に面した低地にあるうえ、地下水のくみ上げによる地盤沈下は深刻で、一部地域では10年間で最大25cmも地盤が沈下したという報告がある。

こうしたことから、第3の目的が生まれた。環境対策である。地球温暖化による海面上昇により、2050年までにジャカルタ北部の95%は海に沈むという試算も出ており、これが現実化すれば移転は時間の問題となる。気候変動はインドネシアでも深刻で、ジャカルタでは毎年のように豪雨災害や洪水が発生している。首都移転は気候変動対策でもあると、ジョコ大統領は説明した。

このように見てくると、首都移転は将来への備えという見方、あるいはジャカルタの都市問題の解決に匙を投げたという見方もできる。いずれにせよ、ジャカルタの状況は、なんとかしなければならいところまで来ている。

気になるのは移転に関する費用の捻出

移転が決定され、青写真も策定されたいま、気になるのは移転にどれほどの費用がかかるかだ。国家開発企画庁が公表した試算では、移転総額は466兆ルピア(約3.5兆円)となっている。

ただし、このうち国家予算からの支出は74.4兆ルピア(19.2%)に抑えられ、基礎インフラや大統領官邸、国軍・警察の施設、公務員宿舎および土地買収にあてられる。それ以外の費用、移転費用の約半分にあたる265.2兆ルピア(54.6%)は、官民連携のプロジェクトとして実行されるという。この官民連携のプロジェクトで、政府庁舎や国会議事堂、裁判所、教育・保健施設などが建設される。

そして、残りの127.3兆ルピア(約26.2%)は民間のプロジェクトとなり、一般住宅や商業施設、宿泊施設、交通インフラの整備などにあてられることになっている。このように民間頼みの部分が多いが、はたしてそこまで民間から投資が集まるかどうかは疑問の声もある。

インドネシアは、1997年のアジア通貨危機の際に記録したマイナス13.13%以来、20年以上にわたり5%後半~6%台という経済成長を続けてきた。それが、2020年はコロナ禍のためにマイナス成長となったが、現在は急速に回復している。

政府債務がGDPに占める比率は30%前後で推移しており、GDP比240%を超えている日本と比べれば、財政は健全だ。ただし、毎年3%ほどの赤字を続けている。インドネシア政府は、首都移転で不要となるジャカルタの国有地や施設は売却する予定で、それによって国家予算の負担自体も軽くできるとみている。

国民の約6割が賛成もジャカルタ市民は反対

インドネシア政府は、2024年度から、政府機関の移転を開始するとしている。それ以降、ヌサンタラの建設が進み、建国100年となる2045年までにジャカルタから完全移転する計画となっている。ヌサンタラ新首都は、「森林都市」(forest city)というコンセプトで、市街地の50%以上は緑地帯となるという。スハルソ国家開発企画庁長官は、「単にグリーンなだけでなく、スマートで、ビューティフルで、かつサステイナブルな首都になる」と、述べている。

移転計画決定後、現地メディアは国民の声を伝えたが、それらの声をまとめると、インドネシア国民の約6割が移転に賛成している。ただし、ジャカルタ市民に限ると約8割が反対で、「移転により、政府はジャカルタの問題から目を背けようとしている」という声が多かった。

はたして、インドネシアの首都移転という挑戦は成功するのだろうか? 人口ボーナス期が続き、資源も豊富にあることを思えば、この国の将来は明るいと見るべきだろう。2045年、インドネシアは世界のGDPランキングで日本を抜く。そのときのインドネシアの順位は7位で、日本は8位まで順位を落としているという。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2022年01月26日


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