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【新興ASIAウォッチ/第95回】ダイソー はなぜ世界の「DAISO」になったのか?

経済成長が生活コストを引き上げた

世界の都市の生活コストを調査したランキングは、いくつかある。人事コンサルティング大手の米マーサー社のもの、英エコノミスト誌によるものなどが有名だが、それらを毎年見てきて思うのは、アジア圏の諸都市のランキングが毎年、確実に上がっていることだ。

この1年は、コロナ禍の影響で生活コストの上昇は抑えられたが、それでもシンガポールはもはや東京以上に生活コストがかかる。バンコク、ジャカルタ、ホーチミン、マニラなどの生活コストもかつての比ではなく、駐在員や現地在住の日本人の生活は苦しくなっている。

物価の比較でよく引き合いに出されるのが「ビッグマック指数」。これは、世界どこでも食べられるビッグマックの価格を国別にドル換算して比較したものだが、これを見ても時代は変わったと思う。

「ビッグマック指数」の2021年版の1位は、スイス(7.29ドル)。続いて2位スウエーデン(6.37ドル)、3位ノルウェー(6.09ドル)、4位アメリカ(5.66ドル)、5位イスラエル(5.35ドル)と続くが、日本はなんと25位(3.74ドル)と、もはや安い方の国になっている。

この日本の順位の低さに多くの人が驚くが、もっと驚くのがアジア圏では日本の上に、13位シンガポール(4.43ドル)、14位タイ(4.25ドル)、16位韓国(4.10ドル)が位置していることだろう。

かつてのアジアは日本から見れば、みな貧しく、物価も安かった。しかし、いまはそうではない。経済発展をすれば、物価は必ず上がる。住宅費、交通費、食料費などは、経済成長に合わせて上がっていく。ここ十数年、とくに東南アジア各国は毎年5%ほどの成長を遂げてきた。もはや「安い東南アジア」は昔話なのである。

シンガポール「DAISO」の大成功

生活コストが上がっていく中で、庶民の強い味方と言えば「激安ショップ」だろう。日本の場合は、なんと言っても「100圴」ストアだ。日本で「100圴」に行き慣れた人はいま、東南アジア各国どこに行っても「100均」があることにホッとするようだ。

「100均」の代表ダイソーは現在、海外で2272店舗(2021年2月末で)を展開している。ダイソーの海外進出1号店は、2002年にオープンした「DAISO」シンガポール店。2005年にはアメリカにも進出し、そのネットワークはいまや世界24ヵ国に広がっている。

シンガポール1号店はジュロンのIMMビルの中にあるが、その広さと品揃えはシンガポールNo.1。いつ行ってもレジには長蛇の列ができている。この1号店が成功したため、その後「DAISO」の新店舗が次々にオープンし、いまではアイオンオーチャード店をはじめとして、シンガポールには12店舗もある。私も何度か足を運んだが、どの店も本当に賑わっている。

「100均」と言っても、最近は100円グッズばかりではなくなった。100円以上のものもよく売れるようになった。そのため、ダイソーでは「100均」を発展させた300円ショップの「スリーピー」をつくり、こちらもヒットして、いまや全国で30店舗以上を展開している。

このスリーピーの「THREEPPY&HAPPY」も、2019年7月にシンガポール1号店が、「フナンモール」内にオープンした。ここでは、日本で300円のグッズを5.8シンガポールドル(約450円)で売っている。ちなみに日本のダイソーの100円グッズは、シンガポール「DAISO」では2シンガポールドル(約160円)である。

バンコク、ホーチミンでもレジには行列

「DAISO」は、東南アジアの主要都市なら、どこに行ってもある。ショッピングモールに行けば、その中に「DAISO」の看板を即座に見つけることができる。とくに店舗数が多いのはタイで、バンコクには60店舗以上あり、どこのショッピングモールにもある。

ただし、シンガポールと同じく、日本で100円のグッズは、タイ「DAISO」では、60バーツ(約210円)で売られている。日本の価格の倍のため、日本の価格を知っている日本人は「高い」と言って、けっこう驚く。60バーツ出せば、フードコートでタイヌードルを食べられるからだ。

近年、急成長をとげているベトナムでも、「DAISO」の値段は日本より高い。ホーチミンには現在7店舗あり、そのうち一番大きいのは、1区の「ビンコムセンター」にオープンした新店舗。ホーチミンのど真ん中だけに、いつも賑わっている。ただし、昨年9月のオープンだから、私は行ったわけでない。コロナ禍で、ここ1年半、私は国外に出ていない。以下は、実際に行った現地駐在員の奥さんたちの話である。

「これまで2区にしかなかったので、1区にできたのは本当によかったです。すぐに行けますから。何度か行きましたが、品揃えは日本より充実しているのではなかいと思いました。化粧品や雑貨は本当に豊富です。ただ、こちらのDAISOは4万ドン均一ですから、日本と比べると割高感があります」
4万ドンは、日本円にして約200円だ。

クアランプール、マニラ、ジャカルタ、プノンペンなどの「DAISO」も、現地の人間に聞いてみると、どこもみな賑わっているという。現在、軍がクーデターで実効支配してしいるミャンマーにも数店舗あり、ヤンゴンではデモに行くより「DAISO」に行くというから驚く。

アメリカの「ダラーストア」との違い

ダイソーは、ある意味で日本のデフレ経済の象徴だ。デフレではモノが安くなるが、アメリカではデフレそのものを一部で「Japanification」(ジャパニフィケーション)と呼んでいるから、いまやダイソーは日本を象徴するブランドと言っていい。

かつては日本の家電が世界を席巻し、ソニーは日本を象徴するブランドだった。それが、いまやダイソーだから、喜んでいいのかどうか悩んでしまう。

ただし、ダイソーは単に安いから成功したわけでない。それは、他の海外の「100均」ストア(便宜上こう呼ぶ)と比べてみればよくわかる。品質も品揃えも、ダイソーははるかに優れているのだ。

ダイソーは、現在、アメリカでは西海岸を中心に77店舗を展開しているが、ロサンゼルスやヒューストンの店はベースライン価格が1.5ドル(約165円)。また、2019年3月にニューヨークのフラッシングにオープンしたニューヨーク1号店は、ベースライン価格が1.99ドル(約220円)である。

いずれも、日本で言う「100均」とは名ばかりで、日本と同じ製品が2倍はする点で、アジア各国と同じだ。それでも、どの店も賑わっている。

じつは、アメリカにも「ダラーストア」(Dollar Store)と呼ばれる「1ドルショップ」と「99セントショップ」がある。こちらは、その名前のとおりで、価格は「DAISO」より安い。

ダラーストアの2大チェーンとされるのが、「ダラー・ゼネラル」(Dollar General)と 「ダラー・ツリー」(Dollar Tree)だが、実際に行ってみると、品揃えと品質においては「DAISO」に及ばない。そのため、消費者は「1ドル以上高く払っても価値がある」と「DAISO」に足を運ぶのだ。

現地経費が日本より高いから価格が上がる

ここで、東南アジア各国の「DAISO」の価格を見てみたい。どの国もみな、日本のダイソーより高い。

シンガポール:2シンガポールドル(約160円)
マレーシア:5.9リンギット(約150円)
タイ:60バーツ(約210円)
インドネシア:2万5000ルピア(約215円)
ベトナム:40万ドン(約200円)
フィリピン:88ペソ(約200円)
*参考として、中国:10元(約170円)、台湾:39元(約145円)

『安いニッポン「価格」が示す停滞』(中藤玲、日経プレミアシリーズ新書)という本が、現在ベストセラーになっているが、ここに、ダイソーの海外店の価格が高い理由が述べられている。それは、以下の3つのコストが、いずれも日本よりかかるからだという。

(1)物流費
(2)人件費や賃料などの現地経費
(3)関税や検査費

つまり、日本の価格がフツーなのではない。世界に比べて異常に安いのである。
この本の中で、ダイソーの幹部はこう述べている。
「いま進出している国や地域すべてで人件費、賃料、物価、そして所得が向上している。20年前ならいくら高品質でも『新興国で200円前後』なんて売れなかったが、いまは現地の購買力が上がったため成り立っている」

最大の成功の秘訣は「現地化」

海外でのダイソーの成功の秘訣は、品揃えの多さと品質のよさばかりではない。もう一つ、大きな秘訣がある。ダイソーの創業者である矢野博之氏は、メディアのインタビューで、100均誕生の由来を「値札をつける手間を省くためだった」と語っているが、このアイデアが全世界で通用したことが、いちばんの秘訣だろう。

しかし、それが通用する中で、ダイソーはさまざまな現地化を行ってきた。まずは価格設定だが、日本より高くなった理由が現地のコストにあったにせよ、ダイソーはそれに見合う商品を提供してきた。現地にはダイソーより安い商品がたくさんある。しかし、それらはたいてい「安かろう悪かろう」だから、ダイソーはそうはしなかった。つまり、品質のよさで現地の「激安ショップ」との差別化をはかったのだ。

次に、ダイソーは商品において、現地のニーズに合わせた戦略を取った。ロサンゼルスでは、最初に勝手がわかるアジア系アメリカ人が多く住む地域に出店した。続いて、ヒスパニック系、白人系と、それぞれが好む商品を見極めながら出店していった。

たとえば、白人女性には便座カバーが人気。アメリカはウオッシュレットがまったく普及していないので、便座は冷たい。そのため、日本ではあまり売れない便座カバーがよく売れるという。

ほとんどの国が熱帯に属する東南アジアでは、清潔感を保つための汗拭きシートやパウダーシートが人気。また、タイなどでは、アイシャドーやマニュキュア、ヘアカラーなどのビューティー関連グッズが人気で、ダイソーはそれを豊富に品揃えした。

タイで驚いたのは、レースのカーテンがよく売れるということ。タイの家の窓は、たいていガラス窓で、日本のようにカーテンレールが2本ない。そのため、カーテンを2重にするということがないので、小さなレースのカーテンのニーズが高いのだという。

このように、ダイソーは均一価格と製品の多様化とクオリティ、そして現地化戦略によって成功してきた。これは、どんなビジネスでも言えることではないだろうか。もし、あなたが世界のいろいろな都市に行く機会があったら、そこにある「DAISO」をのぞいて見たらどうだろうか。そこにある商品を見ることで、現地への理解がより深まるのは間違いない。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2021年07月01日


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