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【新興ASIAウォッチ/第94回】タイが経済復活をかける 「メディカル・ツーリズム」と「エリートカード」

観光産業を瀕死に追い込んだコロナ

一時期、コロナの押さえ込みに成功していたタイだが、4月から感染拡大が進み、現在、“半”ロックダウンの状況にある。政府は5月1日から全国でマスク着用を義務づけ、バンコク首都圏の感染者が多い地域での飲食店での食事を禁止した。同様の措置は、ベトナム、カンボジアなどでも取られており、東南アジア諸国はここしばらく、英国型やインド型の変異株の対策に追われそうだ。

この1年余りのコロナ禍でタイの経済、とくに観光産業は瀕死状態になった。なにしろ、タイには年間約4000万人の外国人観光客が訪れ、こうしたインバウンドを含めた観光収入は、2019年には約1兆9300億バーツ(約6兆7300億円)もあった。それが、2020年には、外国人観光客数が約670万人、観光収入が約3320億バーツ(約1兆1590億円)に減ってしまった。差し引きで、約1兆5980億バーツ(約5兆5780億円)が失われたことになる。

ちなみに、タイの観光産業がGDPに占める割合は約12%。観光産業で生計を立てている労働者数は約450万人で、こちらも総労働人口約3800万人のうち約12%を占めている。

近年、日本も観光産業に力を入れてきたが、それでもインバウンドがGDPに占める割合は1%程度だから、いかに、タイ経済が観光に立脚しているかわかるだろう。つまり、観光産業を復活させない限り、タイ経済は復活しない。

ワクチン接種済みの外国人は入国OK

タイは今年になってから、観光業復活のためにさまざまな取り組みを始めた。とにかく1日も早く、外国人観光客に戻ってきてほしい。バンコクの街は賑わいを失い、プーケットなどのビーチリゾートは人影もまばら。こんな状況をいつまでも続けてはいられない。

タイは昨年から入国手続きを厳格にし、訪問者、帰国者全員に政府公認の施設における14日間の隔離を義務付けてきた。これを解除し、ワクチン接種済みの外国人を隔離なしで受け入れることを決めた。いわゆる「ワクチンパスポート」があれば、入国を自由にするというのだ。

とはいえ、この措置は段階的で、まず手始めに7月1日からプーケットから始められる。その後、バンコクやチェンマイなどに広げていくという。

ただし、この計画が順調に行くためには条件がある。それは、国内でのワクチン接種が順調に進まなければならいということ。集団免疫が確立されない限り、ワクチン接種者といえども感染リスクはあるため、「安心安全」は達成されないからだ。

外国人にもワクチン接種をすると表明

タイのワクチン接種は、今年の2月下旬から始まった。政府の計画によれば、2021年5月から12月までの間に、タイの人口約7000万人の7割、5000万人に対してワクチンを1億回分(1人当たり2回分)調達して接種することになっている。

ちなみに、現段階でタイ政府が調達したワクチンは、中国「シノバック」と英「アストラゼネカ」だけ。政府は、ロシア「スプートニクV」と米「ファイザー」も加えるとしているが、まだ交渉中という。

5月6日、タイの保健省は記者会見で、「政府のワクチン接種計画には外国人も含まれている」と表明した。タイには現在、外国人居住者が約300万人にいるが、この人たちにもワクチンを打つというのだ。これを知った日本人在住者に聞いたところ、「ひと安心です」との返事が返ってきた。じつは、タイでのワクチン接種は、日本と同様に進んでおらず、日本人在住者、駐在員たちは、ずっと気を揉んでいたのである。

バンコクの有力病院の一つ、ウィムット病院では、5月23日から外国人向けの予約が始まった。さっそくそれに応じた日本人在住者に話を聞いたところ、接種開始は6月7日からという。

「予約は意思確認フォームで行い、パスポート番号を登録すればOKなので、簡単です。中国ワクチンはいやだと思っていたのですが、アストラゼネカだと聞いて安心しました。2回接種後は証明書が発行されるというので、これがあれば今後、どこにでも行けるでしょう」

「メディカル・ツーリズム」が突破口に

タイ政府は現在、観光で訪れた外国人にもワクチン接種を行い、ワクチンパスポートを発行する計画を進めているという。アメリカはすでにこれを行い、たとえばフロリダ、テキサス、ニューヨークなどには、外国人観光客が殺到している。

じつは、私の知人も日本の状況に我慢できず、ニューヨークやハワイに「ワクチン・ツーリズム」に行ってしまった。それも一人や二人ではない。何十人もで、家族で行ってしまったケースもある。

このワクチン・ツーリズムは、これまでタイが力を入れてきた「メディカル・ツーリズム」の一種とも言えるので、実現すれば、観光産業復活の切り札になるだろう。すでに多くの日本人が知り、利用しているのが、タイのメディアカル・ツーリズムである。東南アジア諸国でNo.1とされる医療水準を誇るタイでは、医療と観光を組み合わせるかたちでの外国人滞在者を受け入れる政策を行ってきた。

2000年ごろから始まったタイのメディカル・ツーリズムは好評で、コロナ禍前までに日本円で年間700億円を売り上げるまでに成長してきた。医療と観光を組み合わせたパッケージツアーも生まれ、東南アジア諸国、中国、インド、オーストラリア、中東諸国、遠く欧州からも、多くの外国人観光客がタイにやってきた。もちろん、数多くの日本人も訪れた。

そのため、タイ政府はメディカル・ツーリズムを復活させることが、観光産業、経済復活の突破口になると考えているのだ。

5つ星ホテルと見紛う豪華病院

たとえば、タイの民間医療チェーンの最大手バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシズ(BDMS)が経営するバンコクの「BDMSウェルネスクリニック」は、コロナ禍が起こるまで、多くの外国人来院客でにぎわっていた。この病院では、来院客を空港まで出迎え、直接、病院まで案内する。ロビーにはじゅうたんが敷かれ、ソファが置かれたラウンジがあり、薬局がなければ5つ星ホテルと見紛うほどだ。

もちろん、来院客は個々の健康状態に応じて個室で治療や手術を受け、その間にタイの観光もできるようになっている。病院内には、(1)再生クリニック、(2)神経科学クリニック、(3)筋骨格およびスポーツクリニック、(4)心臓クリニック、(5)消化器ウェルネスクリニック、(6)歯科クリニック、(7)ブレストクリニック(8)不妊治療クリニックなどがあり、それぞれでカスタマイズ治療が受けられる。

ワクチンパスポートと外国人へのワクチン接種。それに、こうしたメディカル・ツーリズムを組み合わせれば、この先、外国人観光客は再び戻ってくる。とくに、アジア圏の富裕層は確実にやってくる。そう、タイの観光庁は考えている。

外国人に人気のウエルネスプログラム

じつは、これまでタイのメディカル・ツーリズムをもっとも多く利用してきたのは、中国人と日本人である。 DMSが経営する「バンコク病院」では、在タイ外国人患者の国別の割合を公表しているが、それを見ると、日本人は年間約2万7000人も受け入れている。

その理由の一つに、何人かの日本人医師が勤務していること、また、日本の大学の医学部を卒業したタイ人医師がいることがある。

BDMSでは、2019年11月に「バンコク国際病院」(Bangkok International Hospital)を開業させ、メディカル・ツーリズムをさらに拡充しようとしていた。ところが、コロナ禍が襲い、ベッドの稼働率は5割以下に落ち込んだ。同じく、BDMSがリゾート地プーケットで経営する大型病院「バンコク病院プーケット」も、コロナ禍でベッドの稼働率が5割以下に落ち込んだ。

プーケットは、タイのメディカル・ツーリズムの中心地で、バンコク病院プーケットは域内最大の260床のベッド数を誇っていた。リゾートライフを楽しみ、その間に健康診断やウエルネスプログラムを受ける。さらに、美容整形や歯科治療なども受けられるとあって、多くの外国人が訪れた。中国人はもちろん、ロシア人もやってきた。富裕層のカップルが多く、個人でやってくる女性客も多かった。

知人夫婦もここに行き、ヨガ、マッサージ、ヘルシー食などを取り入れたウエルネスプログラムを満喫し、その体験を話してくれたことがある。しかし、この1年あまり、外国人は姿を消し、顧客はタイ人の富裕層のみとなってしまったのである。

長期滞在者向け「タイランドエリート」の効用

現在、タイ政府は富裕層向けの長期滞在、移住プログラムを充実させている。ハイエンドの観光客やビジネスマン、投資家、そしてロングステイヤーなどに、多くのお金を落としてもらおうとしているのだ。そのため、ビザ取得や滞在特典などを盛り込んだ会員カード「タイランドエリート・カード」を発行し、会員向けにさまざまなサービスを行っている。

メディカル・ツーリズムを利用し、長期滞在をする。あるいは、タイへの長期滞在で在留証明書を取得したい、住所を証明したい。また、タックスID取得して所得税の支払実績をつくりたいなどという向きには、このプログラムは最適だ。2003年から始まっていて、2017年にメンバーシップを7種類に充実させたため、日本人の会員も数多い。

タイランドエリートの最大の利点は、会員になることで長期ビザが発行されることだろう。5年のマルチプルビザが基本だが、メンバーシップによって4回の更新が可能なので、最長20年の滞在が可能になる。また、出入国はVIP待遇で、空港内を専用カートで移動し、専用入国審査ブースで待たずに入国審査を受けることができる。さらに、優先的にバンコク銀行とカシコン銀行に口座を開設できることになっている。

ちなみに、入会費用だが、メンバーシップ種別になっていて、50万バーツ(約175万円)から200万バーツ(約700万円)となっている。

はたして、コロナ禍はいつまで続くのだろうか?
すべてはワクチン次第と言えるが、案外、早くタイへの入国は可能になり、タイの観光産業、経済は復活するのではないだろうか。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2021年05月27日


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