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【新興ASIAウォッチ/第96回】感染爆発のインドネシアで見捨てられる日本人

バタム島で自己隔離状態の日本企業駐在員

「会社は帰ってこいと言うのですが、どうやっても帰れないので、諦めてじっとしています。いまはホテル暮らしで、自己隔離状態です」
と言うのは、インドネシアのバタム島で暮らす私の甥。 

バタム島はシンガポールのすぐ南に位置し、シンガポールからは国際フェリーで1時間足らずで行ける。島内に工業団地と自由貿易区が設けられていて、ここに数多くの海外企業が進出している。日本企業も約70社が進出していて、駐在員数も300人を超える。私の甥もその1人で、工業団地内の工場で現地雇用の従業員とともに働いている。

「感染者が出始めたのは5月半ばぐらい。初めはたいしたことはないと思っていましたが、いまは現地の従業員の半分は感染しているのではと疑っています。なにしろ、病院には患者が溢れていて、PCR検査もできない状態です。私の知り合いの駐在員も何人か感染しました。あまりのひどさに、7月になって帰国する人間が出始め、この前の政府が帰国用に出した特別便には、何人かが間に合って乗ったようです」

ジャカルタに行くことすらできない

政府が特別便を出したことはニュースになっていたので、私は甥もそれで帰るのだろうと思っていた。しかし、現実は甘くなかった。

「特別便に乗るにはジャカルタに行かねばなりません。いくら近くてもシンガポールは外国で、インドネシアからの入国は拒否中です。で、ジャカルタに行こうとしても、国内線はPCRの陰性証明かワクチン接種をしていないと乗れません。さらにジャカルタで何日も待機しなければなりません」

インドネシア政府は7月4日から、国内滞在中の外国人が国外に出る場合にワクチン接種を義務付けた。そのため、帰国を目指す日本人はワクチンを打ってくれる病院を探し回ったという。しかし、インドネシアでワクチンと言えば、中国製のシノバック。アストラゼネカも配布されているが、ほんのわずかしかない。

「アストラゼネカを打てると聞いてツテを頼って行ってみたら、在庫切れでシノバックしかない。それで、打たないで帰ってきた人間がいました」

インドネシアで感染爆発を引き起こしたのは、インド由来のデルタ株。6月半ばから感染者数は増えに増えて1日5万人に達し、死者も1日1000人以上に達した。死者の中にはワクチン接種済みの医者も100人近くいて、シノバックはデルタ株にはあまり効果がないことが判明した。

特別便の帰国者が訴える「厳しい条件」

この原稿を書いている時点(7月28日)で、日本政府が出した特別便は、すでに計4便が日本に着いている。最初の便は7月14日のANA便。その後JAL便も運行され、今後、さらに2便の運行が予定されている。7月25日、帰国者200人近くを乗せて成田に着いたJAL便の搭乗者の1人に電話で話を聞くことができた。

「なんとか帰れましたが、帰れないで困っている人間がいっぱいいます。日本も感染がひどくなったので、帰ってもしょうがないという人間もいますが、向こうの医療の状況を目の当たりにするとやはり帰国するしかありません。すでに日本人も何十人か亡くなっていて、私の知っている限りで3人が亡くなりました」

インドネシアに進出している日系企業はおよそ1900社。その駐在員と家族、そして、現地在住者を合わせた在住日本人数は約2万人とされる。このうちの数千人が、大使館からきた特別便の案内に応募しようとしたという。

「ところが、搭乗できるのはほとんどが駐在員とその家族。しかも大企業に限られているんです。それに、普段では考えられない額のお金がかかる。そのため、断念した人がいっぱいいます。大使館から示された入国時に必要な条件が、あまりにも厳しかったからです」

特別便の費用なんと1人46万円で自己負担

日本政府が大使館を通じて示した条件には、「手配や費用負担は、帰国者の受入企業・団体となる在本邦の企業・団体が行い、当該企業・団体からの誓約書を提出いただく必要があります」という事項があった。これだと、日本企業や団体に所属する人間でないと、特別便には乗れないことになる。

しかも、PCRの検査費用、入国後の自己隔離のための14日間のホテルなどの滞在費用、そこまでの公共交通以外の手段の確保と費用などは自己負担となる。

つまり、日本企業や団体に属さない個人は、ほぼ無理。自己営業や現地企業、あるいはインドネシアに進出した外資系企業に務める日本人は対象外となってしまう。昨年、中国の武漢でパンデミックが起こったとき、政府が用意した特別便はこうではなかった。費用はほぼ政府持ちだった。ところが、今回はすべて自己負担(大企業の駐在なら会社負担が可能)なのだ。

そのため、7月21日の朝日新聞に『インドネシアから特別便、1人46万円「ぼったくりだ」』という記事が載った。この記事によると、ある日系商社で働く30代男性は、家族4人で帰国しようとANAの特別便を調べて驚いたという。大人1人のエコノミー代金14万円に加え、PCR検査や隔離ホテルでの宿泊・食事代などが11泊で約32万円、合わせて約46万円。家族4人で200万円近くになるからだ。

ただ、この男性の会社は特別便の利用を認めてくれた。しかし、会社は中小なので、男性は「こんな金額をかけて帰国するのは後ろめたい」と悩んでいるうちに席は売り切れたという。
(追記:今後の特別便では隔離ホテルの宿泊代などは国の負担になるという)

日本はワクチンを提供するも焼け石に水

インドネシアではすでに医療が崩壊し、首都ジャカルタでは墓地がいっぱいになり、臨時に墓地をつくらねばならなくなっている。ワクチン接種は進まず、病院には患者が溢れており、自宅で死ぬ例も数多く報告されている。どこの病院も受け入れてくれず、最後に訪れた病院の駐車場の車の中で死んでいる女性が発見されたという報道もあった。

インドネシア政府はこれまで経済への影響を重視し、タイやベトナムで実施されている強制的なロックダウンを行なってこなかった。7月初めから、ジャワ島と国際的観光地バリ島のあるバリ州に対して活動制限措置を始めたが、日本の緊急事態宣言と変わらない緩い規制にすぎない。そのため、感染拡大は止まらない。

ワクチンも不足している。しかも、9割が中国製のワクチンだ。7月25日時点で、ジャカルタ特別州が発表したところでは、1回目の接種を終えた人は約705万人で、目標人口の約80%。2回目の接種を終えた人は約222万人で目標人口の約25%に達している。しかし、これはジャカルタだけの話で、インドネシア全体での接種率は6%にすぎない。

日本はインドネシアに、アストラゼネカのワクチン約100万回分を無償提供した。しかし、インドネシアの人口は約2億7000万人。焼け石に水と言っていい。

ワクチンを送ってほしいという声を無視

特別便がこんな有様だから、現地の日本人からは、「せめてこちらの日本人向けにワクチンを送ってほしい」という痛切な声が出ている。ジャカルタへの特別便にワクチンを積んで運び、大使館などを会場にして、現地在住者に接種したらどうかというのだ。実際、こうした提案は大使館に持ち込まれたという。しかし、日本政府の反応は鈍く、「ワクチンを打つ医療者の確保が難しい」と断られたという。

「そんなのは方便にすぎませんよ」と言うのは、前記したANA便で帰国した人間。彼はこう続けた。
「ジャカルタには日本人の医者もかなりいます。また、現地の医療機関に協力を要請すればやってくれるはずです。ところが、そうしたことを政府も大使館もしようともしないのです。面倒なんでしょうね。まだまだ帰国希望者はいます。そうした人たち全員を連れ戻すのに、特別便を何便も飛ばすくらいなら、ワクチン接種をした方が費用の面からいってもいいのに。仕事があるので、帰りたくても帰れない人間も、まだいっぱいいるのです」

ジャカルタの現地報道によると、7月になってから在留外国人の帰国が激増しているという。約1万人がインドネシアを脱出したという。いちばん多いのが中国人で、次が日本人、アメリカ人と続く。各国とも自国民を手厚く保護している。しかし、日本は違う。日本政府は、海外に出た日本人は日本人ではないと考えているのかもしれない。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2021年08月12日


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