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【新興ASIAウォッチ/第87回】ラオスが「債務の罠」に陥っている

日本が最大の援助国であるASEAN最貧国

今回、このコラムで初めてラオスについて書くので、まず、そもそもラオスがどんな国か述べてみたい。ラオスは日本人にとっては遠い国である。発展するASEANの中で“最貧国”とされているので、日本企業の進出も少ない。首都ビエンチャンには日本からの直航便もないし、日本からの旅行者も少ない。古都ルアンパバーンはラオスで最大の国際的な観光地だが、欧米からの旅行者に比べ、日本人の旅行者は本当に少ない。

ラオスの一人当たりのGDPは1475ドルで、日本の約30分の1。人々の暮らしは本当に貧しい。同じ仏教国で、お米が主食、メコンの豊かな流れもあるベトナムが驚異的な発展を遂げているのに比べ、ラオスに行くと時間が止まったように感じる。国土は日本の約6割と広いが、多くは高原や山岳地帯で、人口は約700万人。愛知県とほぼ同じだ。ほとんどの人々は農民で、農業以外にこれといった産業はない。なんといっても、政治体制がラオス人民革命党による一党独裁のため、この国には自由はない。

日本はこんなラオスの最大の援助国。安倍前首相は気前よく、首脳会談のたびに数十億ドルの援助を申し出て、大いに喜ばれてきた。しかし、最近のラオスが「債務の罠」に陥っているというから、ただ事ではない。

相次いで出た「債務格付け」の引き下げ

この9月14日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ラオスの政府債務(国債)の格付けを投機的水準の「B3」から2段階低い「Caa2」に大きく引き下げた。続いて9月23日、今度はフィッチ・レーティングスが、「Bマイナス」から重大な信用リスクがある「トリプルC」に、同様に2段階引き下げた。

両者に共通する引き下げ理由は二つだ。一つは、新型コロナウイルスの打撃で財政が悪化したこと。もう一つは、中国向けの公的債務の返済期限が迫っていることだった。

たしかに、ラオスは新型コロナウイルスの打撃を受けた。ただし、10月25現在の感染者数は、政府発表によるとなんと24人と圧倒的に少ない。それでも、感染者が確認された春に厳正なロックダウンをしたため、経済は停滞したままだ。

フィッチが格付け引き下げを発表する2日前、ラオス国会のリーバー・リーブアパオ計画・財務・監査委員長は、「ビエンチャンタイムズ」紙で、2020年のラオスの財政赤字は前年より54%多い10兆3000億キップ(約1200億円)になるという見通し明かした。

中国の高速鉄道建設の提案に飛びつく

このような経過でわかるように、格付け引き下げの理由は経済の悪化、すなわち歳入不足だが、問題は中国からの借金である、これを返せないだろうと、格付け会社は見たのだ。では、なぜラオスは中国から返せないほどの借金をしたのか?

それは、独裁政権にありがちな巨大インフラ建設への誘惑だ。鉄道、道路、ダムなどをつくりたいが資金がない。すると、中国が話を持ちかけてくる。ラオスの政府債務の大半は中国からのもので、そのうちの最大が中国雲南省・昆明とビエンチャンを結ぶ高速鉄道の建設費である。この計画が中国から持ち込まれると、ラオス政府はすぐに飛びつき、2016年から本格的な建設が始まった。完成は、来年12月2日のラオスの建国記念日となっている。

ASEANでただ1国、海がない内陸国のラオスにとって、鉄道は生命線である。フランス植民地時代でさえ、ベトナムやカンボジアと違い鉄道がなかったラオスだけに、中国からの提案は夢のよう話だった。しかし、甘い話には罠がある。中国の「一帯一路」に潜む「債務の罠」が、ここでも現出してしまった。建設費は約60億ドルとされ、そのうちの約7割が中国への債務として計上されたのだ。

GDP、外貨準備高から見て返済は不可能

ラオスの中国への借金返済は、年内に約5億ドル、来年からは4年間、毎年約10億ドルの返済義務が課せられている。また、ラオスの対外債務は、累積で100億ドル以上という。

これに対して、ラオスのGDPは約180億ドル。外貨準備高は約9億ドルしかないとされるので、どう見ても返済は無理だ。2019年のラオスの公的債務残高は、GDP比で59%だった。これが、2020年には65~68%に上昇する可能性があると、世界銀行は指摘している。ラオス政府は、国債発行や国有企業の株式売却を加速させる構えだが、それではとても足りない。

中国系メディアの報道によると、ラオス政府はデフォルトを避けるために、とりあえず国営企業のラオス国立送電網公社の管理運営権のほとんどを中国企業に引き渡したという。

これまでの中国の「債務の罠」では、2013年にパキスタンがグアダル港の管理運営権を中国に奪われた。スリランカも2016年に債務不履行に陥って、ハンバントタ港の99年間運営権を中国に引き渡した。アフリカのジプチにいたっては、自由貿易区と鉄道建設の見返りに、中国に海外初となる軍事基地の建設をプレゼントした。

鉄道完成とともに中国の属国に

ラオスのGDPは、タイやベトナムなど、国外で働く出稼ぎ労働者の仕送りによるところが大きい。ところが、コロナ禍で10万人以上の出稼ぎ労働者が帰国を強いられた。世界銀行によると、ラオスへの送金は最大で1億2500万ドルも減少し、ラオスのGDPを0.7%押し下げる見通しだという。

そんな中、9月22日に中国ラオス鉄道で最大の難関とされた「福格村トンネル」が貫通した。福格村トンネルはラオスのウドムサイ県に位置し、全長は8936メートルで、中国ラオス鉄道の全線で4番目に長いトンネルだ。中国ラオス鉄道の全線には75本のトンネルがある。このすべてを中国がつくり、全長400キロ以上の鉄道は全面的に中国の管理基準と技術基準が採用されて建設されている。

高速鉄道とされるが、いわゆる新幹線ではない。最高速度は160キロで、山岳地帯では120キロ以下となる。9月の時点で、すでに9割は完成しており、来年の完成は間違いない。しかし、完成したら、鉄道は中国のものになり、ラオスは中国の完全な属国となるだろう。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2020年10月27日


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