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【新興ASIAウォッチ/第83回】なぜ日本のエアコンは世界一なのか?

エアコンを買いに家電店へ行く

新型コロナウイルスの感染が一段落したようなので、先日、近所の家電量販店にエアコンを買いに出かけた。リビングのエアコンは設置して10数年。すでに耐用年数を超えていたので、以前から買い換えようと思っていた。なにしろ、音がうるさいし、空気もなんとなくカビ臭い。

そこで、家内と相談して、メーカーと機種はある程度決めてから出かけた。しかし、いざ売り場を見て回ると迷いに迷った。最近のエアコンは進化に進化を重ねている。AI制御運転、高感度センサー、イオン除菌、自動洗浄、除湿・加湿など、その機能の多彩さに驚いた。店員の丁寧な説明がなかったら、決められなかっただろう。

「コロナのせいか、今月になって注文が一気に増えました。いま本当に立て込んでいるので、設置工事は2週間後になりますが、よろしいでしょうか」と言われたが、買わないわけにはいかない。性能のいい日本のエアコンがなければ、最近の地球温暖化による猛暑は乗り切れない。

エアコン選びをしながら改めて思ったのは、日本の家電メーカーの製品づくりのきめ細かさと技術力の高さだ。この日本のエアコンがあったから、東南アジアは経済発展ができた。このことも改めて思った。

なぜキンキンに冷やしているのか?

東南アジアの国々、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポールなどのオフィスで驚くのは、どこもエアコンをキンキンに効かせていることだ。ホテルもレストランもそう。ゾクッとするほど冷えている。それで、あるとき「もうちょっと温度を上げたらどうでしょう」と、オフィスを案内してくれた日本人駐在員に言ったことがある。リモコンをのぞいたら、設定温度が22度になっていたからだ。ところが駐在員は、「できないんです。現地社員からブーイング起こります。シンガポールでは22度がスタンダードなんです」と言ったのである。

まさかと思ったが、建国の父リー・クワン・ユーが決めたのだという。リー・クワン・ユーがインタビューで、「シンガポールの成功の秘訣は?」と聞かれ、「エアコン」と答えたという有名なエピソードがある。彼は、「エアコンが発明されなかったら、熱帯の国の発展はありえなかっただろう」と言ったという。このとき、彼は2つの理由を挙げたのだが、エアコンの方だけが一人歩きしてしまった。

ちなみに、もう一つの秘訣とは「民族の多様性」だ。「多様な民族グループが互いに認め合い、受け入れ合うことで、シンガポールは発展できた」と、リー・クワン・ユーは胸を張ったという。

設定温度22度は低くすぎる

リー・クワン・ユーがエアコン好きだったことは確かである。しかし、設定温度まで決めていたというのは初耳だった。
「リー・クワン・ユーが首相になって最初にした仕事が、役所のエアコンの設置でした。それで、仕事の効率が上がりました。このとき、設定温度をいろいろ試したのですが、22度が仕事が一番捗ったといいます」と、現地社員。

このへんになると本当かどうか怪しいが、熱帯の国だけに設定温度を下げなければ冷えないのだろう。ただし、昔のエアコンならいざ知らず、AIコントロールのいまのエアコンは室温を完全にコントロールできる。

日本では、環境省が推奨温度を公示している。それによると、夏(冷房)は28度、冬(暖房)は20度である。夏の推奨温度が28度と聞くと驚いてしまうが、これは室温であって設定温度ではない。ひとまず設定温度を28度でエアコンを運転し、室温が28度に保たれるのが望ましいというという。たとえば、外気温が高かったり、強い日差しが入ってきたりするようなことがあれば、設定温度を下げて調節する。

もちろん、これは日本の場合である。熱帯の東南アジアでは、環境が異なる。といっても、いくらなんでも22度は低すぎないだろうか。

「外は熱帯、常に30度以上ですから、これでいいんです。それに、ビルやオフィスに入ったとき、冷房が効いていないと、みな怒ります」と、日本人駐在員は言った。バンコクでも、エアコンが効きすぎだと思ったことが何度かある。とくに映画を見にいったときは、体が芯まで冷えて途中で映画館を出てしまった。

エアコンの点検義務契約と激安家賃

シンガポールでは、エアコンなしの賃貸物件はないと言っていい。しかも、エアコンは24時間運転と決められ、日本のように止めたりしない。そのため、故障を防ぐために3ヵ月に1回、メンテナンス業者による点検を受けることが義務付けられている。賃貸契約書に、そうした条項が入っている。

「メンテナンス業者を呼んだら、点検後、必ず領収書をもらって保管しておかなければなりません。退去時に管理会社に提出するからです。それがないと、エアコンの点検違反で違約金を請求させられます」と、先の駐在員。
じつは、彼の会社の新人が赴任してきたとき、安い掘り出し物の激安賃貸物件を見つけてきて、喜んだことがあるという。

シンガポールの住宅は、HDBと呼ばれる「公団団地」か、コンドミニアムや一戸建ての「民間住宅」の2つに大きく分けられる。国民の9割は安価に購入できるHDBに住み、中間層と富裕層は民間物件に住む。1人暮らし用の物件は少ない。そのため、1人暮らし向けに、「間借り物件」や「シェア物件」がある。

新人が見つけてきたのは間借り物件で、間借りユニットにはベッドルームと、別に区切られた一部屋があり、バス、トイレ、家具付きだった。しかし、エアコンが付いていなかったのである。古いHDBで賃貸に出ているところも、エアコンがない場合があるという。そんな物件に、一時期、知人の息子が住んでいたが、エアコンがなかったため、家賃は激安だったと聞いた。

エアコンの普及率と世界市場ランキング

東南アジアではエアコンは必需品だが、一般家庭にはまだまだ普及していない。シンガポールでは9割、マレーシアは6割に達しているが、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどは、まだ5割にも満たない。日本では、一家庭に3台、4台、部屋ごとに1台が付けられていることを思うと雲泥の差だ。

ホームエアコン(家庭用)は、1人当たりのGDPが3,000ドルを超えると急激に普及するとされるので、東南アジア地域は今後、エアコンの最大の市場と言える。現在、全世界のエアコン市場の規模は、8~10兆円とされており、このうち住宅用は約3兆円、残りの5~7兆円が業務用となっている。

この世界市場の最新のランキング(ドル建て売上高シェア)を見ると、次のような順になっている。
(「業界ランキングと投資ファンド保有ポートフォリオ研究所」のサイトが公開している『空調機・エアコンメーカーの世界売上高ランキング(2020年版)』より)

  企業名 ドル建て売上シェア
1位 珠海格力電器 10.8%
2位 ダイキン 10.0%
3位 美的集団 7.6%
4位 トレーン・テクノロジー 6.5%
5位 ユナイテッド・テクノロジーズ(Carrier) 4.8%
6位 三菱電機 4.1%
7位 ジョンソンコントロールズ(York) 3.1%
8位 パナソニック 2.4%
9位 ハイアール 2.0%
10位 ボッシュ 1.8%

ダイキン、三菱、パナソニックの日本メーカー3社がトップ10に入っていることは、誇らしい限りである。とくにダイキンは、2019年までは世界1位で、中国の珠海格力(グーリー)に抜かれたのは、中国の市場規模(人口)が大きく、家庭用エアコンの普及が進んだからにすぎない。美的集団(ミディア)も同様の理由でランキングを上げてきた。東南アジア市場を見ると、ダイキン、三菱、パナソニックなどの日本メーカーは、中国勢を断然引き離している。

なぜ日本のエアコンは勝ち続けているのか?

日本メーカーのエアコンは、中国勢などのエアコンに比べると高価格である。しかし、機能と技術に裏付けされたブランド力では断然優っている。最初に安価なエアコンを買った家庭も、所得が伸びて買い替えとなると日本ブランドのエアコンを選ぶ。

たとえばダイキンは、ベトナムやインドネシアでは断然強い。パナソニックもベトナムでは強い。これは、ベトナムやインドネシアでも中間層が育ってきたからだ。ところが、最近ではこれまで世界をリードしてきた高機能・高性能なハイエンド製品ばかりか、一般向け製品のラインナップも充実し、こちらも売れている。

その理由は、ひと言で言うと「現地化」だろう。これまで日本の家電は、日本市場を勝ち抜いた高機能・高性能製品を輸出するか、それを現地生産するかで勝負してきた。だから、低価格のハイアール、サムソンなどに負けたのである。しかし、エアコンは違った。 エアコンは、徹底して現地化しないと売れないのだ。日本には日本特有の気候があり、東南アジア各国には各国特有の気候がある。それを無視して、ただ冷えるだけのエアコンでは売れない。高温多湿ならそれなりの機能、たとえば除湿機能がなければならない。

さらに、各国、各地域ごとに家屋の構造も、電力供給や規制も違う。インドネシアの都市部の一般住宅は狭いうえ、電力の供給量が少ない。そのため、大型よりも小型で、電力消費の少ない0.5~1馬力以下が適している。また、ベトナムの伝統的な住宅は細長い構造になっているので、空調が大事になり、強風が遠くまで届く機能が必要になる。電気料金が高いフィリピンのような国では、電気代がセーブできるインバーターエアコンでなければならないなど、日本メーカーは、エアコンでは技術力を駆使して現地化を行ってきたのである。

今後も東南アジアはエアコンの成長市場

もう一つ、日本のエアコンが東南アジアで人気の秘密がある。それは「サービス」だ。多くの白物家電は、売り切りである。洗濯機、冷蔵庫、テレビなどは、家電店に陳列して並べれば、それで消費者が勝手に選んで買っていってくれる。しかし、エアコンとなると、設置するには工事が必要だし、シンガポールのように一定期間ごとのメインテナンスが必要となる。

つまり、エアコンを売るとなると、こうしたサービスもセットにしなければならない。日本メーカーは、これが得意である。かつて「なんでも自前主義」は否定されたが、それにこだわり続けたおかげで、エアコンにおいては成功したのだ。自前で据付工事ができるディーラーを要請するのには、相当な手間がかかる。しかし、日本メーカーはそれをやって、量販店ではできないサービス・ネットワークを充実させてきた。

ダイキンの場合、世界中に10万を超える自前のネットワークをつくり、たとえばインドネシアでは、約1000点の販売店を持っている。東南アジア各国の人口の平均年齢は若く、今後も中間層の増加が見込める。しかも、人口規模も大きい。インドネシアは約2億6000万人、ベトナムは約1億人、フィリピンも約1億人、タイは約7000万人だ。インドにいたっては約13億人もある。それを思うと、今後も日本のエアコンが、この地域の成長を牽引していくのは間違いない。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2020年06月26日


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