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今年の2月、中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が世界に広がったとき、一番懸念されたのが、中国に地理的にも経済的にも近いアジア圏だった。とくに、日本、韓国、台湾などの東アジア圏と、ASEAN10ヵ国の東南アジア圏は、深刻な感染拡大が心配された。ところが、3ヵ月を経たいま、最も感染が拡大したのはアメリカ、続いて欧州諸国、最近はブラジルなどの南米諸国であり、アジア圏はそれらの諸国に比べて“被害”が少なく済んでいる。感染者数も少ないうえ、死亡者数も圧倒的に少ない。
なぜ、アジア諸国は欧米諸国に比べて、ここまで被害が抑えられたのか?
これまでの報道から、韓国、台湾、香港などが感染防止に成功した理由は判明している。それは、SARSなどの経験から、感染症に対する備えが整っていたこと。加えて、素早く中国との国境を閉じ、国内である程度の封鎖(ロックダウン)を実施したこと。なおかつ、ITを駆使した感染者と接触者の追跡を行ったからだ。しかし、東南アジア諸国に関しては、いまだに明確な答えがない。そこで本稿では、「なぜ東南アジア諸国はコロナ禍を克服できたのか?」を考察してみることにしたい。
まず、東南アジア諸国の現状を欧米主要国と比べてみよう。次は、ジョンズホプキンズ大学CSSEを参照にして、筆者が選んだ各国の状況比較(5月24日現在)だ。左から、感染者数、死亡者数、人口100万人当たりの死亡者数とした。
感染者数(人) | 死亡者数(人) | 人口100万人当たり 死亡者数(人) |
|
---|---|---|---|
アメリカ | 1,660,828 | 98,683 | 298 |
ブラジル | 347,398 | 22,013 | 104 |
ロシア | 335,882 | 3,388 | 23 |
スペイン | 282,370 | 28,687 | 613 |
イギリス | 257,154 | 36,675 | 541 |
イタリア | 229,327 | 32,735 | 541 |
フランス | 182,469 | 28,332 | 434 |
ドイツ | 179,986 | 8,366 | 100 |
インド | 131,423 | 3,868 | 3 |
中国 | 82,974 | 4,634 | 3 |
シンガポール | 31,068 | 23 | 4 |
インドネシア | 21,745 | 1,351 | 4 |
日本 | 16,550 | 820 | 6 |
フィリピン | 13,777 | 863 | 8 |
韓国 | 11,165 | 266 | 5 |
マレーシア | 7,185 | 115 | 4 |
タイ | 7,185 | 56 | 0.8 |
香港 | 1,066 | 4 | 0.5 |
台湾 | 441 | 7 | 0.3 |
ベトナム | 324 | 0 | 0 |
ミャンマー | 201 | 6 | 0.1 |
カンボジア | 124 | 0 | 0 |
ラオス | 19 | 0 | 0 |
この比較表で大事なのは、人口100万人当たりの死亡者数である。感染者数は検査をして確認された数であり、各国の検査人数や人口が違いすぎる中では比較してもあまり意味がない。それに比べて、人口100万人当たりの死亡者数は、コロナ禍の被害を端的に表していると言っていい。とすれば、欧州諸国が軒並み500人ほど、アメリカが300人ほどといずれも3桁なのに、東南アジア諸国がすべて1桁というのは“異常”と言うほかない。
東南アジア諸国の中で、断然の“優等生”と言えるのがベトナムである。中国と国境を接し、経済的にも強く結びついているのに、感染者数は300人余りで死者はゼロである。
先日、ベトナムから帰国した知人の日本企業駐在員によると、「2月初めには中国との交流を完全にストップし、ロックダウンに入ったことが功を奏したのでは」と言う。彼はまた、「感染者が出たところは、共産党組織を総動員して戸別訪問が行われ、隔離も徹底して行なわれた。こういうことは日本ではできませんよ」とも言った。
たしかに、これが成功の原因かもしれないが、人口約9600万人の国で、死者ゼロというのは奇跡に近い。
すでに4月23日から、ベトナムでは、ロックダウンばかりかソーシャルディスタンシングも解除されている。なお、カンボジアとラオスも死者はゼロ、ミャンマーは6人と少ないが、公表されている数字は信憑性に欠けるとされている。
タイも“優等生”である。人口約7000万人の国で、感染者数が3000人ほどで、人口100万人当たりの死亡者数は0.8人。これを人口が2倍弱の日本と比べれば、感染者数が約5分の1、死亡者数が約6分の1だから、非常事態宣言など必要なかったと思える。ところが、バンコクは完全にロックダウンされた。ただ、5月になって感染者が激減したので段階的な解除に入っている。
ベトナム、タイともに、PCR検査数は日本よりはるかに多い。日本の検査数は世界でも最低レベルの人口100万人当たり1725件。ベトナムは2681件で、タイ3264件である(5月10日までの集計)。
ベトナム、タイの優等生ぶりに比べると、シンガポール、インドネシア、フィリピン、マレーシアは、東南アジア諸国の中では“劣等生”である。シンガポールはで出稼ぎの外国人労働者を中心に感染が拡大し、東南アジアNo.1の3万人を超える感染者数を記録した。ただ、これは徹底した検査を行なった結果ともされる。シンガポールの人口100万人当たりの検査件数は、3万16件と欧米諸国並みに多い。
一方、インドネシアは人口が約2億6800万人、島国で国土が分散していることもあって、人口100万人当たりの検査件数が540件と圧倒的に少ないせいか、現時点でも、感染者数と死者数が増え続けている。フィリピンも同じく、人口100万人当たりの検査件数は日本とほぼ同じ1580件と少ない。そのせいとは言えないが、感染者数も死者数も増え続けている。ただ、マレーシアは一時クアランプールのイスラム教の礼拝で1万人以上のクラスターを出したが、検査件数を人口100万人当たり8395人にまで伸ばし、ロックダウンを行なった結果、感染拡大は止まった。
以上の4ヶ国が東南アジアの“劣等生”だが、人口100万人当たりの死亡者数だけを見れば、シンガポール4人、インドネシア4人、フィリピン8人、マレーシア4人だから、欧米諸国から見れば完全な“優等生”である。
東南アジア諸国がなぜこれほどコロナに強いのか? その理由は、これまでいくつか指摘されている。以下、それを列記してみよう。
東南アジア諸国は、いずれも国民が若い。WHOの世界中央年齢(平均年齢)ランキングを見ると、シンガポール38.1歳、タイ36.9歳、ベトナム29.8歳、インドネシア27.8歳、マレーシア27.4歳、フィリピン23.0歳といった具合だ。これに対し、ドイツ45.5歳、イタリア44.3歳、スペイン41.4歳、フランス40.6歳、英国40.2歳と、欧州諸国はみな高い。
ちなみに、超高齢化社会の日本は世界一で45.9歳。新型コロナウイルス感染症の死者は、ほとんどが高齢者。そのため、東南アジア諸国は死亡者が少なく済んだというのだ。とはいえ、どの国にも高齢者は一定数いる。
アメリカのホワイトハウスは5月初め、まだ検証が終わっていない段階としながらも、「新型コロナウイルスは高温多湿に弱い」という内容のステートメントを発表した。トランプ大統領はこれを喜んだが、この説はまだ証明されていない。シンガポールなどの赤道直下で感染拡大が起きたことを考えると、じつはウイルスは高温多湿に強いという見方の方が有力だ。いずれにしても、真夏のような気候では感染力が多少落ちることはあるが、大きな効果はないようだ。
シンガポールは当初、感染防止に成功した。しかし、インドやバングラデシュからの出稼ぎ労働者を中心にクラスターが発生、感染爆発した。彼らは、狭い部屋で共同生活し、トイレや洗面台を共有していた。また、保険適用がなく病院にかかれなかった。こうした劣悪な公衆衛生環境は、まだ、多くの東南アジア諸国に存在する。したがって、いま感染拡大が抑えられているのは一時的なもので、検査数が拡大するとともに、感染者、死者はまだまだ増えるとする見方がある。
ウイルスは常に変異(ミューテーション)をとげる。欧米の医学者らが運営する新型コロナウイルスのゲノムに関する専門サイト「ネクストトレイン」によると、ウイルスは15日に1度のペースで変異をとげているという。また、いくつかの研究機関は、その変異を追跡し、ウイルスの型を分類した。日本の国立感染症研究所も同じような研究・調査結果を発表している。
これらの見解をまとめると、新型コロナウイルスは元の「A」、アジアの「B」、欧米の「C」の3種類の型があるという。武漢を中心に中国で蔓延したのが「A」で、「A」から分かれて東アジア、東南アジア諸国に広がったのが「B」、そして、「B」から分かれてアメリカや欧州諸国に広まったのが「C」という。また、ウイルスは変異するごとに毒性を強めたという。つまり、東南アジア諸国は東アジア諸国と同じく「B」の封じ込めに成功した。その後、「C」が入ってきたが、ロックダウンが効いていたので感染拡大しなかったというのだ。
この説は、かなり根強い。いくらウイルスが変異したとはいえ、発生源の中国の人口100万人当たりの死亡者数は3人である。また、前記したように、アジアの国々はいずれも死亡者数が、欧米諸国に比べダントツに少ない。こうなると、アジア人はなにか遺伝的に特別にコロナに強いもの持っているのでは、という仮説が成り立つ。
この仮説が真実味を増すのは、同じアジアの国でも台湾、韓国などと比べて対策が後手で杜撰な国(たとえば日本、インドネシアなど)でも、結果が同じだということだ。ただし、アジア以外でも、死亡者が少ない国はある。オーストラリアもニュージーランドも人口100万人当たりの死亡者数は4人だ。
アジア圏ではマスクの着用率が8割を超え、欧米に比べ突出して高い。欧米人は当初、習慣からほとんどマスクをしなかった。この差は大きいという。日本リサーチセンターと英「YouGov」社が世界26ヵ国を対象に実施した「第6回 新型コロナウイルス自主調査」によると、中国、台湾、ベトナム、日本などのアジア圏では、調査開始時からマスクの着用率は6割以上を維持。この6回目の調査では、8割を超えていた。
この説は、日本では根強く信じられている。BCGワクチンを定期接種にしている国(日本、中国、韓国、香港、シンガポール、マレーシア、ベトナムなど)は感染者も死者も少なく、接種をしていない国(イタリア、スペイン、アメリカ、フランス、イギリス)では感染者も死者も多いのは歴然としている。
しかし、これは統計的なことで、まだ医学的な因果関係は証明されていない。オーストラリアなど複数の国で、BCGワクチンによる新型コロナ予防効果をみる臨床研究が開始されたので、その結果を待つしかない。ただ、最近のイスラエルの研究では、因果関係がないという結果が出た。
さて、最後にひと言。ここまで、東南アジア諸国を見てきたが、東南アジア諸国と、中国、韓国、台湾、香港などの東アジア諸国も含めたアジア圏全体で見ると、なんと、日本の成績は“ブービー”である。日本の人口100万人当たりの死亡者数は、かろうじてフィリピンより2人少ないだけなのだ。
安倍首相は先日、「日本は中国からの第1波の流行を抑え込むことができた。欧米経由の第2波も抑え込みつつある。人口当たりの感染者数、死亡者数はG7、主要先進国の中でも圧倒的に少なく抑え込むことができている」と成果を強調した。しかし、これはアジア諸国から見たら、「日本、大丈夫?」という話だ。
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※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2020年05月27日
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