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【新興ASIAウォッチ/第81回】コロナ対策優等生シンガポールの異変

感染拡大で経済成長はマイナスに

新型コロナウイルスの感染防止対策の手遅れから、感染拡大が止まらない日本。そんな日本から見ると、これまでのシンガポールは感染を封じ込めた優等生に見えた。3月になって、イタリアやスペインなどの欧州諸国、アメリカなどが次々に感染爆発を起こしたとき、シンガポールの感染者数は低く抑えられていた。そのため、欧州諸国やアメリカのような厳しいロックダウンをする必要性がなかった。WHOも「シンガポールは感染防止に成功している」と言っていた。

ところが、3月末から様相が一変した。徐々に感染者が増え、4月に入ると感染拡大がさらに進み、4月20日にはなんと感染者数が1万人を超えてしまった。これは、東南アジア一の感染者数であり、人口564万人の小国にとっては、大変な事態である。

この事態を受けて4月23日、チャン・チュンシン(陳振声)貿易産業相は、GDPが従来の想定の4%より大きく縮小する可能性があるという見解を表明した。すでに、一部ではマイナス成長が想定されていたので、このままいけばシンガポール経済は、今年、史上最大の落ち込みを記録するかもしれない。いったいなぜ、シンガポールはコロナ対策に躓いてしまったのだろうか?

香港にならって早期対策を打ったが…

シンガポールのコロナ対策は、香港とよく比べられる。香港も人口が745万人で、シンガポールと似た都市国家だからだ。香港は、1月末から2月初めにかけていち早く対策に乗り出し、マスク着用の義務化、学校の一斉休校、集会の禁止、施設の休業、公共交通の削減、入境者に対して14日間の強制隔離などを次々に打ち出した。それに伴い、18歳以上の市民1人あたり1万香港ドル(約14万円)の現金支給も決定した。

シンガポールの場合、香港の対策を見習うように2月初めから対策を開始した。ただし、その対策は香港ほど厳しくなく、当初、政府は「健康であればマスクはするな」と国民に言っていた。その理由は「マスクでは飛沫感染の予防ができない。マスクの在庫は無限ではない。具合が悪い人への優先供給が必要」というものだった。

シンガポールが国境を接しているのはマレーシアだけ。そのため、入国管理がしやすい。また、2003年のSARSのときに隔離病棟が整備されていたこと、医療レベルも高いことなどが、対策を香港より緩くさせた原因と思われる。ロックダウン的な厳しい対策の代わりに、シンガポールが徹底させたのが、「検査」「接触者追跡」「感染者隔離」の3点だった。

徹底した追跡でクラスター潰し

シンガポール政府は、感染者への聞き取り調査で濃厚接触者を割り出し、街頭の防犯カメラの映像解析なども利用して追跡を行った。シンガポール保健省は、感染者が確認されるとその情報を同省のウェブサイトで公開した。日本のように個人名や勤務先などを隠さず、すべてを公開した。そして、濃厚接触者と見なされれば、自宅隔離や出勤停止の措置が取られた。

 

シンガポール政府は3月20日になると、濃厚接触者を追跡するためのアプリ「トレース・トゥゲザー」(共に追跡)を導入し、国民への無料配布を開始した。こうして、クラスター潰しを徹底して行ったのである。もちろん、休業補償も行った。企業が従業員を解雇することを避けるための支援策として、2020年末まで従業員の月給の25~75%を政府が肩代わりする。また、フリーランス(個人事業主)には、月額1,000シンガポールドル(約7万6,000円)を支給することを決めた。

見過ごされた出稼ぎ外国人労働者

しかし、こうした政策には大きな穴があった。シンガポールには、インドやバングラデシュなどからの出稼ぎ労働者が多い。その数、約30万人とされるが、この人々が見過ごされていたのだ。3月末から、こうした出稼ぎの外国人労働者から次々に感染者が出て、新しいクラスターを形成するようになった。

外国人労働者の多くは、狭いアパートで集団生活をしている。ゴミ箱とトイレしかない部屋で、10人以上が2段ベッドで暮らしているという例が少なくない。これでは、感染者が1人出ると、たちまち集団感染してしまう。それなのに、政府は彼らを検査対象から外し、2月半ばから全世帯を対象にするとして打ち出したマスクの配布先からも外していた。

外国人労働者の感染が明らかになるとともに、人権団体や慈善団体、医療専門家が政府を批判するようになった。例えば、政府は感染拡大防止のため、1人の医師が複数の病院で勤務するのを禁止した。ところが、これにより、一部の外国人労働者が利用していたボランティアによる医療サービスは人手不足となり、感染拡大に拍車をかけてしまったのである。

長期的に見れば厳しい対策が経済を救う

シンガポール政府は、外国人労働者の感染拡大を受けて、厳しいロックダウン措置に入った。学校も飲食店も会社も閉鎖した。そして、国民の外出を禁止し、近所のスーパーへ買い物に出かけるのも規制した。生活必需品や食料は、なるべく宅配サービスを利用するように要請した。

また、感染が疑われる濃厚接触者は、保健省から1日数回、スマホにメールや電話などで連絡が入り、その都度、所在地を返信しなければならなくなった。ただし、これらの措置の違反者への罰則適応は見送られた。

このように見てくると、初期段階で徹底したロックダウンのような対策を取らなかったこと、外国人労働者の存在を見過ごしたことの2点が、シンガポールに感染拡大の「第2波」をもたらしたと言えるだろう。シンガポール政府は認めないが、当初、経済への影響を重視しすぎたきらいがある。

  香港とシンガポールの明暗を比較すると、長期的に見れば、早い段階で厳しい対策を取った方が、結局は経済にもプラスになるということを示しているのではないだろうか。そう考えると、日本はどうだろうか。どこからどう見ても、日本はシンガポールよりひどい。緊急事態宣言を出しても厳しい対策は取らないうえ、対策そのものが後手で小出しだ。オリンピック開催を控え、経済を重視し過ぎたとはいえ、発生源の中国を除くアジアの中で、もっとも感染を拡大させてしまった政府の責任は大きい。シンガポールは感染拡大とともに対策を軌道修正した。日本もただちに軌道修正すべきだろう。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2020年04月24日


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