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【新興ASIAウォッチ/第80回】ASEAN諸国の「パンデミック」の実態

ヒト、モノ、カネの動きが止まり「鎖国」に

「まさか、日本に帰れなくなるなんて」
と言うのは、クアラルンプールの日本企業駐在員。マレーシア政府は、3月18日からマレーシア国民の出国と外国人の入国を全面的に禁止する「事実上の国境封鎖」に入った。もちろん、日本人だから出国して日本に帰ることはできる。

「しかし、1度出てしまうと、次の入国時に検査の受診と14日間の隔離が義務付けられます。これでは仕事にならないので、本社と話し合いこちらにいることにしました」

今回の新型コロナウイルスのパンデミックが起こる前まで、新興アジア地域は世界でも有数の経済発展エリアだった。その経済発展の時計が、いま、完全に止まろうとしている。今年の初め、誰がこんなことを想像しただろうか?
ヒト、モノ、カネが自由に動くのがグローバリゼーション。その恩恵をもっとも受けてきたのが、新興アジア地域だった。ASEAN域内が自由貿易圏となり、各国の経済は大発展してきた。ところが、新型コロナウイルスがヒト、モノ、カネの動きを止めてしまった。

本稿を書いている時点(3月25日)で、ASEAN各国はほぼ「鎖国」状態に入った。国民の出国、国外からの入国を制限し、都市をロックアウト(封鎖)せざるをえない事態に陥った国もある。たしかに、新興アジア地域は、シンガポールなどを除いて、新型コロナウイルス感染防止対策が遅れた。いまだに、手を打てていない国もある。

そこで、本稿では、ASEAN各国の新型コロナウイルス感染の現状と対策をまとめておくことにしたい。感染拡大が進み、事態は猛スピードで動いているが、その動きが止まったとき、あるいは収束が見えたとき、「あのときはこうだった」と笑って話せる日が来てほしい。

とうとうミャンマーでも感染者が出現

ヤンゴンで事業をやっている私の知人は、今月半ば、悩んだ末に一時、日本に帰国した。
「事業は現地のパートナーにまかせて、やはり安全を選んだ。ミャンマーはこれまで感染者が1人も出ていない。しかし、信用できない。単に検査をしていないだけだからね」

これまでの中国との関係の深さからいって、ミャンマーに感染者がいないわけがない。誰もがそう考えてきた。これは、カンボジア、ラオスも同じだ。チャイナマネーにどっぷりと浸かり、中国企業、中国人労働者、中国人観光客を大量に受け入れていてきたこれらの国々に、武漢発のウイルスだけが入ってこないわけがない。

と思っていたら、23日の深夜になって、ミャンマー保健・スポーツ省が突然、感染者が2人見つかったと発表した。1人はアメリカから帰国したミャンマー人男性(36歳)で、もう1人は英国から戻ったミャンマー人男性(26歳)。これが、ミャンマー初の感染事例となったが、前出の友人はこう言った。

「入国時に発症が疑われた、熱があったので仕方なく検査したんだろうよ。それで発表せざるをえなくなったと思うね。ともかく、私は日本に帰ってよかった。ミャンマー国内には、すでにサイレント感染者がいっぱいいるはず。これをきっかけに検査をし出したら、感染爆発が起こると思う」

“感染爆発”と言われたので、私はこう言った。
「それは日本も同じだ。日本は検査を絞って感染者を少なくしてきたが、今後どうなるかわからない。アメリカ、欧州並みの感染爆発が、この日本でも起こるかもしれない」

これを私に言われて友人は、「そうなったら、帰国した意味がない」と絶句した。

サイレント・エピデミックへの懸念が現実に

ミャンマーと同じく感染者ゼロを続けてきたカンボジアは、3月になると徐々に感染者が見つかるようになり、14日にはついにアメリカ、イタリアなどの欧米の感染爆発国からの入国を禁止した。しかし、ASEAN域内の国からの入国は禁止しなかったため、マレーシアの感染爆発の影響をもろに受け、3月25日時点で感染者が93人に達してしまった。ただし、ラオスはいまだに2人である。
*感染者数は、米ジョンズホプキンズ大学「Covit19」HP参照。以下、すべて同じ。

インドシナ各国では、タイ以外は医療システムが脆弱だ。感染キットが足りないうえ、感染者を収容できる病床、重症患者が入る集中治療室などが、まったく足りていない。そのため、各国はほとんど感染防止策を講じなかった。なるようにしかならないとしてきたのである。そうなると、感染は静かに広がっていく。いわゆる「サイレント・エピデミック」(静かな感染拡大)が懸念され、ハーバード大学の研究チームは、名指しで各国の体制の強化を訴えた。

ハーバード大学の研究チームの指摘は正しかった。3月半ばになると、インドシナ各国はもとより、新興アジア地域全域で感染拡大が始まった。それが、もっとも顕著なのが、マレーシアである。
以下、ASEANの主な国の感染の現状を見ていこう。

マレーシア:モスクの礼拝で大規模クラスターが

現在、マレーシアは事実上国境を封鎖し、国内の社会活動、経済活動も禁止・制限している。幼稚園、小中高等学校から大学までのあらゆる教育機関は閉鎖され、民間企業も一時的に閉鎖されている。もちろん、スポーツ、イベントなどすべての行事が禁止され、イスラム教徒にとって欠かせないモスクでの礼拝も禁止された。

マレーシアがここまでの強硬策に出たのは、東南アジアのどの国よりも速いスピードで感染者が増えたからだ。この感染爆発を引き起こしたのは、クアラルンプールのモスクで、2月27日から3月1日の間に行われた信者の集会が発端だった。この集会には、約1万6000人が参加したが、このうちマレーシア人338人、シンガポールから参加した53人の感染が、16日までに確認された。その結果、18日からの「事実上の国境封鎖」となったのである。

宗教行事による大量クラスター発生は、韓国の新興宗教「新天地イエス教会」が前例となったが、マレーシアでも同じようなことが起こったのだ。新型コロナウイルスの感染力はけっして侮れないと言えるだろう。

3月25日時点で、マレーシア全土の感染者数は1796人となり、ASEAN諸国で最多を記録した。マレーシアの日系人口は約2万人。感染拡大で、現地の日系社会は大きく動揺した。進出企業の一部はすでに休業に入った。ソニーはテレビ工場を閉じてしまった。

バンコク:「ムエタイ」で集団感染が発生

ASEA諸国の中で、早くから感染者を出していたのがタイだ。バンコクには例年数百万人の中国人観光客が訪れる。そのため、政府も早くから検査を始め、当初、数人単位で感染者が発見されていた。それが、3月10日ごろから毎日30人以上となり、25日現在で934人まで増加した。

こうした増加を受けて、タイ政府は次々と対策を打った。最初は、18日から実施された全国の学校の休校とバンコク首都圏の娯楽施設の閉鎖。続いて22日には、バンコクのデパートなど商業施設も閉鎖した。また、外国からのすべての渡航者に新型コロナの陰性証明書の提示を求めることで、事実上の入国拒否を始めた。そして26日、ついに国家非常事態宣言を発令するにいたったのである。

タイの感染拡大を爆発させたのは、格闘技「ムエタイ」の競技場で起きた集団感染だった。3月6日に、ルンピニ・ボクシングスタジアムで10試合が行われ、これを観戦した観客、選手、トレーナー、試合進行役の俳優などが次々と発症。とうとう感染者は100名を超え、タイの感染者の2割を占めるようになった。ムエタイは、ギャンブルである。だから、濃厚接触が避けられない。ギャンブル参加者が職場に戻り、さらに感染が拡大したと見られている。

フィリピン:マニラ首都圏はロックダウン

フィリピンも3月に入って感染者が一気に増え、25日現在で636人を記録した。そのため、3月16日から首都・マニラを含むルソン島全域で、原則として外出が禁止になった。事実上のロックダウン(封鎖)である。その結果、マニラ首都圏では、大型ショッピングモール、ホテル、レストランなどが次々と営業を休止し、マニラの街から賑わいが消えた。

また、フィリピン運輸省は17日、国際線が運航するマニラ国際空港を含む、ルソン島にあるすべての空港を20日から閉鎖すると発表。これに驚いた日本人の多くが、一気に帰国便に殺到するという事態になった。

フィリピンにも多くに日本企業が進出している。そんなひとつ、ルソン工業団地に工場を持つあるメーカーに筆者が聞いたところ、「公共交通機関がストップしてしまったので従業員が出勤できなくなり、操業を部分的にやめました」という悲痛な答えが返ってきた。

いまや、新興アジア全域に日本企業は進出している。その多くは製造業だが、どの国でもラインを止めたり、あるいは工場閉鎖に追い込まれたりしている。新型コロナウイルスの力は計り知れないものがある。

インドネシア:死亡率が高く危機状態に

インドネシアは2月いっぱいまで感染者ゼロを続けてきた。しかし、これは検査をしていなかったためで、3月2日に最初の1人が確認されると、たった3週間で確認感染者は700人を超えた。これを受け、首都ジャカルタ特別州のアニス・バスウェダン知事は3月20日、同州に非常事態を出した。州内の全企業に、以降、オフィスの活動を行わないよう要請するとともに、映画館、カラオケなどの娯楽施設に対し、週明け23日以降の営業停止を指示した。

  この首都の非常事態宣言に先立ち、インドネシア政府は17日、感染拡大防止策として入国するすべての外国人に対し、短期滞在ビザ免除と到着ビザの発給を1ヵ月間停止すると発表。そのため、日本とインドネシアを結ぶ直行便はほとんどが運休する運びとなり、多くの在住日本人が帰国した。

インドネシアの感染激増の特徴は、死亡率が8.4%と高いことで、これはイタリアに匹敵する。インドネシアの医療リソースは足りておらず、今後、感染者が増えると「医療崩壊」が起こることが確実視され、かなり危険な状況にあると言っていい。

シンガポール:初期に感染拡大防止に成功も

シンガポールは、これまで感染拡大防止に成功してきた数少ない例として、世界的に注目されてきた。初期段階から、独自の適切な対策を実行してきたからだ。政府は感染情報を一元化し、ウエブで公開。感染ルートのトレースを即座に実行し、検査も確実に行って感染拡大を防いできた。

また、症状のひとつが発熱なので、企業、学校、スポーツジム、政府機関などで、体温測定を義務付けた。平熱だとシールを1枚もらえるという仕組みをつくり、毎日シールを2~3枚もらうことを奨励した。さらに、新型コロナウイルスの遺伝子配列が公開されるとすぐに独自の検査方法を開発し、医療リソースも整えた。医学誌『ランセット』は、こうした試みを称賛した。

しかし、今日までのことを見ると、ウイルスの力は当初の予想をはるかに超えたものだった。25日時点で感染者は558人に達し、人口が約540万人の国で、この数はやはり異常だ。そのため、シンガポール政府はついに24日、バーやディスコ、カラオケ店、映画館など娯楽施設の営業を4月末まで停止にする処置に踏み切った。これまで、学校も職場も閉鎖しないとしてきたが、閉鎖も視野に入ってきたと、政府は声明を出した。

学校や職場以外の場所で、10人を超える集まりは禁止された。また、会議やスポーツ大会、コンサートなどは、規模に関わらず中止・延期とした。現時点で、シンガポールではまだレストラン、飲食店は営業している。ただし、テーブルを1メートル以上離し、1グループを10人以下に抑えることが条件となっている。

収束は見えず、悲観論は深まるばかり

このように見てくると、もはや新興アジア地域は、全域がパンデミックになったと言える。新型コロナウイルスは、インフルエンザウイルスと同じく冬に感染拡大するものの、春から夏になれば収束すると考えられてきた。しかし、シンガポールやインドネシアなど、赤道直下の国々でも感染が続いているので、この考えは誤りとされるようになった。

また、持病を持った高齢者が重篤化するとされてきたが、最近では、若い人間にも重篤患者や死者が出るようになった。筆者は、これまでいくつかのメディアで新型コロナウイルスに関する記事を書いてきたが、そのいずれも悲観論に立ったものだった。いつかは希望を持てるようになると思ったが、いまのところまだ、それは見えない。

はたして、この危機はいつ収束するのか?
月並みな原稿の終わり方だが、1日も早く治療薬とワクチンが開発されることを願うばかりだ。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2020年03月26日


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