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【新興ASIAウォッチ/第65回】ミャンマーのおかげで日本のパスポートが「世界最強」に!

ビザなしで渡航できる国の数でランク付け

いささか旧聞に属するかもしれないが、この10月、日本のパスポートが「世界最強」という評価を獲得した。こんな調査があること自体が驚きだが、実施したのは英国のコンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズ(Henley & Partners)。なんと、この調査は毎年何回か行われ、その都度ランキングが発表されており、日本は、今年の2月時点でシンガポールと並んでトップだったが、10月についに単独でトップに立ったのである。

いったいどんな調査?と思われるかもしれないが、調査そのものはいたって簡単。ビザなしで渡航できる国が何カ国あるかというだけだ。次がそのランキングのトップ10だが、シンガポールは189ヵ国で、日本は190ヵ国というわけだ。

 [世界各国パスポートランキング、トップ10]
1、日本 190ヵ国
2、シンガポール 189ヵ国
3、ドイツ、フランス、韓国 188ヵ国
4、デンマーク、フィンランド、イタリア、スウェーデン、スペイン 187ヵ国
5、ノルウェー、英国、オーストリア、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、米国 186ヵ国
6、ベルギー、スイス、アイルランド、カナダ 185ヵ国
7、オーストラリア、ギリシャ、マルタ 183ヵ国
8、ニュージーランド、チェコ 182ヵ国
9、アイスランド 181ヵ国
10、ハンガリー、スロベニア、マレーシア 180ヵ国

ランキング上位は欧米諸国がズラリ

ビザなしで渡航できる国が多いほど、パスポートが強いと言えるかどうかはわからない。ただ、世界どこでも、ビザなしで行けることは、素晴らしいことだ。それは、相手国が渡航者がやって来る国を信頼しているということを表しているからだ。つまり、日本人は、多くの国で好かれている(少なくとも嫌われていない)のだ。

その意味でランキングを見てみると、欧米諸国が圧倒的に上位を占めていることがわかる。アジアでトップ10に入っているのはシンガポールと韓国(188ヵ国)だけである。このトップ10の表には入っていない中国は、毎年順位を上げてきたが、まだ69位(72ヵ国)で、昨年は75位と低迷している。

では、ランキングの下位にはどんな国があるのだろうか? それは、ほとんどがアフリカ諸国および中東諸国である。ランキング最下位はイラクとアフガニスタン(30ヵ国)、下から2番目はシリアとソマリア(32ヵ国)3番目はパキスタン(33ヵ国)となっている。

ノービザで30日間滞在が可能に

ではなぜ、日本はトップになったのだろうか?それは、ミャンマーのおかげである。この10月1日から、ミャンマーは日本人に対してビザなし渡航を解禁したのだ。これまでは、観光入国でもビザの事前取得(50米ドル)が必要だった。それがなくなり、入国カードも書く必要がなくなった。これで、日本人はASEAN10ヵ国のすべての国で、ビザの事前取得が不要になった。ただし、カンボジアは、まだ空港到着と同時にアライバルビザを取得することになっている。

今回のミャンマーのビザ解禁は、日本だけではなく、韓国も同時である。当初は、入国時に1000米ドルの現金の所持がビザ免除の必要条件とされたが、いざ蓋を開けてみると、その規制はなく、ノービザで30日間、滞在できることになった。

かつては、東南アジア諸国を巡るには、ビザ免除国と必要国があったため、かなり不便だった。バックパッカーが全盛の1990年代までで、日本人にビザを免除していたのは、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピンだけ。ベトナムやラオス、ミャンマーなどは事前に大使館を訪れるなどして、ビザを取得しなければ入国できなかった。それを思うと、本当にグローバル化が進んだことを実感する。そこで、以下、ASEAN10ヵ国の「観光目的渡航のビザ要件」をまとめてみた。

▼ASEAN10カ国の「観光目的渡航のビザ要件」
タイ:30日以内の滞在はビザ免除
マレーシア:90日以内の滞在はビザ免除
シンガポール:14日もしくは30日以内の滞在はビザ免除
ベトナム:15日以内の滞在はビザ免除
カンボジア:ビザは必要だが、空港などで30日間のアライバルビザの取得が可能
ラオス:15日以内の滞在はビザ免除
フィリピン:30日以内の滞在はビザ免除
ブルネイ:14日以内の滞在はビザ免除
インドネシア:30日以内の滞在はビザ免除
ミャンマー:30日以内の滞在はビザ免除

日本からの直行便に合わせて記念式典

ミャンマーはロヒンギャ問題など多くの問題を抱えている国だが、親日国の一つである。長らく国際社会への門戸を閉じてきたが、改革開放に転じて以来、首都ヤンゴンへは、日本から全日空の直行便が飛ぶようになった。私も搭乗したが、成田を飛び立ってから約7時間で着く。ただ、到着後、列に並び、現地からの招聘状などを提示して、50米ドルでビザを取得しなければならなかった。あるいは、日本で事前にビザを取得しなければならなかった。この手間がなくなったのは大きい。

10月1日、ヤンゴン国際空港では、直行便の全日本空NH813の到着に合わせ、記念式典が行われた。ミャンマー側からはホテル・観光大臣のオウン・マウン氏、日本側からは駐ミャンマー日本大使の丸山市郎氏ら出席して挨拶した。

オウン・マウン氏は次のように述べた。
「ミャンマーにお越しいただいた日本からのみなさまを盛大に歓迎したい。第2次世界大戦が終わってから、日本とミャンマーは非常に友好関係を持ち、一緒に過ごさせていただいている。民主的な政権が樹立され、民主化を進めようと努力しているなかで、日本のみなさまからサポートしていただいている」

日本人にもっと来てほしいと観光振興

ミャンマーはいま、あらゆる面で発展しようという気概に満ちている。その一つが観光産業で、外国人観光客の誘致では日本は最大の候補国である。というのも、近年、ロヒンギャ問題によって欧米からの観光客が減少しているからだ。その一方で増えているのが、アジア地域からの観光客。タイが1番目で、中国が2番目日本は3番目に多く、2017年は約10万人の日本人が訪れている。

そこで、ビザ代の計算をすると1人50米ドルだから、10万人で500万ドル(1ドル110円として5億5000万円)になる。500万ドルといえば、まだまだ国が貧しいミャンマーにとっては半端な収入ではない。しかし、それを失っても、さらに外国人観光客が増えると見込んだのだろう。

現在、ミャンマーのホテル・観光省とミャンマー観光連盟は、「ミャンマー観光親善大使」に、演歌歌手のこおり健太さん、ファッションデザイナーのコシノジュンコさん、俳優の森崎ウィンさん(ミャンマー出身)を任命して、積極的に日本人観光客を誘致している。ヤンゴンは、かつてシンガポールと並んで「ガーデンシティ」と呼ばれた美しい街である。いまもその面影は色濃く残っている。

そんなヤンゴン市街では、高級ホテルの建設が続いている。アコーホテル・グループの「プルマン・ヤンゴン・センターポイント」、「シェラトン・ヤンゴン」など。そして、2020年には「オークラ・プレステージ・ヤンゴン」ができる予定だ。今回のビザフリーで、ミャンマーはますます近い国なるだろう。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2018年12月11日


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