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【新興ASIAウォッチ/第64回】カンボジアは中国になってしまうのか?

プノンペンはまるで中国の一都市

7月のこのコラム連載で、日本でも人気の高いインド洋の南国リゾート、モルディブのことを取り上げた。腐敗した政権が中国マネーと結びつき、モルディブがまるで中国の植民地になっていることを指摘した。しかし、この9月の大統領選挙で、野党側の新大統領が誕生し、モルディブはようやく中国と距離を置くようになった。

まかり間違えば、スリランカのように借金が払えず、港湾などの社会インフラを取り上げられ、本当に中国の植民地なるところだったが、モルディブは寸前のところで国民が目覚めたのだ。これは、今年5月にマハティール元首相が政権に返り咲いたマレーシアも同じだ。しかし、もはや手遅れという国が、東南アジアにはある。カンボジアである。

知り合いの日本企業のカンボジア駐在員がこう言う。
「いまやプノンペンの街で中国人の姿を見ない日はなくなりました。プノンペンはまるで中国の一都市と思えるほど、中国、中国になってしまいました。メコン川、トンレサップ川とバサック川の合流する地点に“ダイアモンド・アイランド”と呼ばれるコーピッチ地区がありますが、ここはいまや“チャイナ・アイランド”、完全に中国です。高層マンションや商業施設、ホテル、高級住宅がどんどん建てられていますが、ほぼ全部が中国資本によるもの。中国人が大好きなパリの凱旋門を模したオブジェがあり、周囲の物件はほとんど中国人富裕層が“爆買い”しています。この地区は街中に簡体字があふれています。また、トンレサップ川対岸のチョロイチャンバー地区も高層ビルがどんどん建っていますが、これらもほとんど中国資本が建てています」

私が最後にプノンペンを訪れたのは、かれこれ10年ほど前のこと。プノンペンにはまだ高層ビルはなく、一部に未舗装の道路もあって、街は全体が開発途上だった。そんな中、進出した日本企業の駐在員たちは、わりとのんびりと仕事をしていた。カンボジアは親日国とされ、市民の日本人を見る目は温かった。ところが、ここ数年でプノンペンは激変したという。

日本の援助額は中国の8分の1にすぎない

かつて、日本とカンボジアの「友好」を象徴したのが、トンレサップ川にかかるチュルイ・チョンバー橋だった。この橋は、日本の全面援助により、大林組などの日本企業が建設したため「日本・カンボジア友好橋」(通称「日本橋」)と呼ばれて、プノンペンの流通を担う大動脈となっていた。プノンペンに行くと必ずこの橋を通るが、そのたびに私は「友好」という言葉を聞かされた。

しかし、いまやこの橋と並行するかたちで、中国の借款援助による「中国橋」がつくられ、2本合わせて「友好の橋」になってしまった。中国橋は2014年にできた。老朽化した日本橋に比べたら、その差は歴然。「友好」の看板は完全に中国のものになってしまったのだ。現在、日本橋の方は改修工事中のため、閉鎖中で、2019年6月に再竣工予定だという。

しかし、日本橋の修理が完成しても、もはや日本はカンボジアから忘れられようとしている。なぜなら、カンボジアへの援助額は2010年を境に完全に逆転したからだ。それまで日本は、毎年約1億ドル(1ドル100円として100億円)のODA(政府開発援助)を提供して、カンボジア援助国NO.1だった。しかし、2010年以後、中国が日本を抜き援助国NO.1になり、援助額の差は年々開く一方になった。JETRO(日本貿易振興会)の資料によると、カンボジアへの国別投資認可額の累計(1994~2016年)では中国が122億ドルとなっていて、日本はなんとその8分の1にすぎない。

イオンモールとバイクほか日本の存在感なし

前出の日本企業の駐在員が続ける。
「昔は、家電製品でも日本製が売られていました。携帯電話もそうです。しかし、いまやすべて姿を消しました。カンボジアのような途上国では、日本製品は高すぎるのです。庶民には手が届きません。結局、東南アジアの他の国と同じで、ここも韓国のLG、サムスン、中国のハイアール、メイダ、ハイセンスばかりになりました。スマホも、ファーウェイやZTE、サムスンの独壇場です」

彼に言わせると、もはや日本の存在感はほとんどないという。プノンペン市街の主だった公共建築は中国の援助で建設され、街中には中国銀行や中国工商銀行の支店が多数できたという。
「これだけ中国が溢れると寂しさを感じます。日本を感じるとしたら、やはりイオンモールですね。5月に2号店ができて盛況です。あとは、日本車とバイクですかね」

昔はイオンモールがプノンペンにできるとは、思いもよらなかった。当時は、プノンペンにはちょっとした市場があるだけで、メガショッピングモールの需要などないだろうと思ったものだ。公共交通も整備されておらず、クルマもそれほど走っていなかった。完全なバイクと自転車社会だった。これはいまも変わってないようで、「バイクに関しては日本製です。ホンダとスズキで、1番人気はやはりホンダドリームです。カンボジアでは16歳からバイクに乗れるので、みな日本製バイクを欲しがります」
とはいっても、これはベトナムの現地生産の日本ブランドのバイクであろう。

いずれにしても、プノンペンは中国製品が溢れている。日常品は、みな中国製だ。これは、中国との間に関税優遇処置(ACFTA=アセアン中国貿易協定)があるからで、一般的な商品であれば関税はゼロである。

日本と中国の決定的な違いとなにか?

いったいなぜ、カンボジアはここまで中国化してしまったのだろうか? それは、ひと言で言えば、30年も続くフン・セン政権が腐敗し、北京のカネの力に完全に毒されてしまったからである。途上国の中で、他国の援助で生きている国の常として、政治家、官僚たちは必ず腐敗する。

これは、日本の駐在員に聞くまでもないが、カンボジアは、昔から賄賂とキックバックの国である。政府がらみのビジネスは、ほとんどそれで成り立っている。特にひどいのはインフラ建設で、たとえば10億円のプロジェクトが中国との間で決まると、中国サイドは10億円を借款としてカンボジアに与える。このうち、3分の1は、政府高官のフトコロに入るといった具合だ。

フン・セン以下のプノンペンの高官たちは、国家に借金をさせて、その間を抜いているのである。北京はそれを百も承知でカネを出す。ところが、日本はそれができない。政府はODA以外に、無償援助まで行い、日本企業は賄賂もキックバックも渡さない。北京もそうだが、プノンペンの高官たちもまた、高級車、ガソリン代、食事代までみな民間企業、国営企業持ちだ。中には、豪邸を建ててもらう者もいる。もちろん、その見返りは許認可であり、賄賂、キックバックなどの裏ガネを使えば、ビジネスはすぐに成立する。

カンボジアでは従業員のストはない。あったとしても、企業は警察にカネを渡して、すぐに鎮圧させてしまう。ところが、日本企業はこれができず、従業員の待遇改善を必死になって行なっている。

アンコールワットに溢れる中国人観光客

カンボジアが中国化しているのは、プノンペンばかりではない。読者の中には、最近、アンコールワットに行かれた方もいると思うが、いまやアンコールワットとそのゲートシティのシュムリアップの街は、中国人観光客だらけである。なにしろ、中国からの直行便が毎日あり、ノービザでいいからだ(ちなみに、日本からの直行便はない)。

モルディブの記事でも書いたが、中国人観光客が大挙してやって来るとどうなるか?それまでは、欧米人や日本人もいた高級ホテルも宿泊客がほとんど中国人となり、ロビー、ダイニング、プールなどは中国語が飛び交うようになる。そして、静かだったホテルが一気にうるさくなり、雰囲気が一変する。その結果、欧米人や日本人の足は遠のく。かつてシュムリアップは韓国資本も多く進出し、韓国人旅行客も多かったが、いまはほとんど目立たない。

中国人観光客は、ほぼみな団体ツアー利用客である。そのため、狭いシェムリアップの街中には、中国人観光客を乗せた観光バスが行き交って渋滞し、ホテルのレセプションには中国人の団体客が列をなし、ロビーには簡体字の看板を出したツアーデスクがいくつもできた。中国資本のホテルに行けば、そこはもう100%中国である。全部、中国語でコトがすむ。シェムリアップの街には、最近、中華レストランが激増した。普通、ほかの国に行けばその国の料理を1度は食べる。カンボジアならクメール料理だが、中国人は見向きもしない。

2017年にシェムリアップを訪れた観光客は、総計約535万人。そのうち、およそ200万人が海外からの観光客で、前年比8.9%増とのこと。この増加分のほとんどが中国人観光客であるのは言うまでもない。そして、200万人の内訳は、なんと半分の100万人が中国人だ。

カンボジアは知られざる「カジノ天国」

日本ではあまり知られていないが、カンボジアは「カジノ天国」である。やっとカジノ法案が大揉めのなかで成立した日本から見たら信じられないかもしれないが、全国に中小も合わせて60ヵ所以上のカジノがある。プノンペンには、「ナーガ・ワールド」(Naga World)という大カジノがある。ホテルと10軒のレストラン、スパ、プール、ジムを併設したIR(統合型リゾート)である。さすがに首都だけあって、カンボジア政府はここ1軒しか認可していないが、現在、ナーガはもう1軒のカジノを建設中だという。

もちろん、カジノの上客は中国人である。マカオでマネロンへの締め付けが厳しくなったぶん、中国人富裕層はカンボジアにやって来るようになった。現在、アジアのカジノは、マカオにしてもシンガポールにしても客足が遠のいている。そんな中、カンボジアだけが伸びている。

カンボジアを代表するカジノの街は2つある。1つは、タイ国境の街ポイペト。ここは、カジノが禁止されているタイ人の客が中心で、ローカルなカジノといった雰囲気。もう1つが、南部の海岸都市シアヌークビル。最初はビーチリゾートとして開発されてきたが、近年、一大カジノリゾートに変身した。現在、ここには、なんと30件以上のカジノがある。

「第2のマカオ」になったシアヌークビル

シアヌークビルのカジノリゾートへの変身には、もちろん、バックに中国マネーがある。フン・セン政権は以前からカジノ産業振興策を進めてきたが、2016年に習近平国家主席がカンボジアを訪問して以来、カジノ振興に拍車がかかった。高層ホテル、マンションの建設が進められるとともに、中国から観光客、カジノ客、ビジネスマンが大挙して訪れるようになり、不動産は一気に値上がりした。なんと6倍になった物件もあるというから驚く。いまや、シアヌークビルは「第2のマカオ」と言っていいだろう。マカオで姿を見なくなった中国人ハイローラーが、ここのカジノに出没するようになった。

シアヌークビルでは、現在、賃貸物件の7割が中国人で、中国人が人口の3割に達している。それとともに、中華料理店と簡体字の看板が街に溢れるようになった。これは、カジノのせいばかりではなく、周囲のインフラ開発に中国人労働者が大挙してやって来たからだ。じつは、中国にとってシアヌークビルは戦略的に重要な拠点である。なぜなら、ここの港はカンボジア唯一の深水港であり、隣国ラオスからプノンペンを経由しタイ湾に抜ける要衝でもあるからだ。南シナ海を領海化し、「一帯一路」を推進するため、中国にとって、なくてはならない場所なのである。

すでに中国は、クルーズ船を寄港させるという名目で港湾整備のために38億ドルの資金を投入。シアヌークビル周辺には、100社以上の中国企業が進出し、繊維、電子部品生産などの工場を稼働させている。シアヌークビルの沖合にはまだ未開発の海底油田があり、中国はこの権益の確保も狙っているという。

北京はプノンペンに2020年までに、毎年200万人のカジノ客を含めた観光客を送り込むと約束しており、プノンペンからの高速道路が中国資金により計画されている。

人権も言論の自由もないフン・セン独裁

さて、ではなぜ、中国の植民地と化していくカンボジアを憂慮する必要があるのだろうか?最後にそれを書いて終わりにしたい。現在、カンボジアには「人権」もなければ、「言論の自由」「政治の自由」もない。フン・セン政権は独裁政権である。中国マネーで潤って経済成長を続けているが、その元手は借金であるうえ、一般民衆に経済成長の恩恵は行き渡っていない。相変わらず、カンボジアの一般民衆の生活は貧困ラインにある。

1993年、泥沼の内戦が終わって、国連監視の下で総選挙が行われたときは、曲がりなりにも民主化が進み、野党、メディアが育った。しかし、フン・センが首相の座についてからは、すべてが逆行した。この政権は、年を追うごと強権化し腐敗した。この7月、カンボジアでは、下院(定数125)の総選挙があったが、全議席を与党のカンボジア人民党(CPP)が独占した。なぜなら、これは八百長選挙だからだ。

なにしろ、カンボジアには野党がない。昨年11月、カンボジア最高裁判所は、フン・センの命令で最大野党のカンボジア救国党(CNRP)に解散を命じる判決を言い渡した。そして、国民に人気のあった野党政治家をすべて国外に追放してしまった。となれば、選挙結果がどうなるのかは明らかだろう。しかも、フン・セン政権は、国民に対し、与党に投票しなければ職や土地を没収すると圧力をかけたのである。

ところが、日本政府はそんなカンボジアの選挙を支援するために、8億円を提供した。その結果、投票所で使われたジュラルミン製の投票箱はすべて日本からの提供になった。さすがに、選挙監視団の派遣は見送ったが、お人好しにも程があるというものだ。

すでにアメリカ議会は、フン・セン首相などカンボジア政府要人の入国制限などの制裁法案を可決し、政府は一部の援助を止める措置を取っている。EUも、関税の優遇措置を撤廃する方針を固めている。したがって、こんな状況のカンボジアに、日本はこれ以上、援助すべきではないと思うがどうだろうか?といっても、お人好しの日本政府、そして、お人好しの日本企業、さらに事情をよく知らない日本人観光客がカンボジアの現状に目覚めないことには、なんとも言いようがない。私のような一個人にできるのは、もはや、こんな国に行かないことだ。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2018年10月26日


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