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【新興ASIAウォッチ/第60回】マハティール首相復活でどうなるマレーシア

■昔の「ルックイースト」とは時代が違う
誰もが驚きを持って見つめた5月のマレーシアの政権交代劇。なんと、マレーシア国民は独立以来初の政権交代を実現させ、マハティール氏が92歳という高齢にもかかわらず、再び首相の座に就いた。マハティール氏と言えば「ルックイースト」政策。つまり「日本(イースト)に学べ」という政策を促進し、大の親日家であるから日本にとっては大歓迎である。そのため、日本政府もメディアも祝福と歓迎ムード一色になったが、はたしてそれだけでいいのだろうか?

今回は、マハティール氏が「ルックイースト」を唱えた当時とは、時代が大きく変わっている。とくに、東南アジアにおける中国のプレゼンスは日本以上になっている。そういう状況の中で、マレーシアの将来、日本との関係を考えていかなければならない。

現在、東南アジア地域における日本の影響力は、昔ほどではない。ビジネス現場に行けば、日本より中国の方がはるかに影響力が大きくなっている。近年のマレーシアもそうで、前首相のナジブ氏は完全な中国寄りだった。だから、親日家のマハティール氏の再登板は大歓迎なのだが、そうとも言っていられない現実があることを、知っておくべきだろう。


■中国の「一帯一路」も最大限に活用
マハティール氏は首相になって最初の訪問国に日本を選んだ。そうして6月10日に来日するや、安倍普三首相と首脳会談を行い、さらに、日銀の黒田東彦総裁とも会合を持った。そして、日本商工会議所やジェトロとの投資・貿易フォーラムに出席してスピーチし、日本記者クラブで20年ぶりに記者会見を行った。そうした中で、マハティール首相は「これからもルックイーストによる産業育成や経済改革を進める」と発言したが、今回の「ルックイースト」には中国や韓国なども入っており、いわば東アジア全体に学ぶという点で「新ルックイースト」と呼んだ方がいいものだった。

マハティール首相はこのように述べた。
「マレーシアは小国です。ですから、すべての国々と中立な友好関係を結びたい」
これは、どの国にも偏らない全方位外交を意味する。ただ、その一方でこうも述べた。
「マラッカ海峡や南シナ海域での中国の軍事的プレゼンスは受け入れられない」
これは、経済はいいが、中国の拡張主義による南シナ海の支配は受け入れられないというものだ。

中国が進めている「一帯一路」構想に関しても見解を求められたが、それに関してはこう述べた。
「マレーシアという小国が支持しようが反対しようが、中国は一帯一路を推し進めるでしょう。それより大事なのは、マレーシアが自国のために一帯一路をいかに最大限に活用できるかです」
たしかにその通りだから、これは、マレーシアが現実主義路線を取るということである。


■高速鉄道を中止、イスカンダル華人移住にも疑問
じつは、今回来日するまで、マハティール首相は、次々とナジブ前政権の親中国政策をひっくり返してきた。とくに、中国が主導する鉄道建設や都市開発などのインフラ計画を見直すと宣言してきた。

鉄道事業というのは、その最大の目玉は日本と中国が受注競争を繰り広げてきたクアランプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道(2026年開業予定)である。これをマハティール氏は中止すると発表した。
「莫大なカネがかかるだけで、利益にならない」とその理由を説明し、5億リンギ(約140億円)と言われる違約金も払うと述べたのである。

さらにマハティール首相は、すでに着工済みの東海岸鉄道についても見直すと述べた。この東海岸鉄道は中国交通建設や中国輸出入銀行が関わっている中国案件だから、明らかに中国を意識していた。また、シンガポール隣接のジョホールバルに人口300万人規模の大産業都市を建設する「イスカンダル計画」に関しても疑問を呈した。イスカンダル計画の目玉の「フォレスト・シティ」には、中国から華人60万人が移住する計画になっている。しかし、「こんなことは世界どこでも歓迎しないだろう」と、マハティール首相は述べたのである。

マハティール首相は、前ナジブ政権を「カネを借りることで中国との関係を築いた」と、これまで痛烈に批判してきた。中国は世界中で、気前よくカネを貸し、それが払えないと一転して態度を変えて支配するという政策を実行している。こうして、スリランカは南部のハンバントタ港をほぼ中国に取り上げられてしまった。マレーシアはこの 轍を踏まないと、マハティール氏は考えたのだろう。マハティール氏は中国との関係について、「仲良くはするが、それは債務を負うかたちでない」と述べたのである。


■北京とアリババによる完全な巻き返し
このように見てくると、マハティール首相の再登板は、日本にとっては良いことずくめのように思える。しかし、実際にはそうではない。知人のマレーシア駐在の日本人ビジネスマンは、「実感として中国の方がはるかに食い込んでいて、マレーシアの将来に日本企業はそれほど関われないのではと思う」と言う。
それは次世代のシェアリングエコノミー、IoT、AIビジネスなどで、日本が中国にはかなわない状況になっているからだ。 マハティール氏が日本訪問を終えた直後、北京はアリババ(阿里巴巴)の創業者、ジャック・マー氏(馬雲)をクアラルンプールに派遣した。6月18日、マー氏はマハティール首相と会談後、同社のクアラルンプール・オフィスのオープニングセレモニーで、マハティール首相を絶賛した。マー氏は「マハティール氏がいなければアリババはなかった」と言い、かつてマハティール氏が提唱した「MSC構想」(マレーシアがアジアのIT先進国になるという構想)を知って、「マレーシアができることは中国でもできると思った」と、その後ITビジネスに邁進してきたと、マレーシアを持ち上げたのだ。

マレーシアにアリババを呼び込んだのは、ナジブ前首相が「デジタル自由貿易区」構想を打ち出したからだ。これにより、2016年にマー氏はマレーシア政府のデジタル経済アドバイザーに抜擢された。まさに、マレーシアと中国の蜜月を象徴する出来事だった。


■次世代ITビジネスで出遅れた日本企業
すでにアリババは、東南アジア進出を具体化させており、マレーシアとの蜜月はそれを加速させるものだ。一昨年、アリババは東南アジアでネット通販を手がけるドイツ系のラザダを買収するなどして、商圏拡大を目指してきた。その一環として、2020年には国際物流拠点をクアラルンプール国際空港周辺に建設する予定になっている。また、モバイル決済サービス「アリペイ」も導入しようとしている。

今年1月、アリババの子会社アリババ・クラウドは、マレーシア・デジタルエコノミー公社やクアラルンプール市役所と共同で、ビッグデータや人工知能を活用した都市管理プロジェクト「シティ・ブレイン」を開始すると表明した。これは、AIで市内の街頭カメラの映像の分析を行い、交通渋滞などを解消するというスマートシティ構想である。しかし、日本企業は、残念ながらこのような次世代事業には参画できないでいる。高速鉄道のような旧来のインフラ事業には参画できても、IT分野では中国に遅れをとっているのだ。

中国との関係の見直しに入ったマハティール首相だが、このような次世代プロジェクトに関しては、中国を重視している。マハティール首相は、マー氏と会談後、アリババとの関係を続けていくことと、今後の共同事業に関してゴーサインを出した。「新ルックイースト」は、このように現実主義なのである。

ちなみにアリババのマー氏は、いまやインドネシア政府からもEコマース・アドバイザーに抜擢されている。また、タイでもマレーシアと同じような国際物流拠点建設の大型プロジェクトを進めつつある。日本政府と日本企業ののん気ぶりが、本当に心配な状況になってきた。このままでは日本は、東南アジアでの存在感をますます失っていくだろう。


新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2018年06月25日


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