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【新興ASIAウォッチ/第61回】中国人に占領されたモルディブの悲劇

インド洋に浮かぶプライベート・リゾート

シンガポールのチャンギ国際空港から約4時間、スリランカの南西に位置するモルディブは、インド洋に浮かぶリゾート・アイランド。26の環礁と約1200の島々から成り、「1アイランド1リゾート」という独自のスタイルで、世界中から多くの観光客を惹きつけてきた。真っ青な空と、その下に広がるエメラルドグリーンの海。その海の上にポツンと建つコテージに滞在することは、ハネムーナーにとっての憧れ。日本でも人気の新婚旅行先の一つになっている。

先日、そんなモルディブに行きたいと知り合いの若いカップルが言ってきたので、私は即座に「やめたほうがいいよ」と答えた。
「なぜですか?こんなプライベート感満載の南の島は、ほかにはないと思うんですけど」
「いや、それはそうだが、行っても楽しめないからね」
というわけで、以下をお読みいただきたい。

いまや観光客の4人に1人が中国人

いまも、日本の旅行社のリーフレットや旅行ガイドブックには、モルディブは“天国のリゾート”と書いてある。しかし、それは10年ほど前までのこと。いまのモルディブは、天国は天国かもしれないが、“中国人の天国”なのである。モルディブには、年間約130万人が訪れる。ダントツの第1位が中国人で、30〜40万人が中国本土からやってくる。つまり、少なくとも観光客の4人に1人が中国人である。

これがどんなことかというと、「1アイランド1リゾート」に滞在したとしても、メインダイニングで朝食をとるとなると、レストランの中は中国人だらけ。バフェット形式なら、列に並ぶと割り込まれるし、食べ物はあっという間になくなる。プールサイドのパラソルとデッキは全部取られるし、たとえ確保できても、周囲から大声の中国語が聞こえてきて、とてもリゾート気分なんて味わえない。「オールインクルーブ」スタイルのリゾートでは、おそらく間違いなくこういう目にあう。

コテージ滞在型の高級リゾートなら、たしかにプライベートは楽しめる。しかし、それでも滞在客の多くが中国人だから、たとえばビーチに行けば、そこには吸い殻を平気で捨て、大声で騒いでいる中国人グループがいる。ビーチは平穏な場所ではなくなっているのだ。

リゾートでの過ごし方を知らない人々

中国人という全体カテゴリーで、彼らの悪口は書きたくないが、正直、いまの中国人観光客ほどリゾートにふさわしくない人々はいない。数年前、オーストラリアのケアンズでグリーンアイランド行きの船を家族で待っていたとき、大型観光バスが止まり、中国人の一団が下りてきた。見ると、男たちはサラリーマン風のグレーのスボンに黒ベルト、白ポロシャツで革靴。ビデオカメラを肩から下げていた。「なんだ、見物に来ただけか」と思ったら、なんとその一団は、私たちといっしょの船に乗り込んだのだ。

グリーンアイランドはグレートバリアリーフに浮かぶサンゴ礁の島。白いビーチが広がり、エメラルドグリーンの海ではマリンアクティビティが楽しめる。しかし、彼らはその格好で島中を歩き回り、ビデオカメラを回していた。

ハワイでも以前、同じよう経験をしたことがある。中国人はリゾートファッションを知らない。リゾートでの過ごし方を知らない。ワイキキのビーチでのんびり寝ていると、集団でやってきて写真を撮りまくり、砂をかけられた。いまだに団体旅行が中心だから、団体で傍若無人に行動する。ビーチはたちまち荒らされてしまうのだ。

タイのプーケットでは、ビーチで即席の麻雀台をつくり、ドンジャラをやっていた中国人の一団がいた。私は鎌倉育ちだから、若い頃、仲間と由比ヶ浜のビーチで麻雀をやったことがある。しかし、それは何十年も前の話、しかも自分の国だ。パラオでは、中国人ダイバーがサンゴ礁を取っていくので、素手で潜るのが禁止になったことがある。素手だと痛くて取れないからだという。

中国マネーによるインフラ整備の罠

モルディブの悲劇は、2013年にアブドゥラ・ヤミーンという男が大統領に就任して始まった。人口約40万の小さな島国の人々は、主に漁業と観光で生計を立ててきたが、基本的には貧しい。そのため、観光以外のインフラはあまり整っていなかった。それをなんとか整備して国民の人気を得ようと、ヤミーンが考えたのが中国への大接近だった。すでに中国製品であふあれ、中国人観光客も20万人ほどやって来ていたが、このヤミーンの大接近で、モルディブは中国の植民地のようになってしまったのである。

中国は、ご承知のように「一帯一路」構想を進めている。モルディブはインド洋を通る「海のシルクロード」上にある。2014年、習近平主席がモルディブを訪問すると、3つの巨大プロジェクトが立ち上がった。首都マーレと空港島を結ぶ全長2kmの橋。これは「中国モルディブ友好大橋」と名付けられた。空港島の北側にある人工のフルマレ島では、7000戸の住宅団地の造成。これは中国商工銀行が融資した。さらに、アッドゥ環礁の雑木林を伐採し、260戸の集合住宅が造成された。

ヤミーンが大統領になる前、モルディブはインド寄りの国だった。それが、一気に中国寄りになり、中国マネーと中国人労働者がどっとやってきた。それとともに、観光客も倍増した。こうして、マーレの街には中華料理店や中国人向けの宿泊施設が増え、中国語の看板が目立つようになった。中国人観光客はノービザでモルディブに入り、首都マーレで中国人向けのホテルに一泊して、翌朝、目的のリゾート島に向かう。これが、定番コースになった。

スリランカの教訓は生かされなかった

中国から借金してインフラ整備を行うとどうなるかは、先例がある。借金漬けにされたうえ、金利が払えないと、インフラを取り上げられてしまうのだ。ところが、腐敗政治家は、中国マネーの一部が自分のポケットに入るので、これをやめられない。まさに、スリランカは、これで港湾施設を失い、いま、国際空港まで取られようとしている。

スリランカは2015年まで10年間続いたラージャパクサ政権が、中国マネーでハンバントタ港とラージャパクサ国際空港をつくった。いずれも、ラージャパクサ大統領の地元だった。しかし、ハンバントタ港は債務返済の目処がたたず、中国企業に99年間貸し出されることになった。借金のカタに取られたのである。また、ラージャパクサ国際空港は第2国際空港としてオープンしたが、乗り入れた航空会社が撤退し、いまでは国際便が1便も飛んでいない世界唯一の国際空港になってしまった。当然、債務が返済できるわけがない。こちらもいずれ、中国のものになるのは確実だ。

これがスリランカの教訓だが、いまやモルディブが第2のスリランカになろうとしている。そのため、モルディブは現在、反政府運動が起こり、野党勢力がヤミーン政権を攻撃している。この野党勢力の中心にいるのが前大統領のナシード氏である。ナシード氏らによると、いまや中国による3つのプロジェクトに対する借款がモルディブの国家債務の80%近くに達し、国家財政は破綻状態にあるという。

マレーシアのランカウイ島にも中国マネー

というわけで、モルディブに行くことは、とても勧められない。残念だが、青い空、青い海、白いビーチに大勢の中国人というリゾートに、私は行きたくない。あと何年かたって、中国でも個人旅行が主流になり、リゾートライフが普及すれば別だが、いまは無理だ。

現在、マレーシアのアイランドリゾート、ランカウイ島でも中国資本による巨大なリゾート開発が行われている。これは、中国の不動産大手ワンダグループ(大連万達集団)によるものだが、5星ラグジュアリーホテルと高級コンド2棟を、熱帯雨林を切り開いて造成しようというもの。ランカウイ島は、2007年、ユネスコからアジアで初めて環境保全を提唱するジオパークに認定された自然豊かな島。地元では、環境を破壊すると、中国反対運動も起こっている。

はたして今後も、アジアのリゾートは、中国マネーに侵食され続けるのだろうか? 最近は、中国経済のスローダウンがかなり真剣味を持ってささやかれるようになった。モルディブでは、この9月23日に大統領選が行われることになっている。はたして与野党の逆転がなるかどうか?注目だ。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2018年07月27日


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