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■中国メディアの報道で俄然注目を集める
マレー半島は、タイからマレーシアを経てシンガポールにいたる細長い半島である。基部のバンコク湾の奥から先端まで全長約1500キロメートルとされ、西のアンダマン海と東のタイランド湾を隔てている。
このマレー半島のほぼ真ん中に、「クラ地峡」といって半島が最も狭くなるところがある。このクラ地峡が、最近、にわかに脚光を浴びている。長年、懸案とされてきた「クラ運河」がいよいよ実現する可能性が出てきたからだ。
最初に報道したのは中国の地方紙で、5月15日、広州市において、中国とタイがクラ運河を建設するための覚書に署名したと報じた。これをいくつかのメディアが後追いし、18日には台湾のニュースサイト「中時電子報」も報道したので、話はぱっと広まった。ところが、その後、中国外交部はこの話を否定、タイ政府も「覚書署名という事実はない」と否定した。
しかし、当局は否定したものの、噂はその後も広まり、さまざまな憶測が飛び交っている。なぜなら、クラ運河計画は、これまで何度も浮かんでは消えてきた経緯があるうえ、今回は中国がAIIB(アジア投資インフラ銀行)をつくり、新興アジアのインフラ開発に積極的に乗り出しているという背景があるからだ。
では、クラ運河とはそもそもどんなものなのか? 実現する可能性があるのかどうか? を考えてみたい。
■アジアの50億人規模の経済圏に恩恵が
歴史を紐解けば、大運河の建造によって、世界の物流が変わり、それによって地域経済、世界経済が大発展してきた経緯がある。地中海とインド洋を結びつけたスエズ運河、大西洋と太平洋を結びつけたパナマ運河は、その典型である。だから、インド洋(アンダマン海)と太平洋(タイランド湾)を結ぶ運河ができれば、アジア地域の物流は劇的に変わる。これまで「アジアの関門」だったマラッカ海峡を通過せずに、中東地域の石油やアジア発の工業製品を輸送できるようになるからだ。
クラ地峡は一番狭いところで幅は44キロメートル。運河が計画されているところでも幅102キロメートルである。ここに、幅400メートル、水深25メートルの運河を建造するというのが「クラ運河計画」である。現在の技術からいって、これはさほど難しい工事ではない。もし、本当に運河ができれば、現在、船舶でマラッカ海峡を通過するのに比べて1日~2日の時間が短縮される。
また、燃料も節約もできるので、物流コストも下がる。さらに、マラッカ海峡は座礁の恐れのある水深の浅い部分が多いというリスクがあるが、運河となれば船舶はより安全に航行することができる。
つまり、クラ運河は、中国や日本といった東アジアの経済大国だけでなく、アジアの50億人規模の経済圏の物流の促進、経済発展にとって大きなメリットが見込める。まさに、地球規模の大インフラプロジェクトなのだが、なぜか今日まで実現に至らなかった。
なぜなのだろうか?
■各国の思惑のなか計画段階で終わってきた経緯
なぜ、クラ運河ができないか? それはやはり、各国の政治的な思惑があるからだ。
もともと、クラ運河は17世紀にこの地を支配していた大英帝国が構想した。この構想は、19世紀になると、スエズ運河を建造したレセップスが本格化させ、タイに建造を持ちかけた。しかし、大英帝国は当時支配していたシンガポールの影響力の低下を懸念して反対に回り、頓挫してしまった。第二次大戦でマレー半島の一時的な支配者となった日本も、クラ運河の建造には大いに興味を示したという。
こうした経緯を経て、1973年、アメリカ、フランス、タイ、そして日本も加わった国際チームがこの計画を復活させた。しかし、このときもまた、各国の思惑、建造費、技術的な問題で頓挫している。この間、タイは一貫して運河建造には積極的だった。しかし、タイの政治権力は安定せず、また、クラ地域はイスラム系住民が多いこともあり、安全保障上の懸念もあって、計画は調査段階で留まってきたのである。
ところが、1990年代半ばから中国が大発展をとげると、この計画に大いに興味を示し始めた。中国はその経済力を背景として、タイに建造を持ちかけ、現在では南シナ海における覇権の拡大も狙って、積極的なのである。中国はすでに海のシルクロード構想を打ち出しており、クラ運河はその構想に欠かせないものになりつつある。
■アメリカは「クラ運河」建造には反対する?
では、中国が建造を主導すれば、クラ運河は実現するのだろうか?
一番大きな問題は、やはりアメリカの思惑である。中国はすでに、第二のパナマ運河ともいうべき「ニカラグア運河」の建造計画に着手している。この建造工事自体は香港の企業が請け負っているが、その背後には中国の人民解放軍や中国政府がいるため、アメリカは警戒感を強めている。
情報によれば、アメリカは水面下でニカラグア運河建造を潰しにかかっているという。その結果、この地球規模のプロジェクトも、いまのところはかばかしい進展を見せていない。
これと同じことが、クラ運河でも起こる可能性がある。アメリカの庭である中米のニカラグア運河に比べれば、クラ運河はアジアにあるため、アメリカはさほど関心を持たないとも言える。しかし、AIIBに参加しないアメリカが、新冷戦状態に入った中国のこれ以上の拡張を許容する可能性は少ない。
しかも、シンガポールはクラ運河ができれば、その存在感を失う。シンガポールの大発展は、マラッカ海峡の心臓部に位置し、アジアの物流の中心にあったからなしとげられた面が大きい。当然、クラ運河の建造には反対である。
■ますます中国との連携を深めるタイの動き
21世紀はアジアの世紀だと言われている。そうならば、クラ運河はその建造主体がどこであれ、アジアの発展には欠かせないものだ。現在、新興アジア地域では、日本をはじめとする世界各国からの支援によって、陸路で東南アジア、南アジア地域をつなぐ「クロスボーダー物流」を実現する経済回廊の建設が行われている。
ここに、クラ運河が加われば、経済回廊はますます強化される。
クラ運河計画の報道(おそらくアドバルーン報道)と時期を同じくして、タイの軍事政権は、画期的な発表した。それはタイ海軍が潜水艦を中国から調達することを承認したと明らかにしたことだ。タイは今後、中国から3隻の潜水艦を360億バーツ(約 1300億円)で購入するという。タイ海軍は潜水艦を持っていない。そのため、周辺国との領海を巡っての安全保障体制を強化するようだ。
2014年5月のクーデターを受けて、民主化を求めるアメリカはタイへの軍事支援を凍結してきた。その結果、タイはますます中国依存を強めている。タイ国内で進む高速鉄道も中国が受注するのは確実な情勢になっている。このような中で、はたしてクラ運河どうなるかは、やはり予断を許さないと言うほかないだろう。
新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2015年07月24日
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