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【新興ASIAウォッチ/第14回】日本の家電がアジアの奇跡を生んだ!

■なぜ亜熱帯、熱帯の国々が経済発展できるのか?
今回はいつもと違った話を…。 あなたは、なぜ新興アジア諸国がここまで発展したと思いますか?
過去10年間の名目GDPの伸び率は日本をはるかに上回り、たとえばインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムのASEAN5カ国が年率平均で6〜7%の成長を遂げてきた理由を、なんだと思いますか?
インドが10%に迫る驚異的な成長率を達成できた理由を、なんだと思いますか?

エコノミストなら、「いずれの国も人口ボーナス期にあり、賃金が低かったことで、世界からの投資を呼び込むことができた。安価な労働力を求めてグローバル企業が進出し、生産拠点を設け、そこで行われる生産と雇用の創出をとおして内需を押し上げることに成功した」などと答えるだろう。また、メディアはメディアで、これを「アジアの奇跡」(日本に続いて韓国、台湾などが高度成長したことを称して1993年にこう言われた)と同じように、「新興アジアの奇跡」と呼ぶだけだ。

しかし、本当にこれでいいのだろうか?
今回のテーマは、これだ。


■エアコンが証明した「アジア人も先進国人も同じ」
さて、エコノミストの答えはどこも間違っていない。しかし、肝心なことが抜けている。
それは、新興アジア諸国が亜熱帯か熱帯に属し、一年をとおして暑いことだ。これまで経済発展を遂げた先進国は、ほとんどが温帯にあった。とすれば、新興アジアは例外、希有な例となる。人口ボーナス期にあろうと、賃金が安かろうと、暑くて働けばすぐ汗だくになるようなところで、高度経済成長など望めないはずではないのか?
というわけで、亜熱帯、熱帯アジアの経済発展の最大の理由は、日本の家電の普及ということになる。いまは、韓国・中国勢に追いつかれたが、日本の高性能家電の普及こそが、新興アジア経済発展の本当の理由である。
とくにエアコン。これがなければ、新興アジアの発展はなかった。

昔は、暑いところの人々はみな怠け者と思われていた。一日中、だらだらと過ごし、働く意欲もないので、そんなところに工場を建てても生産効率は上がらないと思われていた。しかし、日本のエアコンが、それが偏見だと証明したのだ。新興アジアの人間も、快適な職場環境、快適な家庭環境さえあれば、先進国の人間と同じように仕事ができる。それをエアコンが証明した。
最初にエアコンが入ったのは、もちろん、工場や職場だ。家庭では高くて買えない。そこで、工場に行けば涼しいと、労働者が殺到した。なにしろ、家庭にいるより快適なので、仕事もはかどる。家にいるよりずっと快適だから、進んで残業をする人間も出た。
こうして、グローバル企業はエアコンを使うことで、安い労働力を手に入れたのだ。


■なぜ、インド映画は異常に長いのか?
次が、アジアにおけるエアコンの普及率(家庭)である。
インド1.8% 、インドネシア 6.7% 、 中国5.0%%、 香港83.5%、日本84.7%、 韓国50.8%、 タイ13.6%、 シンガポール73.7%

日本、香港、シンガポールを除いて、まったく普及していないことに驚く。とくにインドでは、ほとんどの家庭にエアコンがない。だから、彼らはエアコンがあるところなら、どこにでも殺到する。

インド映画は上映時間が異常に長い。途中で登場人物がストーリーと関係なく踊り出したり、主役がいきなり歌を歌ったりするので、「主人公と美女が急に踊り出す変わったB級映画」と思われている。ともかく長くて、上映時間は3時間以上がザラだ。だから、インドの映画館で映画を見ると、途中で突然上映が止まるのでびっくりする。なんと、トイレ休憩がある。そして映画評論家は、インド映画が長い理由を「それはインドの伝統で、インド人がミュージカル的な娯楽を好むから」などと説明する。

しかし、本当の理由はまったく違うということを、あるとき、インド生活が長い日本企業の駐在員から聞いた。
「インドでは映画館が涼む場所なんです。家にエアコンがないから、映画館に行く。だから、映画は長くないといけないんです。たっぷり涼んで、昼寝もできますからね」
つまり、登場人物にワケもなく踊らせて無理矢理時間を長くする、それが本当の理由だというのだ。
私はこの説に思わず納得したが、真偽を確かめてはいない。


■冷蔵庫、洗濯機が生活環境を劇的に変えた
続いての家電は、冷蔵庫である。暑い国でよく冷える冷蔵庫が必要なのは、書くまでもないと思う。さらに、汗をよくかくので洗濯が欠かせない。つまり、洗濯機も重要な必需品となる。
日本が高度成長を始めたとき、「3種の神器」とされた家電製品があった。当時は、「3種の神器」を持つことが豊かさの象徴だった。1950年代後半、「3種の神器」とされたのは、テレビ(当時は白黒)、洗濯機、冷蔵庫。その後、1960年代半ばになると、これが「3C」になり、カー(クルマ)、カラーテレビ、クーラーが「3種の神器」になった。

その後もいろいろな「3点セット」が登場した。しかし、どれも最初の二つほどの生活へのインパクトはなかった。たとえば、最近では「デジタル三種の神器」と言われた、デジタルカメラ、DVDレコーダー、薄型テレビなどがあえる。
こう見ると、やはり、日本を豊かにした初期の家電、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビの力は本当にすごいと思う。これらがなければ、新興アジアにかぎらず、どこの国も発展しなかっただろう。

ちなみに、以下がアジア各国における冷蔵庫と洗濯機の普及率である。
(冷蔵庫)
インド17.9%、 インドネシア25.1% 、 中国60.1%、 香港99.6%、日本98.6%、 韓国99.7%、 タイ87.3%、 シンガポール99.1%
(洗濯機)
インド21.1%、 インドネシア28%、 中国71.4%、 香港95%、 日本99.0% 、韓国98.7%、 タイ50.8%、 シンガポール93.2%


■トイレがウオッシュレットでないときのがっかり感
そしていま、ここに加えたい日本の究極の家電製品がある。それはウオッシュレットだ。
この究極のトイレは、いまや世界中の人々がもっとも欲しがる家庭製品となっている。
もともと日本人には「おしりを洗う」という習慣はなかった。しかし、ウオッシュレットのおかげで、「洗わないと気持ちが悪い」というほどまでになった。私の場合、どこにいってもトイレがウオッシュレットでないとがっかりする。日本ではほとんどのトイレがウオッシュレットだから、このがっかり感はない。

しかし、たとえば海外のホテルで、トイレがウオッシュレットでないと、客室のテレビがサムスンだったときの何倍もがっかりする。中国にしても新興アジア各国にしても、一部の都市部を除いてトイレのひどさは筆舌に尽くし難い。トイレのひどさに、用を足すのを我慢し、ドア付きで水洗トイレのあるところを探しまわったことが何回もある。

ウオッシュレットの出荷台数は、2013年の時点で4000万台を超えている。内閣府消費動向調査によれば、ウオッシュレットを含む温水洗浄便座全体の家庭での普及率は8割に達している。ところが、海外、とくに新興アジアではウオッシュレットはほとんど普及していない。もし、新興アジア地域の家庭のトイレのほとんどがウオッシュレットになれば、新興アジア経済はいま以上に大発展を遂げるだろう。


■家庭にテレビや冷蔵庫はあってもトイレがない
ここで再びインドを登場させるが、インドというのはすごいところで、家庭にテレビや冷蔵庫はあってもトイレがない。首都ニューデリーのスラムに住む人々は、毎朝、近所を走る鉄道の線路脇で用を足すのが習慣になっている。田舎に行けば、ほとんどの人々が外で用を足している。だから、女性が一人で外に出ることが多く、強姦事件が多発する。

世界保健機関(WHO)によると、インドでは推定で6億2500万人が屋内トイレを利用できずにいるという。インド政府の国勢調査によると、インド人の53.2%は携帯電話を持っているが、その一方で、トイレ付の家に住んでいるのは46.9%と半分を下回るという。
こうしたトイレ事情は、新興アジアでもそう変わらない。インドほどひどくないが、トイレはあっても水洗トイレは都市部を除いてほとんどない。なぜなら、下水道が普及していないからだ。

水洗トイレとは、日本の場合は、家庭から下水道の本管に流れ、その本管は終末処理場に行くようにシステムが確立されている。しかし、この下水道システムの普及率は、新興アジア諸国ではほとんど確立されていない。
下水道普及率は、タイ9.6%,インド15.0%、フィリピン31.2%、インドネシア3.0%,ラオス19.2%、ベトナム18.0%、カンボジア11.0%(Global Water Intelligence, Global Water Market 2011より)と惨憺たる状況だ。
下水道を整備し、家庭用のトイレをウオッシュレットに替える。これだけで、新興アジアの未来は大きく開ける。


■エアコンとウオッシュレットは日本の独壇場
このように、日本の家電の力は世界を変える。だから、パナソニックやソニーが、テレビやケータイで韓国のサムスンやLGに敗れたことは、本当に残念だ。いまや、冷蔵庫や洗濯機、エアコンまで韓国勢や中国勢に敗れようとしている。しかし、高機能エアコンとウオッシュレットだけは、どんなに海外勢が頑張っても、日本のメーカーには勝てないだろう。
日本のエアコンの性能は素晴らしい。とくにダイキンのインバータエアコンは、世界最高のエアコンと言っていい。インバータ(周波数変換装置)で、ファンを動かすモーターの回転数を細かく制御でき、温度調節は自在だし、温度による自動作動・停止もできる。しかも静かだ。

もう一度インドの話になるが、インドでは、サムスンとLG2社が、早くから家庭用エアコンで3万円前後の格安製品を投入し、市場の半分のシェアを占めるまでになっていた。しかし、ここ2、3年で、ダイキンやパナソニックがシェアを伸ばし、韓国勢2社のシェアを奪いつつある。市場が成熟してくれば、高機能の日本の家電は十分に挽回できるのだ。
今後も日本の家電の力によって、新興アジアが発展していく未来を願ってやまない。


新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2014年04月25日


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