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【新興ASIAウォッチ/第55回】アジアに押し寄せるEV革命

欧州各国が次々と「EVシフト」

今後、自動車がEV(電気自動車)になるのが確定的になったのが、2017年だったと言えるだろう。いままさに「EVシフト」のトレンドが世界中に広がっている。このトレンドに乗り遅れまいと、巨人トヨタですら次々に新方針を発表している状況だ。となると、今後、世界で最も自動車市場の拡大が期待される東南アジア、インド地域はどうなるのか?というのが、今回の本稿のテーマだ。

ではまず、今年(2017年)のEVシフトのトレンドを振り返ってみよう。その口火を切ったのは、フランスだった。7月にマクロン新政権が、「2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する」という新規制を発表。これに、英国などが続き、EVシフトは全欧州に広がった。

ただし、フランスの動きは、欧州においては遅すぎたものだったと言える。なぜなら、ドイツではすでに、上院が2030年までのガソリン車・ディーゼル車の販売停止を決議しており、オランダやノルウェーなどでも同様な動きがあったからだ。とくにノルウェーはいち早くガソリン車・ディーゼル車規制を決め、なんと2025年までにすべてのクルマをEVに切り替えると決めていたからだ。

全世界に波及した「EVシフト」

こうした欧州の動きに続いたのが、中国だった。現在、世界最大の自動車市場である中国では、9月になって北京政府が将来的にはガソリン車・ディーゼル車の製造・販売を制限すると発表した。そして、これにインドも追随し、2030年までに販売する車をすべてEVにすると表明したのである。

もちろん現在、EVシフトの先端を行くのはアメリカである。環境問題に無関心のトランプ大統領がパリ協定から離脱しようと、連邦政府より州政府の権限によって環境規制が続けられているからだ。そのため、EVへの投資は今年も増え続けた。その結果、テスラ・モーターズの株価は、今年の4月に急騰し、なんと一時的にGMの時価総額を抜いてしまった。

もちろん、GMもEVシフトを強化している。この10月には、2023年までにEV20車種を市場に投入する計画を発表した。それによると、第一弾として、今後18ヵ月以内に「シボレー・ボルトEV」の経験を活かしたEVを2モデル発表するという。このように、EVシフトはもはや後戻りできないトレンドとして、いま全世界に広がっている。

トヨタはなぜ出遅れたのか?

残念ながらこのEVシフトに乗り遅れたのが、トヨタである。今年になって慌てて方針転換を発表したが、実際のところ、トヨタは昨年までは、「100%EV」の開発にほとんど注力してこなかった。次世代カーは、水素式の「燃料電池車」(FCV)になるとして、この開発を積極的に進めてきたからだ。

これは、ガソリンと電気のハイブリッド車「プリウス」が大ヒットした後遺症とも言える。この大ヒットでトヨタは、FCVが主流になると思い込んでしまったのだ。日本の経済産業省も、未来が読めなかった口だ。「水素社会がやってくる」として、官民共同の水素ステーションの設置などに乗り出していたからである。

トヨタはEVが使われるとしても、それは近距離用に限定されるだろうと考えていた。そして、モーター搭載式のハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)が水素電池車への橋渡し的存在になると予測してきたのである。しかし、水素社会はやって来なかった。

EV開発においては、日本のメーカーでは日産と三菱がやや先んじているだけで、世界的に日本は「出遅れ組」と思われている。そのため、10月に行われた第45回東京モーターショーでは、各メーカーは巻き返しに必死だった。ホンダは小型のEVを2020年に国内で発売すると表明。ダイハツやスズキもEVの軽コンセプトカーを披露した。

なぜEVシフトが起こったのか?

現在、世界ではクルマは年間に1億台近く生産されている。そのうちEVはまだほんのわずかであり、東南アジアでクルマと言えば、まだまだガソリン車である。そのため、圧倒的に日本車が強い。EVシフトの背景には、地球温暖化という環境問題があるが、アジアではその認識もまだ薄い。

ただし、このまま中国とインドが経済成長を続けると、自動車市場は拡大を続け、2050年までに現在の2.5倍のCO2が排出されるという。そうなると、燃費改善やFCVやHVだけではCO2を減らすことは困難である。そこで、「ゼロ・エミッション・ビークル」(ZEV)が求められるようになり、その筆頭がEVというわけである。試算では、2030年に25%、2050年には100%の次世代カーの普及が必要になるとされている。

ただし、ガソリン車をなくしたからといってCO2は減らない。なぜなら、EVが必要とする電気は、もともとは化石燃料を使って発電されるからだ。それでも、EVシフトはトレンドだから、後戻りはできない。トランプ大統領は「地球温暖化(グローバル・ワーニング)? そんなものはただの気候だ」と言っているが、世界からもアメリカ国内からも相手にされていない。

環境問題とともに、EVシフトを促進しているのが「IoT」や「AI」などのテクノロジーの発展だ。もはや、クルマが自動運転になるのは確定的で、こうなるとクルマは従来の車ではなく、知能を備えたコンピュータとなる。コンピュータなら電気で動くわけで、また、パソコンがそうであるようにモジュール生産が可能になる。つまり、従来のガソリン車では3万点も必要とされる部品は、1万点以上も不要になる。まさに、EVは「革命」なのである。

EV産業で“台風の目”となる中国

これからのEV革命で、いまアメリカとともに最も注目されているのが中国だ。現在、中国は「中国製造2025」と呼ばれる国家プロジェクトを行っており、その中で、前記したように、ガソリン車・ディーゼル車の製造・販売を制限し、EVの普及に注力しているからだ。これは、中国の大気汚染がPM2.5に代表されるように、世界最悪であることが背景にある。つまり、中国にとってEVは、いまや必需品なのだ。

現在、中国は2030年までにEVを1900万台まで普及させるとして、そのためにさまざまな優遇策を設けている。例えば、EVを購入した場合、政府から補助金が日本円にして最大で100万円余り支給される。中国は、自国の自動車産業がEVなら、日米欧の自動車産業に追いつき追い越せると考えている。従来のガソリン車は技術的に無理だが、EVならモジュールの組合せで生産できるからだ。

中国の地方都市や郊外に行って驚くのは、すでにEVが走っていることだ。それは電動バイクを4輪車にしたようなもので、とても次世代カーとは言えない。しかし、電動には違いないから「低速EV」と呼ばれ、最高速度が時速50キロ程度だが、確かに電池(高級なリチウムイオン電池ではなく鉛酸電池)で動き、1回の充電で50~100kmは走る。もちろん、部品の組合せで勝手につくられているため、乗り心地も悪く、安全対策などない。従来のクルマのカテゴリーではないため、ナンバープレートもなく(届け出なし)、税金もいらない、免許も保険も必要がないから、爆発的に普及しているのだ。もし、世界中のユーザーがこのようなEVでいいというのなら、中国は EV産業で“台風の目”となるだろう。

EVがアジア圏で普及する可能性

バイクと言えば、中国でも東南アジアでも庶民の足である。このバイクもいまはまだガソリンエンジンが主流だが、電動化が急速に進んでいる。中国では、電動バイクは1000元前後から購入できるので、自動車以上に普及している。日本のヤマハ、スズキも電動バイクを出しているが、価格面では中国製に勝てない。そのため、東南アジアでは、中国製の電動バイクがどんどん普及している。

この電動バイクが2輪から3輪、4輪となってEVに転化していくとしたらどうだろうか? 日米欧の自動車産業の感覚では、中国発のEVはとてもEVとは呼べないシロモノだが、はたしてユーザーはEVに従来のガソリン車と同じ役割を求めているだろうか?すでに、欧米でもカーシェアリングが進み、自動運転車が現実化している。そんな中で、EVが従来のガソリン車と同じような役割を担っていくであろうか?

現在、東南アジア圏で進んでいるのは、2輪車、3輪車の電動化、そして公共交通であるバスの電動化だ。また、それとともに、自国産のEVを製造しようという動きだ。前記したように、EVの生産はPCやスマホと同じように、部品を集めれば可能になる。かつての自動産業は、大規模な資本、高度な技術、大量の労働力を必要としたため、日米欧の先進諸国でなければできなかった。しかし、EVとなれば、そんなものは必要ない。

3輪車の電動かから始まるEV革命

東南アジアの大都市、マニラ、バンコク、ジャカルタなどは、どこも交通渋滞とそれに伴う大気汚染に悩んでいる。これを解消する切り札として、いま、電動化が脚光を浴びている。例えば、フィリピンでは125ccのガソリンバイクにサイドカーをつけた「トライシクル」と呼ばれる3輪タクシーが400万台も走っている。これが、大気汚染や交通渋滞の原因となっているため、フィリピン政府はトライシクルの電動化を進めている。3輪EVである。

この事業に、日本の渦潮電機(愛媛県)が2014年から参加し、トライシクルを電動化した「e-トライクル」を現地で生産している。また、電動バイクと言えば、日本のベンチャー企業のテラモーターズが有名だが、テラモーターズは、いまではフィリピン、ベトナム、インド、バングラディシュなどで、着実に電動2輪車、電動3輪車を販売している。

フィリピンと同じように、3輪車を電動化しようとしているのがタイだ。タイ・エネルギー省は、この10月に、国内で登録されている2万2000台の「トゥクトゥク」(タイの3輪タクシー)のすべてを2025年までに電動化すると発表した。トゥクトゥクは、元々はガソリンを燃料としていた。それが、2000年代後半からは、液化天然ガス(LNG)や圧縮天然ガス(CNG)を燃料とするタイプが登場して、大気汚染が少なくなった。しかし、タイ政府はそれでも不十分として、すべてEVにしてしまうというのだ。

じつは、タイではこの12月から、トヨタが超小型EVを用いたシェアリングサービスを始めた。チュラロンコーン大学と協業して、渋滞や大気汚染といった課題をいかに解決していくかの実証的な実験である。このように、東南アジア各国でも、EVシフト、EV革命が、どんどん進んでいる。

インドでは一足飛びでEVへ

これまでのEVシフトは、途中に「ハイブリット車」(HV)「燃料電池車」(FCV)を挟むと思われてきた。しかし、いまやそうではなくなり、一足飛びにEV時代に入ろうとしている。とくに、その意向が強いのがインドだ。インド政府は前記したように、2030年までに販売されるすべてのクルマをEVにすると宣言しているのだ。そのため、すでに自国の自動車メーカーを奨励して、自前で技術開発を進め、生産を開始している。

インド市場は大きいので、明らかに焦りを見せているトヨタは、このほどスズキとの間にインド向けのEV投入に関する覚書を締結した。インド市場向けにスズキが生産するEVにトヨタ自動車が技術的支援を行うことになった。

以上、アジア圏のEVシフトを日本企業を中心に見てきたが、欧米企業もこの熾烈な競争に参加している。例えば、シンガポールでは、この12月からフランスの輸送・通信大手ボロレ・グループの子会社によって、EVによるカーシェアリング事業「ブルーSG」が始まった。ボロレはフランス国内やアメリカでも同様の事業を実施し、EVによるカーシェアリング事業での世界展開を狙っている。

新製品はある時点から急速に普及する

スタンフォード大学の社会学者エベレット・M・ロジャーズ教授によると、新製品は、次のようなプロセスで普及していく。
先駆的なイノベーター(2.5%)→初期採用者アーリーアダプター(13.5%)→初期多数派のアーリーマジョリテイ(34%)→後期多数派のレートマジョリテイ(34%)→因習派のラガード(16%)

つまり、新製品というのは、イノベーター+アーリーアダプターの合計が16%を超えると、そこからは急速に普及する。日本における家電やPCなど耐久消費財の普及率を見てみると、ロジャーズ教授の理論はおおむね正しい。とすると、現在言われている「2035年に20%前後」というEVの普及率の予測だと、まだまだEV時代が来るのは先の話と思える。しかし、近年のイノベーションのスピードを見ると、EV時代はもっと早くやって来るのではないだろうか?

新製品の普及でもう一つ重要な点は、その技術がデファクト・スタンダードになるかどうかだが、これは、すでに各国政府のEV化政策によって決定したといっていい。となると、アジア圏から一気にEVが普及する可能性は十分にある。あと10年もすれば、東南アジアの大都市の道路は、EVで埋め尽くされているかもしれない。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2017年12月27日


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