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【新興ASIAウォッチ/第48回】どうなる異常なニュージーランド移住人気

アジア圏諸国移住者とは社会階層が違う

高齢化が進み、経済的に衰退していくばかりの日本から脱出する人々が年々増えている。とくに、プチ富裕層と呼ばれる人々にとって、「海外移住」はセカンドライフの最優先の選択肢となっている。

こうした状況を反映しているのが、外務省の「海外在留邦人数調査統計」だ(次の図表参照)。この統計によると、海外永住者の数は、毎年約1万〜2万人も増加している。ここに一時的な滞在、ロングステイなども含めると、もはや、日本人にとって「世界ぜんぶが暮らすところ」になったと言っていいと思う。

海外在留邦人数の推移

そこで、今回は、最近のニュージーランドの異常な移住人気を取り上げてみたい。ニュージーランドはアジア圏ではないから、このコラムの主旨から外れるのではないか?と言われそうだが、海外移住ということに関しては、アジア圏諸国と密接にリンクしている。

というのは、「海外移住先人気ランキング」では、常にアジア諸国が上位にきて、これまでニュージーランドはトップ10にも入らなかったからだ。それが最近、トップ10の下位に顔を出すようになった。ではなぜ、こうしたランキングで、これまでニュージーランドの順位は低かったのだろうか?それは、はっきり言ってしまえば、アジア圏諸国移住者とニュージーランド移住者では、社会階層が違うからだ。

年収1000万円以上で選択先になる

「海外移住先人気ランキング」というと、これがどんな調査方法に基づくかは別として、ここ10年間、トップはマレーシアとなっている。その後に、タイ、フィリピンなどのアジア圏諸国が続き、その後に欧米圏のカナダ、アメリカ(ハワイ)、オセアニア圏のオーストラリア、ニュージーランドが続いている。

しかし、これを人気ランキングというのはおかしい。なぜなら、海外移住でもっとも重要なのは、「人気」ではなく「懐具合」だからだ。つまり、その国に移住するためには、どれくらいの資金と生活費がいるかがもっとも大きな決め手になる。

つまり、「海外移住先人気ランキング」というのは、結局は人気を反映してはいない。マレーシアが1位なのは、コストパフォーマンスがいいということにすぎないからだ。つまり、移住のハードルが低く、生活するコストも手頃で、そのうえ治安、衛生環境などがいいということだ。

したがって、アジア圏と欧米圏では、移住する人間の社会階層が違う。このラインは年収では1000万円ぐらいのところにあり、1000万円以下ならアジア圏諸国しか選択肢がなくなる。つまり、ニュージーランド移住は、年収1000万円以上あって初めて選択先の一つになる。ニュージーランド移住者は、海外移住者のなかでも一部、それもある程度豊かな層以上が中心だった。

なお、ここで言う「移住」は、現地で働きながら暮らすというかたち、いわゆる「就労ビザ」獲得による移住に関しては、考慮していない。これは、改めて説明する必要はないだろう。

最初に目をつけたのは欧米や中国のプチ富裕層

というわけで、ニュージーランドはプチ富裕層の人気移住先の一つだった。それが、ここにきて人気が急上昇しているのである。例えば、前記した海外在留邦人数統計(2015年末現在)では、アメリカがトップだが、ニュージーランドは前年比で最高の約10%増を記録している。これは、アジア圏で人気のシンガポール(約2400人、前年比約7%増)やマレーシア(約1500人、同約5%増)をはるかに上回っている。日本人永住者数は2011年に約7562人だったが、2015年末で9652人となり、なんと5年間で約2000人も増加した。

ニュージーランドのよさにいち早く目をつけたのは、じつは、欧米や中国のプチ富裕層だった。その最大の理由は、ニュージーランドには、香港やシンガポールと同じく相続税がなく、不動産価格もこうした地域より低かったからだ。日本人の移住者は、こうした中国人、欧米人のあとに続いた。しかし、そうしてだんだん人気が出てくると、今度は本物の富裕層が移住するようになった。日本人では、ベネッセコーポレーションの創業家2代目の福武總一郎氏が、2009年にニュージーランドに資産管理社を設立し、夫人ともに移住している。

欧米の富裕層では、映画監督のジェームズ・キャメロン氏、ヘッジファンド界の大物のジュリアン・ロバートソン氏などが、農園や邸宅などの不動産を購入するようになった。こうしてニュージーランド・ブームが起こったわけだが、それが一気に加熱化したのが、昨年である。なぜだろうか?

トランプ大統領誕生で続々海外に脱出

ニュージーランド移住人気の立役者は、トランプ大統領である。彼が大統領になってから、アメリカを脱出する人間が増えたのは、よく知られている。その脱出先の一番手は隣国カナダだが、ニュージーランドがそれに続くようになったのである。

ニュージーランド内務省によると、トランプ政権誕生後の100日間のアメリカ人のニュージーランドでの市民権申請数は、前年同期比の約70%増と記録的に拡大したという。また、就労ビザ申請も約20%増で、ニュージーランド政府の移民関連公式サイトは、アメリカ大統領選後、アメリカからのアクセスが約10倍増の4000件を超える記録だという。

⇒ニュージーランド政府「移民サイト」

富裕層のなかで、トランプ大統領誕生と前後して、ニュージーランド移住を表明した大物に、ペイパルの共同創業者のピーター・ティール氏がいる。彼は、トランプ陣営に寄付するとともに、ニュージーランドに投資会社を設立し、市民権を申請したのだ。彼のような富裕層の場合、投資と移住はセットである。

2016年、ニュージーランド政府は計46万5863ヘクタール相当の外国人による土地購入を承認したが、これは前年比6倍というすごい増加ぶり。移住者数も過去最高の7万588人に達した。

不動産の高騰でオークランドを引き払う

このようなブームが、ニュージーランドになにをもたらすかは明白だ。まずは、不動産と家賃の高騰だ。すでに、ニュージーランド最大の都市オークランドでは、不動産価格が上がりすぎて、日本人移住者のなかには帰国する人間、あるいは不動産価格が安い地方に引っ越す人間も出ている。オークランド在住者に聞くと、不動産価格は10年前の倍、ここ2年で2割以上値上がりしているという。

オークランドはニュージーランド移住の入り口だが、最近では、地方都市の人気も高まっているという。不動産価格が上がれば、物価も上がる。つまり、予算を決めて移住しているリタイアメントの人々にとっては、ニュージーランドは「移住楽園」ではなくなりつつあるようだ。そのため、ニュージーランドを引き払って、マレーシアに移ったという人もいるという。

2016年の公式統計によると、ニュージーランドの不動産価格を吊り上げたのは、主に中国人富裕層である。中国人投資家は不動産購入に平均83万1000ドル(約9300万円)費やしたが、他の国の人々の平均は49万9000ドル(約5600万円)。アメリカ人の平均は23万2000ドル(約2600万円)だった。

オーストラリアへのゲートウエイとして人気

本来の移住者とともに、就労ビザによる労働移住者も激増している。それとともに、雇用環境も厳しくなっている。就労ビザをとってニュージーランド移住してきた日本の若者もけっこう多いが、今後はそうはいかないだろうという。

労働移住が人気なのは、いったんニュージーランドで市民権を得れば、オーストラリアでも住んで働けるということがあるからだ。そのため、オーストラリア移住のハードルが高い人たちは、「急がば回れ」と、ニュージーランドを目指してきた。

ニュージーランドは、オーストラリア、英国、カナダなどと違い、1度、永住権を取得すると更新は一切不要、居住の滞在日数要件もない。このことも、人気の原因だった。しかし、移住者が殺到した現在、今後とも同じ制度が維持される保証はない。

就労ビザに厳格化で労働移住が困難に

この4月19日、ニュージーランド政府は、移民法の改正を発表し、永住権取得の資格条件の大幅変更を決定した。この新ルールは今年の8月14日に施行される。新ルールでは、外国人の永住権取得が厳格化される。例えば、就労ビザとして人気の「技能移民部門」(Skilled Migrant Category)は、年収額がアップされた。今後は、年収約4万9000NZドル以下では永住権申請ができなくなる。1NZドル=80円ちょっととして、約500万円と考えればいい。

「年収約4万9000NZドル以下ではダメ」というのはどういうことだろうか?それは、それ以上の収入を得られる仕事に就かなければビザがとれないということだ。具体的に言うと、ニュージーランドの最低時給は15.75NZドルだから、この時給で1年間、1日8時間労働、週休2日で働くと、年収は約3万3000NZドルになる。これではビザは出ないということだ。日本食レストラン、日本関連サービス業などで働く場合、この最低賃金ラインかそれ以上で働く人間が多いが、この場合、今後は就労ビザが出ないということになる。

このカテゴリーでは、英語力も永住権取得の条件だ。この条件も高くされ、英国圏で採用の「英語能力テスト(IELTS)で6.5ポイント、あるいはこれに相当の英語力の証明義務付けられた。これは、TOEICで言うと800点以上だ。

今後はアジア圏の国々でも移民が制限

ニュージーランドでは「移民法」は、ころころ変わるという。だから、今後もさらに厳しくなるという。今回の改正は「2年間の有効期限付」になっているが、2年後はさらに厳しくなっている可能性がある。また、今回の改正は、あまりにも中国人移住者が増えため、その締め出しを狙ったものという説がある。おそらく、そのとおりだろう。なぜなら、カナダでもアメリカでもすでに同じようなことが行われてきたからだ。

世界の国々はそれぞれ、国内事情により、移民に対するスタンスが違う。そしていま、移民問題は世界的に大きな問題になっている。アメリカにトランプのような移民排除を狙う大統領が出現する時代になった。つまり、この先、日本人の海外移住のハードルはどんどん高くなるだろう。

その一つの例がニュージーランドだが、これはなにもニュージーランドだけの問題ではない。こうしたことが飛び火して、アジア圏にも広がる可能性がある。すでにシンガポールが移民のハードルを上げてきたように、今後はマレーシアやタイなども厳格化が進むと思われる。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2017年05月25日


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