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【新興ASIAウォッチ/第44回】なぜラオスは「行きたい国No.1」なのか?

ASEAN10番目という「最貧国」が欧米人に人気

かれこれ4年間、この連載コラムを書いてきたが、ASEAN10ヵ国でこれまで取り上げなかった国が2つある。ブルネイとラオスである。王国であり産油国であるブルネイは別として、ラオスを取り上げなかった理由はとくにない。もし、この連載コラムが旅行記だとしたら、私は、真っ先にラオスを取り上げたはずである。

というのは、この国は欧米人ツーリストの人気がひときわ高く、「ニューヨーク・タイムズ」紙の「世界で一番行きたい国」第1位にも選ばれたことがあるからだ。旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」の読者の人気投票でも、アジアで最上位に来たことがある。ところが、日本人にはまったく人気がない。首都ビエンチャンには、日本からの定期直航便すら飛んでいない。

人口は約691万人で1人当たりのGDPは1,500ドルほど。人口では隣国ベトナムの約13分の1でASEAN9番目(10番目は都市国家シンガポール)、1人当たりのGDPではタイの約4分の1でASEAN10番目という「最貧国」が、なぜ、これほどまでに欧米人に人気があるのだろうか?

ラオスにたった2つしかない「世界遺産」

ラオスというのは、ひと言で言えば「なにもないところ」だ。観光資源と言っても、周辺国と比べると少ない。有名な遺跡や古都などの歴史スポット、川や渓谷などの自然スポットもあるにはあるが、たいしたことはない。
そう言えば、ASEAN諸国ではただ1国海がないので、海浜リゾートもない。ないと言えば、首都ビエンチャンには高層建築がない。世界的なホテルチェーンが運営する5つ星ホテルもミシュランの星がつくレストランもない。アジアの街らしくバイクが走っているが、クルマは少ない。数年前までは、ショッピングモールもコンビニもなかった。スタバはいまだにない。

だから、日本からの観光客は少ない。とくに、日本の若者はほとんど行かない。タイやベトナムからバスを乗り継いで、バックパッカーが行くだけだ。まして、これほど不便な国に日本のシルバー世代は出向かない。ところが、欧米人は若者から高齢者までまんべんなく、この国を訪れる。ビエンチャンをゲートシティとして、たった2つしかない「世界遺産」の古都ルアンパバーンとワット・プーと関連古代遺産群は、いつ行っても欧米観光客で賑わっている。

そこで、こんな「ないない尽くしの国」のどこがいいのかと、フランスから来ていたバックパッカーの若者に聞いたら、「ルアンパバーンほど素晴らしい街はありません。まさにここはアジアそのもの。その中にモダンなカフェやフレンチレストランがあります。スローな時間がたまらないです」と言うのだ。また、ニューヨークから来たというアメリカ人の若者も同じようなことを言った。

古都ルアンパバーンは神秘的「仏教の町」

ルアンパバーンは、町全体がそっくり世界遺産という歴史的な町だ。ルアンパバーンの朝は、托鉢僧たちの静かな行進から始まる。町の人は道端で彼らを待ち受け「喜捨」(食べ物などを捧げること)を行う。この光景に、欧米人はまず引き込まれる。ラオスは敬虔な仏教徒の国。男子の8割以上が一生に一度は出家するという文化に、仏教をまったく知らない欧米人は「神秘性」を感じて虜になってしまうのだ。

ルアンパバーンには、メコン川沿いの町中に、60以上の寺院が点在している。その寺院の建築様式は独特で、ルアンパバーン様式と呼ばれ、いずれも赤い屋根を持っている。緑の木々の中に赤い屋根。そして、静寂。ゆっくり流れる時間。仏教文化と農村風景を知っている日本人には、いまさらという感じだが、欧米人はこれに強く惹かれるようだ。ルアンパバーンには欧米人に人気「Utopia」という店がある。ここでは、寝転びながらコーヒーやビールが飲める。

日本人の旅行は文明への旅、欧米人と正反対

欧米人と私たち日本人の旅の文化、スタイルの違いを考えたことがある。例えば、大都会ニューヨークで暮らしていると、なにもかもせわしい。街に出れば、誰もが早足で歩いている。そして、地下鉄に乗るために街角の階段を駆け足で降り、ビルに入れば入ったで、エレベーターで高層階を目指す。アポイントに追われ、常にスマホの画面から目が離せない。これでは、異文化のアジアの田舎の国が、別世界に見えるのは当たり前で、憧れるのも無理はない。つまり、彼らの旅は、多くの場合、文明から非文明を目指すのである。

しかし、日本人は、欧米に追いつけ追い越せで、この1世紀半を暮らしてきた。欧米文明は、日本人にとって憧れの的だった。つまり、日本人の旅は、欧米人の逆で、非文明から文明を目指すのである。ヨーロッパならパリに行き、アメリカならニューヨークに行く。庶民まで海外旅行ができるようになったのは、やっと1980年代になってからのことだから、まだ30数年しか経っていない。ラオスにそれほど魅力を感じないのは、当然だろう。

しかし、行ってみると、ラオスはやはり素晴らしい。タイやベトナムの田舎やミャンマーで感じたこと、「ここには日本の昔がある」が、もっとはっきりと感じられる。幼い頃の自分に出会う、郷愁の世界が広がっている。それは、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』か、それ以前の世界である。

ラオスに「理想郷」シャングリラを探す

「理想郷」という言葉がある。言い換えると「シャングリラ」だ。欧米人は、このシャングリラが大好きである。1930年代に、ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』(Lost Horizon)がベストセラーになり、アジアのどこかに理想郷が存在しると信じられるようになった。小説ではシャングリラは、ヒマラヤ山脈の山の中にある。カラカルという名の8500m以上の高峰の麓、霧の漂う調和に満ちた谷間に存在した。しかし、例えば中国の雲南省、東南アジアの山岳地帯の中にも、それはあるのではないかと言われた。

中国はしたたかで、1997年に雲南省政府が同省の迪慶州こそシャングリラだと宣言し、2002年には中央政府の承認を得て、中甸県を「香格里拉県」と改名した。以来、雲南省は多くの観光客を集めたが、私は、ラオスの方がシャングリラではないかと思う。ラオスの国土を貫くメコン川に沈む夕日を眺め、グラスを傾けていると、地上の楽園は存在するのではないかと本気で思えてくるからだ。ビエンチャンでは、若者たちは、人気クラブ「CAT WALK PUB」に行くが、この地でクラブに夜遊びに行くほど空しいことはない。

中国人バブルの後に町はゴーストタウンに

ラオスは社会主義国家だが、いまの世の中、完全なる社会主義国家などない。ラオスも例外ではなく、中国にならって市場主義経済を導入して、経済発展を遂げてきた。3年前には証券取引所もできて、金融経済の基盤は整ってきている。そうした中、近年は海外からの投資も活発で、日本の投資家もビエンチャンの不動産に目をつけるようになった。なにしろ、ラオス経済はGDP年率7〜8%で成長している。タイやベトナムで賃金水準が上昇しているので、安い労働力に注目が集まり、日本企業の進出も盛んになった。

しかし、経済成長はこの国になにももたらさないだろう。ラオスは、発展のため、中国の援助に頼ることが大きかった。そこで、北部の中国国境の町ボーデンに経済特区を作り、中国では禁止されているカジノを軸とした観光振興に乗り出した。こうして、山奥の小さな町は、カジノを中心にホテルやショッピングモール、投資目的のマンションが乱立し、バブ景気に湧くことになった。

しかし、バブルは、人々の貧しいながらも平和な生活を破壊した。山岳民族はアヘンを中国人に売って堕落し、犯罪が多発。また、カジノ客目当てに売春婦と闇のブローカーたちが集まり、町の治安は悪化した。たまりかねたラオス政府は、2011年、カジノの閉鎖を決定した。いま、ボーデンは完全なゴーストタウンになっている。

子供たちの澄んだ目が忘れられない

東南アジアで心救われるのは、子供たちの目が澄んでいることだ。例えば、カンボジアのシェムリアップ近郊を遺跡巡りで回っていたとき、遺跡のある村の道端で、幼い子供たちの集団に出会ったことがある。3歳から10歳ぐらいまでの子供たちが、なにをするでもなく道端に集まっていた。そして、クルマから降り立った私と家内を、澄んだ目でじっと見ているのだ。それで、私はなにか切なくなって、その子供たちの中で一番幼い女の子に、ポケットに入っていたキャンディを渡した。

その子は「ありがとう」という目をしてキャンディを受け取ると、すぐにそれを一番年上の子に渡した。それを見て家内は言った。
「自分で食べてはいけないのね。お姉さんに先に食べてもらうのね。本当、いい子ね」

ビエンチャンを離れて、ラオスの田舎の村に行くと、このときと同じ光景があった。村の片隅にある商店の前に、3、4歳から10歳ぐらいの子供たちが集まっていた。その中の2、3人が、木箱の上に木の実を並べて売っていた。この子たちがあまりに可愛い、つぶらな目をしていたので、私はまたキャンディを渡し、同じ光景を目にしたのだ。

いずれ、ラオスもマレーシアやタイのようになるだろう。それが経済発展の必然だ。しかし、この国だけは経済発展などしてほしくないと思う。永遠の田舎、スローな時間、そして、子供たちの澄んだ目、それらが失われないことを願ってやまない。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2017年01月26日


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