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■アジアの政治が大きく動く年になる
2016年はアメリカ大統領選挙があり、世界的に「政治の季節」とされる。これは、アジアでも同じだ。すでに、台湾では、1月に民進党の蔡英文氏が史上初の女性総統となり、4月には韓国でも総選挙が行われる。日本も7月に参議院選挙(衆参同時選挙の可能性も)が行われる。では、新興アジア圏はどうだろうか?
注目されるのは、昨年スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したミャンマーで、3月にスー・チー大統領が誕生するかどうか? 5月に大統領選挙が行われるフィリピンで誰が大統領なるか? だ。さらに、現在、軍政が敷かれているタイの政治は安定するかどうか?なども注目されている。
つまり、新興アジア圏も今年は「政治の季節」と言っていい。そこで、今回は、新興アジア各国の政治状況を概観してみたい。
■ベトナム(国家形態:社会主義共和国、政治形態:ベトナム共産党による一党独裁)
1月20〜26日、ハノイで第12回共産党全国大会が行われた。ここで、「改革派」とされるグエン・タン・ズン首相が書記長になるのでは思われていたが、結局、グエン・フー・チョン書記長が再任された。再任されたチョン書記長は閉幕式で、「ホーチミン思想を創造的に活用し、独立と社会主義という目標を堅持する」と発言した。
そのため、「改革は後退するかも」という見方が強まった。なぜなら、改革派の筆頭とされたズン首相が権力闘争に敗れたことがはっきりしたからだ。ズン氏は、これまでアメリカとの関係改善に尽力し、昨年10月にはアメリカが長年禁じてきた武器輸出の一部解除を勝ち取った。また、TPPへの参加も決めてきた。これに対してチョン書記長は「親中国派」とされる。ただ、ベトナム共産党は集団指導体制を敷いている。
■ラオス(国家形態:人民民主共和国、政治形態:ラオス人民革命党による一党独裁)
AEC(アセアン経済共同体)を構成するASEAN10ヶ国のなかで、もっとも経済成長をしているこの国(ここ数年、年率8%)は、もっとも「中国寄り」の国でもある。
この1月、5年に1度のラオス人民革命党の大会が開かれ、新しい党書記長(最高指導者)に、国家副主席のブンニャン・ウォラチット氏が昇格した。ブンニャン氏は軍部出身だが、これまで財務大臣、副首相、首相などを経験しており経済政策が得意。よって、改革開放政策が促進されると見られている。また、ベトナムへの留学経験があり、ベトナム政府とのパイプを持つことから、ベトナムとの関係が強化されるのは間違いない。
この党大会での最注目は、もっとも中国寄りと見られた党内序列8位のソムサワット副首相が新指導部から外されたことだ。これで親中路線に歯止めがかかると見たアメリカは、すかさず1月25日に、ケリー国務長官がトンシン首相と会談。同首相から「(中国による)南シナ海の軍事拠点化を望まない」という発言を引き出した。
しかし、ラオスはASEAN10ヶ国で、ただ1国だけ海に面していない。
■フィリピン(国家形態:共和国、政治形態:議会民主主義による大統領制)
この5月に大統領選挙が行われる。大統領は直接投票により選出され、その任期は6年、再選は禁止されている。今年は大統領選(正副)のみならず、議会の上・下院選のほか、市長選、地方議会選など数多くの選挙が予定されているので、フィリピンは大きく変わる可能性がある。
現大統領は故コラソン・アキノ元大統領の長男であるベニグノ・アキノ氏。後継者争いに名乗り出ている有力候補は、現在のところ4人。与党自由党(LP)が支援し、アキノ現大統領の後継候補であるロハス前内務・自治相、野党陣営(UNO)の支持を集める前マカティ市長で現職の副大統領のビナイ氏、現ダバオ市長のドゥテルテ氏、女性候補のグレース・ポー上院議員だ。
この1月21日に開かれた公式討論会で、人気を集めたのは、やはり女性候補のグレース・ポー氏。現在、フィリピンは6%前後の高い経済成長率を続けているが、格差も拡大している。そのため、格差の解消を訴え、「農作物の付加価値を高め、農家の現金収入を増やす。公立学校の給食も無料化を目指す」と宣言。また、中国との南シナ海を巡る領有権争いを念頭にして、「シンガポールのように国防能力を高めるべきだ」とも訴えた。
ただ、彼女は人気映画俳優フェルナンド・ポー氏の養子で、アメリカ暮らしが長く、「10年以上の国内在住」の条件を満たしていないとして選管から候補者資格を取り消され、最高裁が審議中だ。もし、最高裁が立候補を認めないと、一気に大混戦になる。アキノ政権下では改革が進み、それまで蔓延していた汚職も減った。しかし、この路線が、大統領次第で逆コースになる可能性も捨てきれない。
■タイ(国家形態:王国、政治形態:立憲君主制)
インラック前首相の政権運用の混乱から、2014年5月に政変が起こり、軍を中心とする「国家平和秩序維持評議会(NCPO)」が全権を掌握、軍政下にある。NCPOは、ロードマップを発表し、2017年に新憲法と総選挙を行うとしているが、その作業は遅れている。政治的混乱もあって、2014年の成長率は0.9%と落ち込み、2015年は3.0~4.0%を見込んでいたが、同年11月に2.9%に下方修正されている。
この1月29日、憲法起草委員会は新憲法の一次草案を公表した。それによると、国会議員でない人物が首相になるのを認める、上院議員の直接選挙をやめ、各種団体などの選任制に改めるなど、民主主義の後退ともとれる内容を含んでいたため、既存政党などは反発している。今後、草案に関しての意見をまとめ、最終案への賛否を問う国民投票が7月に実施される予定になっている。
■ミャンマー(国家形態:連邦共和国、政治形態:議会による大統領制)
長く軍事政権が続いてきたが、昨年11月の総選挙で軟禁を解かれたスー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝。スー・チー氏は、自ら大統領に就くために、憲法条項の効力停止を軍に打診し、交渉を続けている。現憲法は、外国籍の家族を持つ者の大統領資格を認めておらず、英国籍の息子を持つスー・チー氏はこれに該当する。
議会は、議員投票で選ばれる大統領の候補者届け出日を、この3月17日としているので、それまでに決着しないと、スー・チー氏は自分に代わる候補を出さなければならない。現在、大統領候補に挙がっているのは、なんと88歳のティン・ウー最高顧問で元軍人である。したがって、NLDを中心とする新政権がどうなるかはまだ見えてこない。しかし、軍事政権時代から改革開放路線に転じているので、その流れは変わらず、課題はスー・チー氏がどれだけ経済運営の手腕を画期できるかだ。
■マレーシア(国家形態:連邦、政治形態:立憲君主制)
マレーシアの国家元首の地位にあたるのは国王で、13州のうち9州にいるスルタンの互選で選ばれ、任期は5年。世界でも珍しい、世襲ではない国王である。議会は上院、下院の二院制で、行政府のトップは首相が務める。したがって首相がリーダーである。マハティール元首相が提唱した「東方政策」でマレーシアは大発展し、現在のナジブ首相は、「One Malaysia」(一つのマレーシア)をスローガンに掲げ、民族融和と行政改革を行って、2020年までの先進国入りを目指している。
ただ、昨年、不正資金疑惑が浮上し、大規模なデモが発生するなど、政界は大揺れになった。この1月、検事総長はナジブ首相の個人口座に送金された金は、サウジアラビア王族からの寄付で違法性はなかったとして調査の終了を決定したので、政界は安定に向かい出している。
■インドネシア(国家形態:共和国、政治形態:議会民主主義による大統領制)
インドネシアは、かつてはスカルノ、スハルトと、大統領によるいわゆる「開発独裁」体制が続いてきた。しかし、近年は民主化、多党化が進み、連立政権が常態化した。そんななか、2014年10月にジョコ・ウィドド政権が誕生して、現在にいたっている。
ジョコ大統領の最大の特徴は、インドネシア初の“庶民派”大統領であること。これまでの大統領は、軍人、エリート、ジャワ人、イスラム教徒でなければならないという不文律があったが、ジョコ氏は貧しい生まれで、家具商成功して政界入りした。そのため、経済・社会政策を最優先し、鉄道、港湾、電力・エネルギーなどのインフラ整備を優先させ、それとともに社会保障の充実を目標に掲げて、政権運営をしている。
いまのところ、安定した人気を保っているが、経済状況はあまりよくない。インドネシアは、3年連続の経常・財政収支の「双子の赤字」を抱え、通貨ルピアはこの3年間でドルに対して約4割も下落している。インドネシアは“ASEANの盟主”とされ、ASEAN本部はジャカルタに置かれている。ASEANの盟主として、他国を引っ張っていけるどうか、ジョコ氏の手腕が試される。
■カンボジア(国家形態:王国、政治形態:立憲君主制だが事実上の独裁)
元首は、2004年に即位したノロドム・シハモニ国王で、現首相は与党・人民党のフン・セン氏。議会は二院制で総選挙も行われてきたが、事実上のフン・セン「独裁体制」にある。フン・セン氏が首相の座に就いたのは1985年で、すでに31年もトップの座にある。これは世界的に見ても異常だが、彼はまだ64歳のためまだまだやる気である。
カンボジアの政治の課題は縁故主義で、改革はあまり進んでいない。ただ、経常収支および財政収支は慢性的に赤字ではあるが、アンコールワットという観光資源、「タイ・プラスワン」による海外直接投資の増加で、経済成長は順調だ。
■シンガポール(政治形態:共和国、政治形態:立憲共和制だが事実上の一党独裁)
現首相のリー・シェンロン氏は、“建国の父”故リー・クワンユー氏の長男。2004年に14年間首相を務めたゴー・チョクトン氏から政権を継承した。建国以来、与党人民行動党(PAP)が圧倒的多数を維持しているので、政治的には安定している。
前回の2011年5月の総選挙では、一院制の議会87議席中81議席を獲得している。このため、「一党独裁」と揶揄されるが、オフショアで経済的な発展を続けてきたため、国民の不満は少なく、政治への関心は薄い。
シンガポールの政治で特筆すべきなのが、汚職の少なさ。「腐敗認識指数」調査によると、世界のトップクラスにある。この透明性と企業活動の自由度により、シンガポールは新興アジアの中心地となっている。
(※ASEAN10ヶ国にはブルネイが入りますが、ブルネイは王国のため、ここでは省略しました)
新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2016年02月26日
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