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【新興ASIAウォッチ/第16回】アジアはいまだにコピー商品、ニセモノ天国

■新作映画のDVDは劇場盗撮版
「なんだ、これ! また騙された」という経験をした方は多いのではないだろうか?
初めからニセモノだとわかって買ったのを別にして、買い物でニセモノをつかまされたときのショックは大きい。たとえば、新作映画のDVDは新興アジア諸国のどこで買っても、たいていコピー商品である。ベトナムのホーチミンのDVDショップで、きちんとパッケージされたものを買う。そして、ホテルに帰って再生してみると、画面が荒く、明らかに映画館で盗撮されたものだった、なんてことは日常茶飯事だ。

かつては、ニセモノの本場と言えば、中国、韓国、香港だった。バレンチノのベルトを買って、よく見ると「Valentino」でなく「Valentine」(バレンタイン)だったり、ローレックスの時計が「Rolex」でなく「Rolax」(ローラックス)だったりしたことがある(20年以上前の筆者の体験)。こうなると笑うしかないが、いまではコピー商品はどんどん精巧になり、ホンモノと区別がつかないものも多い。
そして、「ニセモノ天国」は、いまやアジア全域に広がっている。そこで、今回は、主な新興アジア諸国のニセモノ天国ぶりをまとめてお伝えしておきたい。


■コンピュータソフトはほぼ違法コピー版
新興アジアのニセモノ天国の双璧は、ベトナムとインドネシアである。この両国の場合、コピー商品といっても、日用品からブランド品、工芸品から土産物、そして書籍やDVD、コンピュータソフトにいたるまで、安く売られているものは、ほぼ間違いなくニセモノだ。

ベトナムの場合、驚くべきことに、PCショップでPCを買うと、Microsoft Office(マイクロソフト・オフィス)、Adobe(アドビ)のInDesign(インデザイン)、Illustlator(イラストレーター)など、必要なソフトの最新版が全部インストールされている。だから、わざわざソフトを買う必要はないのだが、これらは全部違法コピー版だ。どこの会社でも、オフィスで使っているPCの中のソフトは、ほぼ違法コピーソフトと思って間違いない。

中国もそうだが、アジアの場合、コンピュータソフトの正規版を買うユーザーはほぼいない。ソフトウェア業界団体のビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)がまとめた、「第9回世界ソフトウェア違法コピー調査」によると、2011年のベトナムの違法コピー率は81%である。しかし、この上を行くのがインドネシアで、なんと86%。世界平均は42%だから、この両国の違法率は断トツに高い。フィリピン、タイなども違法率は高い。


■ベトナム、ホーチミンのコピー市場
ホーチミンの場合、外国人観光客がいちばんよく行くのが、ベンタイン市場。ここには、数千軒の店がひしめきあっているが、注意しないとなにを買わされるかわからない。もちろん、ブランド品の精巧なニセモノ(粗悪品も売っている)を買うために行くのならかまわない。希望通りのモノはすべてあるからだ。しかし、ベトナムの土産物の定番とされる「バッチャン焼き」もニセモノが出回っているので、要注意だ。

バッチャン焼きとは、ベトナム北部、バッチャン村でつくられた陶磁器で、ベトナムを代表する伝統工芸品として、どんなガイドブックにも載っている。だから、外国人観光客は、いいものを安く手に入れようとベンタイン市場に行く。しかし、ベンタイン市場は一般市民より外国人向けに特化しているので、値段はかなりふっかけられる。そのうえ、ニセモノだったら目も当てられない。
また、ホーチミンにはサイゴンスクエアという、違法コピー商品が激安で買えるマーケットもある。ただし、ここでたとえばサムソナイトのスーツケースは日本円にして2000円ぐらいで買えるが、2、3回使っただけで破損する。


■インドネシア、ジャカルタのコピー市場
ジャカルタでもっとも有名なニセモノ市場が、コタにある「マンガドゥア」というショッピングマーケット。ありとあらゆるコピー商品が、堂々と売られている。とくに、シャネル、グッチ、ヴィトンなどの高級ブランドの品揃えは、アジア一と言える。そんななか、人気なのがサンダル靴。新興アジアの女性にとって、サンダル靴は欠かせないからだろう。

しかし、これらはコピー商品とは言いがたい。なぜなら、ホンモノには、ここで売られているかたちのサンダル靴がない場合が多いからだ。ただし、よくできているものはけっこう高い。ニセモノなのに、日本円で3000円もするものがある。もちろん、ファッション用品ばかりか、化粧品から日用雑貨、スマホ、PC、DVD、コンピュータソフトにいたるまで、ありとあらゆるニセモノがそろっている。

では、ホンモノはいったいどうやって手にいれればいいのか?
インドネシアの中流層に聞くと、「送料がかかるけど、ホンモノを買うなら、アメリカのアマゾンのサイトでネットショッピングをする」とのことだった。


■タイ、バンコクのコピー市場
バンコクでは、パッポン通りが、高級ブランドを中心としたコピー商品の一大マーケットだ。また、プラトゥーナム市場の脇に位置するパンティッププラザは、CD、DVDの海賊版の宝庫。最新の映画、音楽モノは、必ず置いてある。
バンコクで面白いのは、ブランド品のニセモノだというのに、品質に「いい」「悪い」があることだろう。店員は自信満々で「これはグレードAの商品です」と言って、ブランドバッグや時計を出してくる。ニセモノにもランクがあるのだ。

新興アジアに溢れるコピー商品は、現地生産のものもあるが、精巧なものは中国、香港、韓国経由で入ってきているという。現地生産のものは、中国からバイヤーがマザー商品を仕入れてきて、それを裏ルートで流す。そして、現地の裁縫工場などで、安い賃金でマザー商品を複製するという。

タイ政府は、ここ数年、知的財産権の保護強化に取り組んでいるが、その効果は出ていない。最近では、飛行機で個人が模倣品を持ち込んだケースであっても、コピーと知りつつ持ち込んだ場合は処罰の対象とすることになっている。しかし、ほとんどスルー状態のようだ。


■マレーシア、クアラルンプールのコピー市場
クアラルンプールでは、チャイナタウンが最大のニセモノマーケットだ。観光客なら必ずチャイナタウンに行くので、ここがコピー商品天国となっている。とくに、ペタリン通りの屋台では、定番の旅行鞄、小物類などとともに、ローレックスやブルガリ、カルティエなどのブランド品のニセモノが山と売られている。ここで日本円にして3000円ほどのローレックスの時計を買うと、日本に帰って1、2カ月、長くて半年ほどで動かなくなる。

ここのニセモノは粗悪品が多い。しかし、「もっといいものはないか?」というと、店の奥のどこからか、「これは品がいい」と持ってきてくれる。ニセモノに品がいいも悪いもないと思うが、売っているほうは真剣だ。また、たとえばヴィトンのチャイナドレスとか、ありえないモノも売っているので、驚く。


■フィリピン、マニラのコピー市場
マニラでは、高級マーケットの代名詞「ヒルズ」がヒルズではない。コピー商品天国のショッピングモールとして有名なのが、なんとグリーンヒルズ。ここは巨大なショッピングモールで、全部回ろうとすると1日では足りない。したがって、ニセモノの数は半端ではない。ブランドのニセモノはほぼ完璧に全部そろっているが、品質はあまりよくない。

ブランド品ばかりか、音楽や映画DVD、コンピュータソフトも豊富だ。たとえば、Microsoft Office(マイクロソフト・オフィス)は、50ペソから100ペソ程度で入手できる。グリーンヒルズには、世界最大規模の携帯電話の中古マーケットもある。なにしろ、iPhoneがアメリカで発売される前から売っていたという話もあるくらいだ。


■もちろん日本持ち込みは違法、要注意
というわけで、コピー商品コレクターには、新興アジアは「宝の山」である。
しかし、コピー商品の日本への持ち込みは違法である。税関で見つかれば没収される。ただし、よほどのことがない限り(大量に持ち込むなどしなければ)、没収されることはない。もちろん、見つからなければの話だが。

以下は、ネットの「政府広報オンライン」に書かれていること。コピー商品を買うなら、一度は目を通しておくべきだろう。

《偽ブランド品、コピー商品等の知的財産侵害物品は国内への輸入禁止!
税関での取締り強化中!
海外旅行先での買い物や、インターネットで海外から直接商品を購入する場合、偽ブランド品やコピー商品にご注意ください。これらは企業に損害を与えるだけでなく、使用することにより、健康や安全を脅かすおそれがあります。偽ブランド品、コピー商品等知的財産を侵害する物品は、拳銃や麻薬と同じく日本国内への輸入が禁止されています。被害を防ぐため、税関では取締りを強化しています。》


新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2014年06月24日


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