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【新興ASIAウォッチ/第9回】新興アジアの中で中国とどう向き合うか?

新興アジア地域はじつは華人経済圏

新興アジア経済圏を歩くと、中国の影響力の大きさに、しばしば圧倒されることがある。かつて、この地域は日本の経済的なプレゼンスが強かった。しかし、ここ10年ほどで、中国の経済的プレゼンスは日本をはるかに上回るようになった。そこで、今回は、新興アジアで日本人が生きていくために欠かせない、中国との付き合い方に関して考えてみる。

まず、新興アジア地域が、じつは華人経済圏であると知ることがいちばん大事だ。新興アジアには、タイ、カンボジア、マレーシア、ミャンマーなど「親日国」が多いが、じつは経済の実権は華僑(オーバーシーズ・チャイニーズ)が握っていて、中国との結びつきのほうが圧倒的に強い。

はっきり言って、ベトナムは歴史的に中国の属国であり、タイの王族が中国系であることは公然の秘密だ。「バンコクに住むタイ人の8割は中国人の血を引いている」「タイ人で中国人の血が入っていない人を探すほうが難しい」とは、よく言われることだ。また、シンガポールも華人が実権を握る国家で、人口の4分の3が華人だ。

つまり、新興アジアで生きるということは、じつは、中国と付き合うことでもある。ここ数年、「脱中国」が盛んに言われ、日本企業の新興アジアシフトが進んでいるが、実際には「脱中国」などできないのだ。私たち、日本人は中国人と折り合っていかなければ生きられない運命にあると思うべきだ。

記念撮影での立ち位置で存在感を示す

2013年10月25日に中国国際貿易促進委員会が発表したところによると、世界の華人・華僑総数約3000万人のうち、2452万人が東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国に住んでいるという。そして、その財産規模は、1500億~2000億ドル(約15~20兆円)に達し、華人・華僑の経済資源全体の70%以上に上るという。

また、この10年近くで、ASEAN諸国における中国企業の投資速度が加速している。2013年6月末までの直接投資の累計額は、約300億ドル。これは、中国の対外直接投資総額の5.1%を占めるという。これほどまでに、新興アジアは中国と結びついているのだ。したがって中国としても、ASEANを外交上の最重要地域としている。中国は、「21世紀のアジアの盟主」の座を目指しているのだ。

その証拠に、この10月7日~8日に、インドネシアのバリ島で開催されたAPEC首脳会議では、習近平国家主席が、欠席したオバマ大統領に代わって、会議のイニシアチブを取ることに必死になっていた。記念撮影を見ればわかると思うが、習近平国家主席は、真ん中の議長国インドネシアのユドヨノ大統領のすぐ隣に立ったのである。ちなみに、その反対隣はプーチン大統領。残念なことに、日本の安倍首相は、後列の端っこだった。

ASEANは4番目、日本は5番目の輸出相手

中国から見てASEANは第4番目の輸出相手である。1番目は中継貿易を行う香港。2番目はアメリカ。3番目はEU。そしてASEANと続く。ちなみに、日本は5番目だから、中国から見るとASEANは日本より大事だ。中国のASEAN向け輸出は、ここ数年、毎年2〜3割増となっている。

中国にとってASEANは、経済的に持続的発展するために重要なことはもちろん、地政学的、軍事的にも、第一列島線を確保するためにも重要である。つまり、中国は、ASEANを中国の「後背地」(ヒンターランド)とする必要がある。この点、日本はどうだろうか?ASEAN諸国を脱中国のための「チャイナ+ワン」とだけ考えていては、中国の戦略に勝てないのではないだろうか?

人民元取引が解禁になった台湾で起こったこと

このようにASEAN諸国と中国の関係が深まるにつれて、人民元のプレゼンスも大きくなっている。かつて人民元は、新興アジア地域においては、使い勝手が悪かった。日本円なら、すぐにでも両替できたが、人民元は違った。しかし、最近は人民元の国際化が進み、人民元を持つことが新興アジアの一般人にもブームになっている。

先日、私は所用があって台北(タイペイ)に行った。小籠包をたらふく食べて3キロも太ってしまい、そのため、いまダイエット中だが、一つ驚いたことがある。それは、台湾の銀行で人民元口座が人気になっていることだった。

台湾では、今年になって(2013年2月から)、人民元取引が解禁された。すると、銀行では、人民元預金が大人気となり、台湾人はこぞって人民元預金を始めるようになったのだという。なにしろ、金利は3%もつく。しかも、人民元は今後もドルに対して切り上がっていくのは確実だと、台湾人は口をそろえて言った。

ちなみに、東京にある中国銀行でも人民元口座は開ける。しかし、日本は金融ガラパゴス状況にあるから、1年もの定期でも利息は1%ぐらいしか付かない。中国本土なら3〜4%付くのに、この状況は考えられない。台湾は新興アジアではない。しかも、すでに先進国だ。ただ、アジアの中では、特別な親日国家である。その台湾でさえも、こうして「人民元経済圏」に組み込まれていくことに、私は時代の流れを感じずにはいられなかった。

新興アジアでどんどん進む人民元の国際化

中国政府は2009年7月に、人民元の自由化、国際化をスタートさせた。以来、中国は人民元を国際通貨にするため、3段階で計画を進めてきた。第1段階は、中国と国境を接する国14カ国で、国境貿易の決済に人民元を浸透させること。第2段階は、人民元をアジア地域の主要通貨に成長させること。そして、第3段階は、ドル、ユーロと並ぶ国際通貨にすることだ。

現在、人民元は、第2段階にあり、とくに新興アジアではどんどん浸透している。2012年6月から、日本と中国の間で円と人民元の直接取引がスタートしている。それまでは米ドルを介しての決済が中心だったが、これが直接決済に代った。中国は、いまではオーストラリアとも直接決済を行なっている。日本円と人民元の直接決済は、現在、1日あたり約7億5000万ドル規模に達している。

こうしたことから、香港やシンガポールなどにある人民元(オフショア人民元)は増え続けている。シンガポールでは、このオフショア人民元を使い、債券から株式、マネー・マーケット・ファンド(MMF)まで、様々な国内の中国資産に直接投資することが、この10月から可能になった。また、同じくこの10月、英国と中国はポンドと人民元の直接取引を実施することについて合意した。

というわけで、新興アジアで暮らすなら、現地の中国系銀行に人民元口座を持つことをおすすめしたい。もちろん、HSBCなどでマルチカレンシー口座を持つなら、そこに人民元を加えることは欠かせない。

中国人と付き合う最大のポイントは、「面子」

さてでは、こうしてプレゼンスを増す中国と中国人、とくに新興アジアにいる華人たちと、どう付き合っていけばいいのだろうか?

まず知るべきは、中国人が私たち日本人以上にビジネス人間だということだろう。日本国内にいると、「反日報道」しか目にしないので、中国人嫌いになるが、ビジネスで考えると中国人は信頼できるパートナーになりえる人々だ。とくに、海外に出た中国人、いわゆる華僑は、ビジネスの才に長けているので、「ウィンウィン」の関係さえ築けばよき友人としても付き合える。

中国人と付き合う最大のポイントは、「面子」(メンツ)である。たとえば、相手から食事を誘われたとき、割り勘を主張するのは、相手の礼を欠く。というのは、中国人はこれで「面子」を潰されたと思うからだ。「面子」を重んじる中国人は、人前で恥を書かされた恨みを一生忘れない。十分気をつけたい。

つまり、中国人と付き合うには、常に相手の面子を気遣う。これがもっとも大切である。
したがって、彼らと信頼関係を築くには、逆に向こうが「この人の『面子』は潰せない」と思ってくれるように仕向けることである。お互いに面子を重んじる。そういう関係をいったん築いてしまうと、中国人は、信じられないくらい協力的になってくれる。

2015年末には、ASEAN経済共同体(AEC)が誕生する。AECは、EC(欧州共同体)にならって、域内人口約6億人という巨大統一市場や統一生産基地の構築を目指すと同時に、貨物やサービス、投資などの自由な往来の促進を目的としている。この中で、私たちは中国とウィンウィンの関係を築いていくことが求められている。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2013年11月25日


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