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シンガポールが新就労ビザ「ONE Pass」を導入へ、気になる申請条件は？

シンガポール人材開発省がこのほど、優秀で高収入なグローバルエリート人材を獲得するため、新たな就労ビザ「Overseas Networks & Expertise Pass（ONE Pass、海外ネットワーク＆専門知識パス）」を導入することを発表しました。申請の受付は2023年1月1日から開始されるようです。

ONE Passの申請条件は？

ONE Passは、過去1年以内に3万Sドル（約300万円）以上の月給を得た人、またはシンガポールで3万Sドル以上の月給を得る見込みがある人が申請対象となります。また、既存の就労ビザ保有者ではない海外からの申請者については、上記の給与条件に加え、一定規模（時価総額5億米ドル、年間売上高2億米ドル）以上の海外企業における1年以上の就労実績、または同規模以上のシンガポール企業で働く予定があることを証明する必要があります。

ただ、芸術・文化やスポーツ、科学技術、学術などの特定分野で優れた業績を上げている人については、給与条件を満たしていなくても申請の資格があるとしています。

なお、具体的な申請方法については、2023年1月1日近くに発表される予定です。

ONE Passのメリットは？

ONE Passには、従来のシンガポールの就労ビザにはないメリットが、保有者側と企業側の双方にいくつか提供されます。

保有者側のメリットとしてはまず、既存の就労ビザ（EP）と比べて有効期間が長いことが挙げられます。EPだと有効期間は2～3年間（更新可）しかありませんが、ONE Passの有効期間は5年間（更新可）と優遇されています。また、シンガポール国内で複数の企業を立ち上げて経営したり、複数の企業においてプロジェクト単位で同時に働いたりすることも可能で、保有者にとってはかなり柔軟性の高い就労ビザとなっています。

さらに、転職時に新たにビザを申請する必要がないほか、ONE Pass保有者の配偶者も就労承諾書（LOC）を取得することで働くことが可能となっています。

一方、企業側にとっては、ONE Pass保有者の採用は通常のEP保有者の採用と比べて、採用フローなどを簡素化できるメリットがあります。

具体的には、シンガポールでは通常、企業は外国人を募集する前に官営求人サイト「マイキャリアズ・フューチャー」で、国民や永住権（PR）保持者向けの求人を行わなければいけませんが、ONE PASS保有者の採用にあたってはこの規制の対象外となります。また、2023年9月から導入されるEP申請者向けのポイント制度「COMPASS（コンパス）」の適用も免除されます。

なお、シンガポール経済への貢献度合いを確認するため、ONE Pass保有者は人材開発省に対し、過去1年間における全ての職業活動の詳細と全ての職業活動における収入を毎年報告する必要があります。

ONE Passに対する経済界の反応は？

ONE Passの導入計画が発表されたことを受けて、シンガポールの経済界からは歓迎の声が多く上がっています。

欧州商工会議所（シンガポール）のフェデリコ・ドナト会頭は、「デジタル技術や持続可能性などの分野で人材を集めるのに役立つ」としたうえで、「トップマネジメントが新しいパスの資格を得ると見込まれるため、より多くのグローバル企業が本社をシンガポールに置くよう誘引する可能性がある」と期待感を示しています。

また、在シンガポール米国商工会議所のレイ・シェンシェン最高経営責任者（CEO）は、ONE Passの設計上、取得者の多くはひとつの会社だけで働くのではなく、複数の企業においてプロジェクト単位で働くことが想定されるため、「1社で高い人件費の全てを負担する必要がない」ことをメリットとして挙げています。

まとめ

資源も国土もないシンガポールにとって、人材は発展のためには必要不可欠なピースであり、中でもエンジニアや科学者などテクノロジーに精通した高度人材は、長年に渡って国家戦略の軸となってきました。

一方で、フィンテック、エドテック、アグリテック、フードテック、ヘルステック、プロップテック、HRテックなど、あらゆる産業においてデジタル化が進行し、さらにはAIやブロックチェーンといった次世代技術も普及が進む中、足元で高度なハイテク人材は世界的な争奪戦となっています。

近年、ミッションに賛同した個々人が自由にプロジェクトに参加できる非中央集権型の新しい組織形態「DAO（分散型自律組織）」が注目されているように、高度ハイテク人材の間でより自由な働き方・稼ぎ方が求められつつある中、ひとつの組織に縛られる必要がないONE Passの導入は、誘致競争において優位に働く可能性がありそうです。

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投稿更新日：2022年08月31日

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