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【新興ASIAウォッチ/第133回】ベトナムを直撃した「台風ヤギ」の教訓

ハロン湾観光に行った友人が見た被害

この9月7日、ベトナム北部を台風11号(国際名「ヤギ」)が直撃し、甚大な被害をもたらした。たまたま台風一過の2週間後に、世界遺産の景勝地ハロン湾を訪れた私の友人はわが目を疑った。

「一部の観光船は運行を再開していたので乗れましたが、まだ何隻もの破損した観光船が打ち上げられたまま放置されていました。レストランもホテルも破損したままでした。聞くと、打ち上げられているのはまだいいほうで、何十隻も沈没したそうです。しかも、引き上げようにも費用が工面できず、引き上げられないとのこと。小型船でも10億ドン(580万円)かかるとか。ニュースでは知っていましたが、今回の台風の被害は本当に酷かったようです。観光客相手の商売が元に戻るには半年以上かかるだろうと、現地のツアー会社は言っていました」

ベトナム当局の発表によると、ハロン湾があるクアンニン省ハロン市では、約5万世帯が被災し、学校やホテルなどは大きなダメージを受け、観光客は約1週間足止めされた。私の友人は、以前から旅行を予約していたので気を揉んでいたが、受け入れが再開されと聞いて出かけたのだった。

ここ20年で最大級の被害をもたらす

今回の台風ヤギは、発生当初から大型化が警戒されていた。中国の海南島に接近するに連れて勢力が拡大し、中心気圧935ヘクトパスカル、中心付近の最大風速45メートルに達したため、アメリカのJTWC(米軍合同台風警報センター)は一時、もっとも強いカテゴリーの「スーパータイフーン」としていた。

台風ヤギは海南島に上陸・通過後、トンキン湾を横断してベトナム北部に再上陸、首都ハノイを含む北部一帯に、大量の雨を降らせた。その雨は台風通過後も2日間にわたって降り続いた。その結果、河川は氾濫し、大洪水が発生。もっとも被害が大きかったラオカイ省では、集落ごと大量の土砂に飲み込まれ、住民46人が死亡した。ベトナム当局の発表によると、死者は300人を超えた。

被害はベトナムだけではない。タイでは42人が死亡、隣のミャンマーでは少なくとも226人が死亡して77人が行方不明になったと報道された。この被害は、ここ20年でインドシナ地域を襲った台風のうちでも最大級のものになった。

被害額16億ドル、経済成長率を押し下げ

ハノイ周辺には、多くの日本企業が進出している。日本大使館がまとめたところによると、進出日系企業のうち169社で工場が浸水したり、停電で操業が止まったりするなどの被害があり、経済活動は一時ストップした。日系企業に限らず、韓国をはじめとする海外企業、ベトナム現地企業も、大きな被害を被った。

9月15日、ベトナム計画投資省は台風ヤギによる被害額が約16億ドル(約2,300億円)に上り、経済成長率を押し下げると発表した。今年、ベトナムは6.8〜7.0%の成長を見込んでいたが、予想より0.15%鈍化するという。

もっとも打撃を受けるのは農林水産業だが、タイグエン省やハイフォン市などの高度工業地帯に限定すると、台風の影響で成長率は0.5ポイント低下するという。

ヤギの前に日本を襲った台風10号

ベトナムを襲った台風ヤギの被災は、日本にとっては人ごとではない。日本も台風の進路にあたり、年間平均して26個発生する台風のうち、平均して約11個が日本に接近または上陸しているからだ。その台風が、今回のヤギと同じようなスーパー台風ともなれば、その被害は計りしれないものになる。

実際、台風ヤギがベトナムを直撃する1週間前、「超ノロノロ台風」と言われた台風10号は、九州に上陸した後、瀬戸内海を横断し、さらに紀伊半島を南下するなどして、各地に記録的な大雨や暴風をもたらした。

台風から離れていても影響は大きい

日本にやって来る台風の多くは、マリアナ諸島周辺の太平洋上で発生する。今年も台風10号、11号(ヤギ)以降、何個か発生し、まだ日本から遠く離れているというのに、ゲリラ豪雨、線状降水帯などで大被害をもたらした。

とくにひどかったのが、能登半島北部を襲った豪雨だ。これまでにない大量の雨が降り注ぎ、河川が氾濫。洪水により多くの住宅が浸水、倒壊して死者も出た。

9月20日過ぎまで、関東から九州までは猛暑が続き、気温35℃以上の猛暑日が続いたというのに、能登半島や北陸、東北の日本海側だけはうって変わった気候となった。これも、南方の台風、熱低の影響であり、明らかな地球温暖化による気候変動である。

海水が蒸発して雲になり熱帯低気圧に

では、今後、台風はどうなっていくのだろうか? 言われているように大型化し、スーパー台風が何個も発生するのだろうか?台風の定義は次のようになっている。

「東経180度より西の北西太平洋および南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上になったもの」
では、なぜ熱帯低気圧が発生し、台風になっていくのだろうか?

そのメカニズムは、まず、太陽の強い日差しで海面水温が上がって海水が蒸発する。そうすると、暖かく湿った空気が上昇し、この空気が上空で冷やされると、水蒸気が凝結して雲ができる。雲ができるというのは、気体が液体に変わることで、このとき、大気中に「潜熱」が放出される。この潜熱が熱帯低気圧のエネルギー源となり、やがて台風となっていく。

平年を2℃以上も上回る海水温

地球は自転している。また、上空には風が流れている。そのため、発生した熱帯低気圧の雲は渦巻き状となって、じょじょにスピードを増していく。こうして最大風速が17m/s以上になると、台風と呼ばれるようになる。台風が発生するには、海面温度26.5℃以上が必要とされる。

ここ数年、台風が発生する熱帯から亜熱帯海域の海水温は高く、日本の南海上から日本付近にかけてまで、30℃を超えている。これは平年を2℃以上も上回っている状態だ。三陸沖でも28℃以上に達しているエリアがあり、台風は勢力を強めて日本に接近することになる。

「IPCC」では3つのポイントを指摘

「IPCC」(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、第6次評価報告書で、台風に関して、世界各国の研究機関が行ったシミュレーション結果を公開している。そのポイントは以下の3点である。

(1)台風の発生数は減少する
(2)勢力の強い台風が増加する
(3)台風による平均降水量は増加する

(1)の「発生数が減る」のは意外だが、これは過去データを踏まえた予測なので、確実にそうなるとは言い切れない。ただ、報告書では今世紀末までに世界の熱帯低気圧の発生数は約2割減少し、年平均86個から69個程度になるとしている。    

温暖化の進行による海面水温の上昇は、熱帯低気圧を発生させるが、発生数を増やすのではなく、一つひとつを大型化させるというのだ。つまり、(2)の「勢力の強い台風が増加する」ことになる。これは台風に限ったことではない。カリブ海域で発生するハリケーンも、台風と同じように大型化している。

水害が起こりうる土地には住んではいけない

近年、実感するのは、本当に大雨が多くなったことだ。記録的豪雨とか線状降水帯というのが、日常の現象になった。これらには、南海上にある台風の湿った空気が関連している。また、台風自身も「雨台風」が多くなった。すなわち、報告書(3)の「台風による平均降水量は増加する」である。

寒い北国で降る雨と、暖かい南国で降る雨は、雨粒の大きさと降水量が違う。これは東南アジアのような南国を旅すればわかると思う。大気に含まれる水蒸気量は、温度が1℃上昇すると指数関数的に約7%増加するという。つまり、地球温暖化で気温が上がると、空気は多量の水蒸気を含むようになり、降水量が増加するのだ。これが、河川の氾濫や洪水、土砂崩れを招く。

いまの状況では、温暖化は止まらないばかりか、どんどん加速する。となると、私たちは毎年にように大型の台風の被害を受けることになる。もはや、東南アジア、そしてこの日本において、水害が起こりうる土地には住んではいけないのではないか。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2024年09月27日


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