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世界中で、半導体への巨額投資が続いている。日本は、政府予算から約1兆2000億円を投じて、台湾TSMCを熊本に誘致。さらに国内企業のキオクシア、日の丸半導体の復活をかける新興企業ラピダスなどに、総額で4兆円規模の公的資金が投入される。それで思うのが、ASEANで半導体産業が一番盛んなマレーシアの存在だ。
マレーシアは1970年代から、インテルを中心とした海外の半導体企業を誘致し、一時は「東洋のシリコンバレー」とまで呼ばれた。日本企業も続々と進出した。こうした流れを受けて、いま、さらに半導体産業を集積させ、東洋における半導体産業の一大拠点になろうとしているのである。
マレーシアのアンワル首相は、今年の4月22日、半導体産業強化の「新国家戦戦略」を打ち出した。250億リンギ(約8,300億円)を投じて、海外の半導体企業をさらに誘致するほか、自国の企業、人材も育てるというのだ。
この国家戦略の目玉は、クアラルンプール首都圏のセランゴール州プチョンに、ASEAN地域最大のIC(集積回路)設計のハブ(ICデザインパーク)を開設することである。構想によると、最終的には4万5,000平方フィート(約4,200㎡)の工業パークができ上がる。
そのため、マレーシア政府は進出企業や投資家には、減税や補助金、ビザ免除などの様々な優遇措置を用意するという。
半導体産業をリサーチしているシンクタンクによると、マレーシアの半導体産業は同国のGDPの約25%に貢献し、半導体の輸出に関しては、現在世界第6位にランクされている。アメリカはいま、世界における半導体覇権を確立するため、自国生産の強化とともに、世界各国から半導体と半導体関連資材を輸入している。その輸入国のトップがマレーシアで、半導体関連輸入全体の20%を占めている。
ちなみに、2位は台湾で15.1%、3位はベトナムで11.6%、4位はタイで8.7%、5位は韓国で7.5%、6位は中国で4.6%。日本は7位で3.5%である。
このように、マレーシアはアメリカを中心とする半導体サプライチェーンの中で大きなポジションを占めていて、今後、それを強化しようというのである。ただ、現在のところ、マレーシアの半導体産業は「川下」(バックエンド:後工程)が主体で、パッケージング、アセンブリー、テストなどが中心だ。
半導体産業を本当に強くしたいなら、もっとも付加価値の高い「川上」(フロントエンド:前工程)と「設計」部門の強化が重要となる。それを、前記したようにプチョンにつくるというのが、今回の構想だ。
ここで、マレーシアの半導体産業の歴史を振り返ると、その基礎を築いたのは米インテルである。インテルは、1972年にアセンブリーとテストのオフショア拠点をペナン島に開設した。その後、ペナン島の対岸に位置するクリム地区にも拠点を拡大するなど、半世紀以上にわたり、マレーシアに最大限の投資を行ってきた。これまでの累計投資額は、50億ドル以上に上るとされている。
このインテルの投資を受けて、各国の半導体関連産業がマレーシアに進出した。米AMD、日立製作所、信越化学、米HPなどで、1980年代後半にはマレーシアには20社近くの半導体関連企業が集積した。
なぜ、インテル、そして世界の半導体関連企業は、マレーシアに集まったのだろうか?
その最大の理由は、マレーシアが1972年に自由貿易区をペナンに設置したからであり、次に安い労働力が豊富にあることだった。さらに言えば、英語が通じるうえ、労働組合などの組織率が低いことだった。
こうしてマレーシアは前記したように、「東洋のシリコンバレー」と言われるようになったが、残念ながら自国の半導体産業は育たなかった。
2000年代に入り、日本の「日の丸半導体」が衰退し、入れ替わりに韓国サムスンや台湾TSMCなどが台頭すると、マレーシアの半導体産業も勢いを失った。結局、「後工程」の下請け工場という位置から脱せられなかったからだ。
それでも、インテルに続いて、独インフィニオン、米テキサス・インスツルメンツなどが拠点をつくったため、「後工程」の中心地としての地位は維持してきた。この点では、日本より上である。
そこに登場したのが、今回のIC設計のハブをプチョンに開設するという構想である。
はたして、この構想は成功するのだろうか?
この構想を含めて、マレーシアの半導体産業は、さらに発展するのだろうか?
時価総額でグーグルやアマゾンを超え、ついに世界一のハイテクジャイアントとなった米NVIDIAは、マレーシアへの投資を決めている。昨年暮れ、ジェンスン・フアンCEOがマレーシアを訪れ、同国の最大手の複合企業YTLとの提携を決めた。その投資額は43億ドルと報じられた。
YTLは、電気、ガス、水道のほか、鉄道、セメント、建設、不動産、ホテルからITインフラなども手がける大企業で、NVIDIAはYTL傘下のYTL Powerと提携して、スーパーコンピュータを構築するほか、マレーシア語に特化した大規模言語モデル(LLM)の生成AIを開発するという。
ちなみに、YTLは北海道ニセコでのリゾート開発事業を手がけており、東京証券取引所にも上場している。日本ともっとも関係が深いマレーシア企業である。
NVIDIAの進出も追い風だが、IC設計ハブ構想の目玉となるのが、英アームの進出である。アームはすでに、プチョンに拠点を開設することを決めている。アームはソフトバンクグループの子会社だが、スマホ用の半導体設計における世界シェアに関しては90%を超えており、まさに、半導体IC設計ハブ構想にもっともふさわしい企業と言えるだろう。
アーム以外にも、台湾ファイソン・マレーシア(群聯電子:世界初のシングルチップUSBフラッシュドライブ発明者のマレーシア人のプア・ケンセンが2000年に台湾で共同設立した世界最大の独立系NANDフラッシュ・コントローラメーカー)、スカイチップ(AIとコンピューティング向けの最先端のIPを提供する現地企業)、中国・深セン半導体産業協会の3組織の進出が決まっている。
プチョンの半導体IC設計拠点と、後工程が集積したペナン。これで、マレーシアは2つの半導体拠点を持つことになる。プチョンが成功すれば、半導体サプライチェーンの上流と下流を持つことになり、マレーシアの半導体産業は飛躍的に発展する可能性がある。
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※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2024年07月26日
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