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【新興ASIAウォッチ/第98回】ますます中国植民地化するカンボジアのいま

ワクチン接種率が高いのに感染者は減らない

カンボジアの新型コロナウイルス感染者数は、9月末現在で高止まりしている。人口約1,630万人の国で毎日700〜800人の感染者が確認されている。これは相当深刻な状況だ。ところが、カンボジアはASEAN諸国ではシンガポールに次いでワクチン接種率が高い。首都プノンペンでは、すでに1回目の接種率が9割を超え、全土でも8割に達している。それなのに感染者数は減らない。一体どうなっているのだろうか?

その理由は、ワクチンが中国製だからと言われている。たしかに、カンボジアではこれまで中国の2大ワクチン、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製と中国医薬集団(シノファーム)製のワクチンによって、接種が行われてきた。WHOが主導する「COVAX」(ワクチン供給システム)によって、英アストラゼネカ製も入ってきているが、その数はわずかだ。

中国製ワクチンは、あまり効かない。これは、いまや世界で定説になっている。実際、カンボジアの例を見るとそう思うほかない。そのため、在住日本人の中には中国製ワクチンを嫌い、ファイザーかモデルナを打ちたいと帰国した人間もいる。しかし、カンボジア国民はワクチンを選べない。中国製を頼るほかないのだ。

中国の全面援助によるスタジアムの完成

いまや、カンボジアは中国の完全な植民地である。国民生活のほとんどが、中国依存となっている。それを象徴するセレモニーが、9月12日にプノンペンで催された。国立スタジアムの完成お披露目式典である。ここに登場したフン・セン首相は、訪問中の中国の王毅国務委員兼外交部長(外相)と固く握手し、中国に謝意を述べた。

この新スタジアムは、中国の全面支援によって建設された。王毅外相は、こう挨拶した。
「中国の支援したカンボジアのスタジアムは、これまでの対外援助のなかで最大規模、最高グレードのスタジアムであり、中国とカンボジアの友好と協力を如実に反映しており、両国の親善を象徴する新たな重要なランドマークになるだろう」

このスタジアムは、2023年の第32回東南アジア競技大会のメイン会場として使用される。船をイメージしてデザインされた「舳先」の形状は、胸の前で手のひらを合わせて行うカンボジアの伝統的な挨拶「サンピア」を象徴しているという。5階建てのスタジアムの周囲には、カンボジアの象徴アンコールワットをかたどった噴水を備えた広い堀が設けられている。

プノンペン、シュリムアップは中国の一都市

首都プノンペン、アンコールワットの玄関都市シュリムアップに行った人なら目の当たりにしていると思うが、この2都市には、中国語の看板が溢れ、まるで中国のどこかの街にいる錯覚に見舞われる。それもそのはず、ビルから商業施設、住宅まで、ほとんどが中国によって造られたからだ。

例えば、プノンペンにはメコン川とトンレサップ川が合流するところに、“ダイアモンド・アイランド”と呼ばれる地区がある。ここは完全に中国の街で、高層マンションや商業施設、ホテル、高級住宅まで、すべて中国資本によって造られた。しかも街の中心には、中国人が大好きなパリの凱旋門を模したオブジェまである。

シュムリアップも同じだ。コロナ禍が起こる前までに、いつの間にか観光客は中国人だらけになり、どこのホテルでも中国語が飛び交うようになった。ロビーには簡体字の看板を出したツアーデスクができ、街には中華レストランが激増した。コロナ禍の前まで、シェムリアップを訪れた観光客は、年間で約500万人。そのうち、およそ200万人が海外からの観光客で、その半分の100万人が中国人だった。

海外投資のなんと9割が中国から

カンボジアへの海外からの直接投資を見ると、ほとんどが中国からである。2019年の統計を見ると、中国が37億1,800万ドルで全体の78.2%でダントツの1位。第2位は英領バージン諸島だが、これはタックスヘイブン経由の中国企業による迂回投資なので、これを合わせると全体の約9割が中国となる。いまや、カンボジアは、中国なしでは国が成り立たないのだ。

ちなみに、国別の第3位は日本だが、その額は中国の10分の1にも満たない。しかも、コロナ禍になってからは、投資は激減している。

やや古い統計だが、IMFのレポートによれば、2018年末時点でカンボジアの対外公的債務のうち約半分を、中国のインフラプロジェクトに対する借款が占めている。
その主なものを、以下、列記してみる。

空港、道路…インフラは中国がつくる

■シェムリアップ新国際空港の整備
約900万ドル規模が投資され、シェムリアップ新国際空港が一新される。完成は2022年。現在使用されているシェムリアップ国際空港はフランスのVINCIグループとの独占契約により運営されているが、新空港は中国が運営する。

■コッコン州ダラサコール国際空港
すでにダラサコール国際空港はほぼ完成している。この空港建設は、中国のユニオン開発集団が開発した巨大リゾート施設と一体化した事業。360km²という広大な敷地に、クルーズハーバー、ゴルフコース、カジノなどが建設される。

■プノンペン新国際空港
中国のMGCが受注して、現在建設中。完成は2023年。完成すれば、現在のプノンペン空港にとって代わる。

■国道3号線改修工事
プノンペン市とカンポット州をつなぐ国道。すでにほぼ完成している。中国企業が建設のすべてを請け負った。

■プノンペン・シアヌークビル高速道路プロジェクト
プノンペンと海浜リゾート都市シアヌークビルをつなぐカンボジア初の高速道路。中国開発銀行の資金援助により、日本円にして2,000億円以上が投じられ、2022年前半の完成を目指している。

海外からの投資のほとんどが縫製業

このように、カンボジアのインフラは、いまやほとんどを中国企業が請け負っている。ただし、中国からの投資はこうした建設業がメインではなく、縫製業に集中している。

カンボジア開発評議会(CDC)の投資案件データによると、中国からの投資の大半が縫製業である。カンボジアの縫製業メンバー643社(2021年3月時点)のうち323社が中国系、53社が香港系、82社が台湾系、25社が日系となっている。

例えば、日本の衣料品店で売られているTシャツやジーンズなどのタグを見ると、最近は「メイド・イン・カンボジア」が多いことに気がつかないだろうか。じつは、ユニクロのジーンズは多くがカンボジアでつくられている。

政府高官へのキックバックは日常化

一体なぜ、カンボジアはここまで中国化してしまったのだろうか? それは、カンボジアの独裁政権が30年も続いたからだ。フン・セン首相は、徹底的に政敵を弾圧し、権力の座を守ってきた。カンボジアの政権は中国の共産党独裁政権とほぼ同じだから、相性がいいのだろう。

カンボジアは、昔から賄賂とキックバックの国である。政府がらみのビジネスは、ほとんどそれで成り立っている。フン・セン政権の官僚たちは、多くが中国とのプロジェクトでカネを手にしてきた。

地区開発、道路建設などのインフラ建設で、たとえば100億円のプロジェクトが中国との間で決まると、中国サイドは100億円を借款としてカンボジアに与える。このうち、3分の1は、政府高官のフトコロに入るといった具合だ。フン・セン以下のプノンペンの高官たちは、国家に借金をさせて、その間を抜いているのである。北京はそれを百も承知でカネを出している。

こうしてできたのが、シアヌークビル経済特区である。ここは、中国にとっては「一帯一路」構想のモデル地区であり、あらゆるビジネスが中国企業によって行われている。ホテル、マンションなどの建設からカジノ運営まで、中国企業が独占している。いまや人口の3割が中国になっている。

デジタル・通信分野でも進む中国支配

デジタル・通信分野でも、中国企業のカンボジア進出が加速している。デジタルを他国に抑えられたら、いまの国家は独立を失う。しかし、カンボジア政府高官は、そんなことは気にも留めないようだ。

欧米で排除されたファーウエイ は、カンボジアでは健在である。カンボジアの5Gは、すべてファーウエイが提供している。カンボジアでは2023年までに、ファーウエイが全国3000カ所に5Gの基地局を設置することになっている。

また、キャッシュレス決済の分野でも、カンボジアは中国のアリペイに頼っている。中国アリペイは、カンボジアの有力な電子マネー決済プラットフォームの運営企業パイペイとダラペイと提携している。

この8月、カンボジア政府は、インターネット規制の強化に乗り出した。中国のネット検閲に近い仕組みを導入し、今後、ネット情報はすべて政府が指名した運営会社を通すことが義務付けられた。つまり、秩序や安全に悪影響を及ぼす恐れがあるとされれば、ただちに遮断、運営者は逮捕されることになった。これではもう、カンボジアなど行っていられない。アンコールワット観光もできなくなる。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2021年09月30日


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