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トランプ関税によって、世界経済が混乱している。中でも、ASEAN各国は対米輸出依存度が高いだけに、かなりのダメージを受ける。自動車を狙い撃ちにされ、5,500億ドル(約80兆円)という巨額の対米投資を押し付けられた日本以上に深刻だという見方もある。
ただし、そのダメージはまだはっきりしない。トランプ関税は4月から8月にかけて段階的に発動されたので、影響が顕在化するのはこれからだからだ。しかも、トランプは「TACO」(Trump Always Chickens Out:トランプはいつもビビってやめる)だけに、今後どうなるかもわからない。
それでも、8月時点で課せられた関税を整理し、現時点で影響がもっとも懸念されるベトナムについて、ASEANの代表国として見ていきたいと思う。ベトナム経済はこれまで絶好調。2024年のGDPは約4,800億ドル(約72兆円)で、ASEAN1位のタイ(約5,300億ドル/約80兆円)、2位のシンガポール(約5,500億ドル/約83兆円)に迫る勢いで成長を遂げてきた。それが、トランプ関税でどうなるのかだ。
以下は、8月にトランプ政権が実行に移した関税率である。( )内は4月〜7月にかけて公表した関税率。
【ASEAN】
シンガポール10%(据え置き)
マレーシア19%(24%から引き下げ)
タイ19%(17%→36%から引き下げ)
インドネシア19%(32%から引き下げ)
フィリピン19%(32%から引き下げ)
ベトナム20%(46%から引き下げ)
ラオス40%(48%から引き下げ)
ミャンマー40%(44%から引き下げ)
カンボジア19%(49%→36%から引き下げ)
【南アジア】
インド25%(据え置き)+(追加関税25%)
スリランカ20%(44%から引き下げ)
バングラデシュ20%(37%から引き下げ)
この一覧から言えるのは、トランプ関税が結構いい加減だということだろう。ASEAN諸国は軒並み19%か20%に揃えられているが、19%と20%の1%の違いにはほとんど根拠がない。また、中国の属国と化しているラオスと軍政支配のミャンマーには、制裁として突出して高い40%が課せれた。
なお、この一覧に南アジアを加えたのは、スリランカとバングラデッシュの経済がASEANに近いこと。インドもASEANとは深く結びついているが、ロシアからの原油輸入に対する制裁関税として25%が上乗せされたことを確認しておくためだ。
では、今回のトランプ関税の狙いについて見ていこう。それは、本人も言っているように、アメリカに失われた製造業を復活させること。そして、アメリカの貿易赤字を減らすことだ。
関税でそれができるとしていていることに、トランプという“化石アタマ”で“ファシスト”大統領の愚かさがあるが、それはともかくとして、メインターゲットは「世界の工場」中国であるのは言うまでもない。
すでに「トランプ1.0」で、トランプは中国の幅広い品目に関税を課した。その税率は7.5~25%。今回の「トランプ2.0」では、これに30%が加わった。当初、100%以上の報復合戦となったが、現時点ではこれで進行している。
いずれにせよ、米中(貿易)戦争はヒートアップしているわけで、この影響を最も受けるのがASEANである。というのは、「トランプ1.0」を受けて、多くの企業が中国からASEANに生産拠点・調達先をシフトする「チャイナプラスワン」が起こり、これを追い風にASEAN諸国は大いに発展したからだ。
ところが今回、「トランプ2.0」では、トランプは「漁夫の利」を受けたASEANも叩きに出た。それが、軒並み約20%という高関税である。さらに、トランプ政権は中国からの「迂回輸出」にも20%の関税を上乗せするという措置を取った。「チャイナプラスワン」からの輸出も潰したうえ、中国からの「迂回輸出」も潰してしまおうというのだ。
言うまでもないが、「チャイナプラスワン」の恩恵を最も受けてきたのが、ベトナムである。輸出依存経済で大発展し、その黒字の多くを対米輸出で稼ぎ出してきた。
ベトナムの対米輸出依存度は、2024年時点で輸出額の約30%に達し、これはベトナムのGDPの約30%に相当する。その結果、アメリカから見たベトナムは貿易赤字国の第3位に位置するまでになった。
2024年のアメリカの対ベトナム貿易赤字は1,235億ドル(約18兆5,000億円)に達し、2023年比で18.1%増加、国別では第1位の中国の2,954億ドル、第2位のメキシコ1,718億ドルに次ぐ。ちなみに、日本は685億ドル(約10兆2,000億円)で第7位である。
このような背景から、トランプはベトナムを東南アジアでの最大のターゲットとして、4月に相互関税を発表した時点では46%を課すとした。いくらなんでも、こんな高関税ではベトナム経済は立ち行かない。そこで、トー・ラム書記長は即座にトランプに泣きを入れ、関税引き下げのためにあらゆる懇願をした。
まず、アメリカからの輸入品への関税をゼロにすること。そして、できうる限りアメリカ製品を買うことを提案した。ボーイングの旅客機やLNG、さらには農産物に至るまで、アメリカ製品ならなんでもに買うとトランプに提案したのである。また、トランプの一族企業「トランプ・オーガニゼーション」に、首都ハノイに隣接するフンイエン省で手がける開発プロジェクトの利権を渡した。
その結果、6月末になってトランプ政権から各国に関税率を明記した書簡が届く中、ベトナムには届かなかった。そして7月2日、トランプはベトナムと関税を20%にすることで合意したと、世界各国に向けて発表した。トランプはベトナムと合意できたことを自画自賛し、ベトナム政府は合意を大成果だと発表した。国際社会も、ベトナム政府の交渉結果を評価した。
しかし、本当にそうだろうか? 20%はけっして低い税率ではない。どう見ても、ベトナムのダメージは大きい。
ここ数年、「チャイナプラスワン」の波に乗って、日本企業も数多くベトナムに進出した。ベトナム市場調査会社の「B&Company」によると、ベトナムに進出した日系企業数は年々増え続け、2023年には約3,250社に達している。
進出企業の中心は製造業で、業種としてはクルマ、バイク、家電、電子部品など。企業名を書くと、トヨタ、ホンダ、パナソニック、シャープ、キャノン、三菱電機など名だたる大企業である。もちろん、イオン、ファミリーマート、ユニクロ、良品計画などの小売業、サービスなども進出している。
アメリカ企業もまた「チャイナプラスワン」に積極的だった。アップル、インテル、コカコーラ、ナイキ、アマゾン、ベル・テキストロンなどが次々とベトナムに工場、拠点を築いてきた。中でも、アップルはiPhoneの製造拠点を中国からベトナムとインドへと、大きくシフトさせた。
このような状況を見れば、トランプ関税はアメリカにとっても返り血を浴びるものであり、もちろん、日本にとっても最悪のものである。とはいえ、その自体は前記したようにまだやって来ていない。
ベトナムの直近(4~6月期)のGDPは前年同期比7.96%増。四半期の成長率としては、新型コロナウイルス禍の反動があった2022年7~9月期(13.71%増)以来の記録的な高さとなった。これは、トランプ関税の発動を前にした「駆け込み」輸出がもたらした結果だ。
ベトナムと同じく、タイも4~6月期のGDPは、物価変動を除いた実質で前年同期比2.8%増を記録した。1~3月期の3.2%増からはやや減速したが、2024年4~6月期の伸び率の2.3%を上回った。シンガポールもまた、4~6月期のGDPは4.4%増を記録した。
このような「駆け込み」が起こるのは、トランプ関税が悪影響をもたらすと誰もが予測したからである。トランプ関税の本格発動前に私が取材したエコノミストたちは、みな同じ予測をした。
というわけで、トランプ関税発動直後のホーチミンを訪れてみると、予想とは違って活気に溢れていた。最大の繁華街ドンコイ通りは賑わい、日本人街のレタントン通りの飲食店も、人でいっぱいだった。
それもそのはず、今年、2025年はベトナム戦争が終結して50周年となる節目の年のため、ホーチミン市内ではさまざまな記念行事が行われてきたからだ。レタントン通りの日本食店のあるオーナーは、「コロナ禍のときは本当にひどかった。閑古鳥が鳴くとはまさにあのことで、閉店する店が続出した。しかし、今年はもうコロナ禍前と変わらないね」と言ったが、「ただ、これからは、トランプのおかげで景気が悪くなるってみな言っている。心配だ」と続けた。
ベトナム進出の日系企業を取材すると、すでに生産調整に入ったところもあった。また、アメリカ向けの輸出を欧州などの他地域に振り返る動きも活発化している。「問題は、中国製品を念頭に置いた迂回輸出がどうなるかでは。はたして、それをどの程度見極められるのか、それで今後は決まると思います。いずれにせよ、20%は相当きつい」と、幹部たちは口を揃えた。
ホーチミンは、バイクの街である。街中にバイクが溢れ、四六時中渋滞している。バイクの群れの中を巧みに動かなければどこにも行けない。バイクの溢れる光景が、そのまま景気を反映している。はたして、トランプ関税はバイクの群れをどこに追いやるのだろうか?
新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2025年09月29日
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