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どこからどう見ても完全に間違っている「トランプ関税」が、世界経済を直撃している。ちょっとでも気に入らないと「関税を課す」と言う自称“タリフマン”(関税男)トランプは、同盟国も敵対国も見境がない。アメリカに貿易赤字をもたらす国はすべて、関税によって叩こうというのだ。
すでに、中国に対しては10%を20%に引き上げ、全世界に対してアルミ・鉄鋼関税25%を発動。さらに3月26日には、4月3日から自動車関税を25%に引き上げると発表した。それだけではない、4月2日には相互関税を発表する予定になっている。
相互関税は当初、貿易相手国の関税と同率を課すものとされたが、非関税障壁も考慮するとなったので、課せれた国は大きなダメージを受ける。トランプは「4月2日はわが国にとって『解放の日』になる」と、自画自賛して酔いしれているが、トランプ関税がすべて実施されたら、世界中が大不況になるのは確実だ。
では、トランプ関税がアジアの国々、特にASEAN諸国にどんなダメージを与えるのかを考察してみたい。
まず、投資するという観点から言うと、当分は見送りだろう。すでに、ベトナムでは、鉄鋼・アルミ関税が実施さる前から、鉄鋼最大手ホアファット・グループなどの関連銘柄が軒並み売られて、株式市場は下落している。
ベトナム当局によれば、ベトナムの鉄鋼・鉄鋼製品の2024年の対米輸出額は、前年比32%増の26億5,000万ドル(約4,000億円)。アメリカ側から見ると、ベトナムからの鉄鋼輸入は、カナダ、ブラジル メキシコ、韓国に次いで5番目の規模となっている。
鉄鋼・アルミ関税でこれだから、相互関税が導入されれば、対米輸出に頼るベトナムの全産業が大きなダメージを被る。もちろん、ベトナムだけではない。トランプ関税は、輸出で対米黒字を稼ぐASEAN諸国を直撃する。
ロイター、ブルームバーグ、CNNアジアなどの報道を総合すると、ベトナムを筆頭に、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポールは、大きなダメージを被る。これらの国々は、輸出低迷に耐えられるほど国内需要が強くないからだ。
これまでASEAN諸国は、海外からの投資で国内産業を充実させ、生産した製品を輸出することで、経済発展を遂げてきた。その輸出先は、アメリカ、中国、EU、日本が中心で、これらの輸出先の消費が低迷すれば、そのバックラッシュを受けることになる。
特に、アメリカはASEAN10ヵ国の全輸出の約20%を占めているので、そのダメージは大きすぎる。中国も約20%を占めているが、こちらも景気が低迷中だから、どう転んでもASEANの経済は急ブレーキがかかる。
アメリカ商務省が2月5日に発表した2024年の貿易統計によると、モノの輸出額から輸入額を差し引いた貿易赤字額は、前年比14.0%増の1兆2,117億ドル(約185兆円)で過去最大だ。トランプはこれを関税によって減らそうというのだ。
次が、アメリカの貿易赤字国(US Trade Deficit by Country 2024)の順位である。
1位:中国 2704億ドル
2位:メキシコ 1572億ドル
3位:ベトナム 1131億ドル
4位:アイルランド 805億ドル
5位:ドイツ 764億ドル
6位:台湾 674億ドル
7位:日本 626億ドル
8位:韓国 602億ドル
9位:カナダ 548億ドル
10位:タイ 415億ドル
なんとトップ10に、ASEANからベトナムとタイの2ヵ国が入り、ベトナムは3位で、7位のわが国の約2倍の貿易黒字を稼いでいる。
トランプの“忠臣” である財務長官のスコット・ベッセントは、アメリカの貿易赤字国の15ヵ国を「ダーティー15」と呼んでいることを、3月18日のFOXニュースのインタビューで明らかにし、これらの国々に個別の相互関税を課すと語った。
当然だが、トップ10に入ったベトナムとタイは「ダーティー15」であり、相互関税のターゲットだ。
ベトナム、タイだけではない、マレーシア、フィリピン、インドネシアも対米黒字を稼いでいる。よって、ベトナム、タイと同じようにターゲットにされるのは確実だ。
これまでASEAN各国は、ワシントンに例外扱いか、あるいは関税率を緩和することを懇願してきた。しかし、その願いを、“オレ様”大統領トランプが聞き入れる可能性はないだろう。すでに、懇願外交をしてきた日本も、見事に切られている。
例えばベトナムは、これまでワシントンに対して、LNG、農産物、先端技術製品などの主要品目に対する関税引き下げを積極的に行うと提案した。また、アメリカ大企業に対して優遇措置を取り、積極的に進出を受け入れることも提案した。
タイもベトナムと同じような施策を持って、トランプ政権の通商担当者と交渉を持ってきた。しかし、トランプ政権の閣僚はボスの意向に全て従う“忠犬”ばかりで、打開策は見い出せていない。
これまでベトナム、タイ、マレーシアなどの経済成長を底上げしてきたのは、米中の対立、貿易摩擦である。トランプは第一次政権で、中国製品に高関税を課した。それによって、“世界の工場”中国から多くの工場、産業がASEANに移転した。
アメリカ企業も日本企業も、そして中国企業でさえも、このトレンドに乗った。いわゆる「チャイナ+(プラス)ワン」である。その受け皿にもっともなったのが、ベトナムだった。タイもマレーシアもその恩恵を受けた。しかし、今回の全世界を相手したトランプ関税により「チャイナ+ワン」は消滅する。
タイ財務省財政政策局(FPO)は、トランプ関税による経済見通しを発表した。それによると、コンピュータ関連などの電子機器やゴム製品、農業分野においてタイ製品の対米輸出は大幅に後退する。
それに加えて、高関税でアメリカ市場を追われた中国製品が大量に流入し、自動車、化学、建設資材、繊維などの分野で、タイ製品の競争力が大きく損なわれるとしている。
トランプ関税は、どの国も利さない。トランプは、それによりアメリカの製造業、とくに自動車産業が復活し、アメリカは再び偉大になる(MAGA)と思っているが、それは“妄想”に過ぎない。
3月17日、OECDが世界経済のアウトルックを公表した。それによると、今年の世界全体の経済成長率は3.1%と、昨年12月時点の予測に比べて、0.2ポイント下振れしている。この先、さらに下振れするのは間違いない。
日本のJETRO(日本貿易振興機構)のアジア経済研究所も、トランプ関税がアジア経済に与える影響を3段階に分けてシミュレートして公表した。そのいずれの段階でも、ASEAN各国の経済は減速する。
トランプの任期は4年。ただ、1年半余り後の中間選挙で惨敗すれば、レイムダック化する可能性が高い。よって、ここは、トランプ以後にASEANがどうなるかを見据えて、いまは投資は控えることが正解だろう。
新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2025年04月01日
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