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ホルムズ海峡閉鎖、イラン戦争長期化で、再エネが注目されている。再エネと言えば、原子力、水力を除けば、太陽光、風力、地熱となるが、その中で一般の注目度が低いのが地熱である。
地熱発電は、地下深層のマグマの熱によって温められた熱水や蒸気を取り出し、その力でタービンを回して発電するシステム。うまく取り出して稼働させれば、天候に左右されず、24時間365日安定して稼働できる「ベースロード電源」となる。
それなのに、現在のところ、世界全体の総発電量のわずか0.3%にしか達していない。火山国で資源が豊富なはずの日本も、同じく0.3%である。
ところが、インドネシアの地熱発電は総発量の約5%を占め、世界の地熱発電量のランキングにおいては、なんと第2位。インドネシアは、知られざる地熱発電大国なのである。
次は、「地熱発電設備容量のランキング」(2024−2026年時点)のトップ10である。
(1)アメリカ(2)インドネシア(3)フィリピン(4)トルコ(5)ニュージーランド(6)ケニア(7)メキシコ(8)イタリア(9)アイスランド(10)日本
日本が10位なのは、世界第3位の地熱資源量があるものの、開発がなかなか進まず、現在稼働中の発電量が約52万kWに留まっているからだ。
これに対して、第1位のアメリカは、約380万kWの発電量を誇る。ただし、そのほとんどはカリフォルニア州にある世界最大規模の地熱資源量とされる「ザ・ガイザーズ」(The Geysers)に集中している。
第2位のインドネシアは、地熱資源に恵まれたのを最大限に利用して、これまで積極的に地熱発電開発を進めてきた。現在、地熱発電量は230万kWとされ、日本の4倍以上である。
インドネシアが世界第2位の地熱発電大国内なったのには、いくつかの理由がある。まずは、なんといっても地熱発電資源に恵まれていること。これが一番大きい。
インドネシアは、火山が多い。国土の大部分が環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイア:Ring of Fire)に属しており、島々の多くは火山島である。そのため、地熱エネルギーの潜在能力は、世界埋蔵量の約40%にあたる約2400〜2800万kWと推定されている。
しかし、資源に恵まれていることとそれを使うことは別問題。インドネシアの場合、使わざるを得ない、地熱発電を開発しなければならなくなった事情がある。それは、産油国にも関わらず、石油輸入国に転じたことだ。
これまで、インドネシアは電力供給の大部分を化石燃料に依存してきた。石炭が約40%、石油が約30%と、化石燃料だけで約70%を占めてきた。ところが、約30%を占める石油を自国でまかなえなくなったのである。
インドネシアはかつてはOPECの加盟国で、主要な石油輸出国のひとつだった。ところが、国内需要の増大と油田の老朽化により、2004年以降、石油の純輸入国に転じてしまった。そんな中、地球温暖化対策としての脱化石燃料(脱炭素)が世界的な課題となった。
こうなると、エネルギー政策の大転換を図らざるを得ない。再エネへの積極転換である。こうして、資源豊富な地熱に目が行き、地熱発電への大規模な投資・開発が進んだのである。
インドネシアの電力事業は、国営電力会社(PLN)が発電・送電・配電を垂直統合して独占している。しかし、国だけでは巨額なインフラ投資が困難なため、民間資本(IPP:Independent Power Producer:独立系発電事業者)が導入され、これまで開発が行われてきた。
官民一体型のIPPには、日本企業が深く関わっている。インドネシアの地熱発電において、日本企業は大きな役割を果たしている。以下が、インドネシアの地熱発電に関わっている主な日本企業である。
【住友商事&NPEX(国際石油開発帝石)】両社共同で西スマトラ州の「ムアララボ地熱発電プロジェクト」に参画。発電所は2019年から稼働。
【九州電力】スマトラ島のサルーラ地熱発電プロジェクトに参画。世界最大級の地熱発電所の建設と稼働に協力。
【富士電機】地熱用タービン・発電機で世界トップクラスのシェアを誇り、インドネシア各地の発電所に主要機器を納入。
【東芝エネルギーシステムズ】地熱発電用タービンを供給。
インドネシアが地熱発電大国になる中で、注目されていることがある。それは、地熱発電の技術開発が進み、地熱発電が今後の再エネの切り札になる可能性が高まってきたことだ。
地熱発電には、「資源が枯渇しない」「二酸化炭素を排出しない」「天候に左右されない」「365日24時間発電することができる」という大きなメリットがある。にもかかわらず、開発が進展しなかったのは、コストがかかったうえ、不確実性が高かったからだ。
専門家に聞くと、「発電可能かどうかを確かめるには、調査用の井戸を掘らなければなりません。これに3億〜5億円かかる。そして、数本掘ったとしても、蒸気や熱水を十分に得られず失敗することが多いのです」という答え。しかし、これが劇的に改善される技術が生まれ、すでに稼働しているものもある。
地熱発電の新技術として注目されるのは、次の3つだ。
(1)クローズドループ(CLGS:Closed-Loop Geothermal)
地下深くにパイプを通し、そこに水を流して地熱を利用して蒸気化。その蒸気によって地上にある発電所のタービンを回す。蒸気は再び水となって地下に行き、循環するというシステム。これまでの地熱発電は火山地帯など場所が限られていたが、このシステムだと世界どこでも掘削さえできれば発電が可能に。
(2)超臨界地熱発電
地下5,000メートル以深の「摂氏500度・気圧140倍」という超臨界状態の熱水を利用する次世代発電システム。原子力発電所1基分に匹敵する電力を生み出す「脱炭素の切り札」として注目され、現在、官民協議会のもと、2030年に向けた技術の実証と資源化が進められている。
(3)次世代型地熱増産システム(EGS:Enhanced Geothermal Systems)
地下深く掘った井戸に水と化学物質を高圧で注入し、深層にある高温岩体に切れ目をつくり、そこから出た蒸気を発電に使うシステム。シェールガスの採掘システムの応用で、すでにアメリカでは一部稼働している。
どうだろうか? 以上のどれも、これまでのように火山、温泉地帯である必要はなく、世界どこでも可能だ。技術が完成し、コスト問題が解決すれば、もう化石燃料はいらなくなる。インドネシアと日本が切り開く、地熱発電の未来に期待したい。
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※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2026年05月26日
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