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【新興ASIAウォッチ/第155回】ベトナムがついに「高中所得国」に!経済成長は続くのか?

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【新興ASIAウォッチ/第155回】ベトナムがついに「高中所得国」に!経済成長は続くのか?

どんどん変わる街の風景と巨大工業団地

ベトナムは日に日に変わっている。経済発展の証だ。たとえば、昨年2月に誕生したホーチミンの「Canal of Love」(愛の運河)と、その中心に架かる「Moonlight Bridge」(ムーンライトブリッジ)。ライトアップされた幻想的な熱帯の夜は、訪れた人々を別世界に誘う。若者たちの絶好のデートスポットにもなっていて、人通りが絶えない。

ハノイに行けば、そこはもうかつてのハノイと違って、高層ビルが林立するスマートシティ。AONハノイランドマークタワーは、高さ345mを誇り、最上階の展望台に行けばハノイ市内を一望できる。

そしてハノイから北のバクニン省、タイグエン省に行けば、そこには、いまのベトナム経済を支える大規模な工業団地がある。サムスンなどの巨大工場が立ち並び、ベトナムが「世界の電子機器ハブ」になったことを実感する。

1人当たりGNI4970ドルで「高中所得国」入り

世界銀行(WB)は2026年7月1日付で、2025年に1人当たりの国民総所得(GNI)が4,970ドルに達したベトナムを「低中所得国」(lower-middle income)から「高中所得国」(upper-middle income)に引き上げた。

これは非常に大きな出来事で、もはやベトナムは途上国ではなく、今後は東南アジアではタイ(7,690ドル)と並ぶような存在になったことを示している。

世界銀行の4段階の所得の位置付けは次のようになっている。

「低所得国」(low income):1人当たりのGNIが1,145ドル以下
「低中所得国」(lower-middle income):1,146〜4,515ドル
「高中所得国」(upper-middle income):4,516〜1万4,005ドル
「高所得国」(high income):1万4,375ドル超

ちなみに日本は、1人当たりのGNIが3万9,030ドルで高所得国。東南アジア一の高所得国シンガポールは7万4,750ドルである。

活況を呈するベトナム株式市場(VN指数)

2000年にベトナム証券取引所が開設されたとき、取引銘柄はたった2つしかなかった。その後、上場銘柄が増えるにしたがって取引は拡大し、2007年にベトナムがWTOに加盟すると、日本人の個人投資家がこぞってホーチミンを訪れて口座を開設するというベトナム株ブームが起こった。

それから約20年。ベトナム証券取引所の時価総額は約3,900億ドル(約63兆8,000億円)となり、ASEAN域内ではインドネシア、シンガポール、タイ、マレーシアに次ぐ5番目の規模まで成長した。

経済成長を背景に、いま、ベトナム株は活況を呈している。2026年5月には、VN指数が史上最高値の1936.55ポイントを記録。その後、利益確定売りや海外投資家の売り越しで下げたが、高値圏で推移している。

「FTSE格上げ」でさらに期待される株価

日本の個人投資家で、ベトナム株に投資している人間は結構多い。彼らは、ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場するベトナムの優良企業株に投資している。

たとえば、銀行大手のベトコムバンク、不動産のビンホームズ、乳業最大手のビナミルク、通信大手のベトテル、そして、ベトナム随一のコングロマリットのビングループなど。

投資家の1人は、こう言う。
「まだまだ、ベトナムは伸びますよ。日本の高度成長時代を見ているようです。今年の9月には、FTSE格上げがあるので、さらに海外からの投資資金が流れ込むはずです」

「FTSE格上げ」とは、「FTSE新興市場指数」(FTSE Emerging Markets Index)のカテゴリーが引き上げられること。「FTSE新興市場指数」は新興国市場全体の動きを示す代表的な株価指数で、中国、インド、台湾、ブラジルなどの大型・中型株を広く網羅している。

ベトナムは、これまで「フロンティア市場」(Frontier Market)だったが、9月から「セカンダリー新興国市場」(Secondary Emerging Market)に格上げされる。そうなると、インデックス連動型ファンドなどからの自動的な資金流入が発生する。

ベトナムを待ち受ける「中所得国の罠」

いまさら、ベトナム経済の成長の経緯を述べる必要はないと思う。21世紀に入ってからのベトナムの発展は、ほぼノンストップである。ただ、懸念されることがひとつある。「中所得国の罠」(Middle Income Trap)だ。

これは、途上国が経済成長で中程度の所得水準に達した後、産業や社会の仕組みを切り替えられず、成長が止まって先進国になれなくなる現象を言う。

世界銀行の「世界開発報告書」(2024年版)によると、世界に「中所得国の罠」に陥っている国は108ヵ国あるという。主な国としては、ブラジル、トルコ、インド、中国などがあり、東南アジアでは、タイ、マレーシアなどが挙げられている。

いくらなんでも人口規模が大きく、豊富な富裕層が存在する経済大国のインドや中国が入るのはおかしいが、統計は国全体の平均値なので仕方がない。

ただ、ここ数十年の間に、中所得国から高所得国に成長した国はそう多くない。サウジアラビア、ラトビア、韓国、台湾、シンガポールなどが挙げられるぐらいだ。はたして、ベトナムが「中所得国の罠」を克服できるであろうか。

「人口ボーナス」で「中所得国の罠」を克服

「高所得国」になるためには、いくつかのハードルを越えなければならない。ベトナムの場合、現在の「チャイナプラスワン」を活かした組み立て加工型の製造業から脱却し、自分で設計・開発する型の高付加価値産業に転換しなければならない。人件費が上がった後に、こうした産業を自前でつくれるかが大きなカギになる。

そのためには、さらに海外の先端企業やR&D拠点を誘致し、自国産業を育てなければならない。そして、それを担う人材の育成も必要だ。

はたしてこれができるかと危惧する声もあるが、ベトナムは若い国にだけに十分可能性がある。「人口ボーナス・人口オーナス」という経済概念があるが、いまのベトナムは「人口ボーナス」の真っ只中にある。国民の平均年齢は32.8歳。日本の49.1歳を大きく下回っている。この若い力が経済を成長させる。

2045年までに「高所得国」入りを目指す

ベトナムには多くの日本企業が進出している。トヨタからイオン、ユニクロまで、ほぼあらゆる業種の日本企業がベトナムで事業を展開している。ベトナムは、日本の投資国の中でも大きな位置を占めている。

所得水準の上昇は、ベトナムに進出している日本企業にとって、人件費の上昇というマイナス面があるが、消費市場の拡大というプラス面の方が大きい。イオンモールやファミリーマートなどの小売業、あるいは日系の食品・化粧品メーカーにとっては、ベトナムで拡大中の中間層の購買力向上は大きな追い風である。

ベトナム政府は建国100周年の2045年までに「高所得国」入りを目指すという長期目標を掲げている。今回の「高中所得国」格上げは、その中間点のクリアである。

東南アジア諸国では、マレーシアが2030年、タイが2037年、フィリピンが2040年、インドネシアがと2045年を目標に「高所得国」入りを目指している。もし、それがすべて実現したら、東南アジアは世界の中心になっているだろう。

新興ASIAウォッチ/著者:山田順

新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。

山田順(やまだ じゅん)

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。

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投稿更新日:2026年08月07日


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