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ウクライナ戦争が、世界を大きく変えようとしている。東南アジア諸国にとって遠い欧州の出来事とはいえ、今後、東南アジアでも同じようなことが起こる可能性があり、各国とも神経を尖らせている。
しかし、アメリカを中心とした西側諸国が、ロシアに対して発動した経済制裁には、ほとんどの国が参加を見送った。プーチン大統領が起こした侵略戦争が「自由、民権、民主主義」および国際秩序の破壊行為とはいえ、各国とも事情があって、制裁には踏み切れないのだ。
西側諸国でも例えばドイツやイタリアは、ロシア産のLNGと石油がないと経済が回らなくなるため、制裁に抜け道をつくった。経済制裁の目玉は「SWIFT」(国際銀行間通信協会)からロシアの主要銀行の排除だが、ロシア最大のズベルバンクを外してしまった。
東南アジア諸国の場合、このような抜け道以前に、経済制裁そのものへの参加を見送った。ASEAN10ヵ国のうち制裁発動をしたのはシンガポールのみ。アジアの大国インドが参加しなかったのにならったと言える。
今日までの日本の報道を見ていると、いまや世界中がロシアに対して経済制裁を行い、プーチン大統領とロシアを孤立させようとしているように思えるが、実際はそうなっていない。
日本のメディアは、「国際社会」という言葉が大好きで、「国際社会はロシアの力による現状変更に対して一丸となって非難しています」などと報道している。しかし、ここで使われる国際社会は、世界の国々の半分にも達していない。
今回の経済制裁への参加国は、世界196ヵ国中48ヵ国にすぎない。アメリカをはじめとするG7各国、EU加盟国はみな参加しているが、その足並みはバラバラだ。さらに、中国、インド、ブラジルなどの地域大国も参加していない。制裁参加国の人口を足すと約12億人で、これは世界の全人口約78億人に対して2割にも達していない。つまり、日本の報道で言う国際社会とは、世界人口の2割未満の人々の社会である。
そこで、私たち日本はアジアの国だから、アジア全体を俯瞰して見ると、このアジアにおいて経済制裁を発動したのは、日本と韓国、台湾、シンガポールだけである。中東のイラン、サウジアラビア、UAEなども参加していない。
3月2日の国連総会の緊急特別会合における「ロシア非難決議案」には、多くの国が賛成した。ASEANでも、ラオスとベトナムを除くすべての国が賛成をした。しかし、ロシアに対する経済制裁に踏み切ったのは、前記したようにシンガポールのみである。
また、この決議案採択の際に棄権したのは、中国、インドに加え、パキスタン、べトナム、バングラデシュ、スリランカ、モンゴルである。つまり、アジアのほとんどの国は、ロシアを非難はするが行動はしない、経済制裁には参加していないのが現実である。
制裁に参加している日本、韓国、台湾、シンガポールに、オーストラリア、ニュージーランドを加えて、対ロシア貿易を見ると、ロシアの国際貿易全体の1割ほどにすぎない。アジアの影響力はわずかなのだ。
今日までのASEAN諸国のウクライナ戦争に対するスタンスを見ていると、なるべくロシアを刺激したくないという態度に終始している。ASEAN加盟国の外相は、これまで数回、共同声明を出しているが、いずれもロシアを名指しで非難していない。軍事侵攻に対して懸念を表明し、自制と話し合いによる即時停戦を求めているだけだ。
それもそのはず、ASEAN10ヵ国の中には、ラオスやベトナム、カンボジアのような社会主義専制国家や、ミャンマーのように軍部が支配する国家もあるからだ。タイもまだ民主国家とは言い難く、プラユット・チャンオーチャー首相はASEAN各国の大使に対して、慎重に対応していくことを表明している。マレーシアもインドネシアも、スタンスは同じである。
たとえば、3月20日、岸田文雄首相はカンボジアを訪れ、フン・セン首相と会談してロシアの侵攻が国際法違反との認識を共有し、ロシアのウクライナ領からの撤退を求めることで合意した。しかし、会談後の共同声明では、ロシアを名指ししなかった。
それにしても、「世界最大の民主国家を自認するインドがなぜ経済制裁に参加しないのか?」「インドは誰の味方か?」という批判がある。これに対する最大の答えは、インド軍の武器がロシア製がほとんどだからである。
インドは長年にわたり、ロシアからの武器調達によって軍事力を強化してきている。インドは、日本、アメリカ、オーストラリアとの安全保障同盟「クアッド」の一員であっても、ロシアとの武器供与の関係を絶つわけにはいかないのだ。
驚くべきことに、3月25日、インドのジャイシャンカル外相は、インドを訪れた中国の王毅外相と会談し、「一方的な制裁が世界経済やサプライチェーンに与える影響を懸念する」と、欧米が求める対ロシア経済制裁に反対する考えを表明した。
インドのこうした事情は、ベトナムも同じである。ベトナムにとって、ロシアは最大の武器提供国だからだ。これは中国との対抗上で、ベトナムの武器調達の8割がロシアからである。また、ロシアはベトナムにとって貿易相手としては主要国ではないが、冷戦時にソ連陣営だったため、ベトナムの主要企業の経営者には留学経験などからロシアとの人的つながりを持つ人間が多い。さらに、ベトナムは新型コロナウイルスのワクチンでもロシアと協力関係にある。ロシア製ワクチン「スプートニクV」を輸入している。
なお、ミャンマーは国連の「ロシア非難決議案」には賛成したが、その後、一転して軍部がロシアを支持する声明を出した。この国は混乱が続き、もはやまとまりがない。
では、ASEANの中で唯一シンガポールは、なぜ経済制裁に踏み切ったのだろうか?
シンガポールは、西側諸国にならって、いち早く武器や電子製品など軍事転用可能な民生品の輸出禁止やロシアの銀行との取引停止などの措置を発動させた。シンガポールのバラクリシュナン外相は2月28日の時点で、「ロシアのウクライナ侵攻は受け入れらない」とし、ロシアとの経済関係に言及した。これは、シンガポールが小さな都市国家であり、その地政学的な要因からロシアを非難せざるを得ないことを示したものだ。
しかし、シンガポールが経済制裁を発動させた最大の理由は、シンガポールがオフショアだからだ。自由貿易港としてアジアにおける最大のハブになっているシンガポールにとって、輸出入の多くは自国を経由するだけである。また、ロシアとの貿易額はわずかだ。シンガポールの最大の貿易相手は中国であり、中国に扉が開いていれば、ロシアはほぼ無視できる存在だからだ。
このように見てくると、同じ東南アジア、ASEAN諸国といっても、それぞれの国情によってスタンスがバラバラなのがわかる。やはり、一番は経済であり、政治・社会、安全保障はそれほど重要ではない。なにより、ロシアは東南アジア諸国にとって、欧州諸国のように脅威ではない。
東南アジア諸国にとっての懸念、関心事はロシアではなく、経済的にも安全保障上でも、なんと言っても中国である。その次に、日本やアメリカ、欧州諸国である。近年、東南アジアのどこに行っても、中国のプレゼンスが大きいことを感じざるをえない。したがって、ロシアが経済制裁により中国依存を強めれば、それは、なんらかのかたちで東南アジア諸国にも大きく影響する。
私たち日本人は、こうしたことを念頭に置き、今後、東南アジアで経済活動をしていかなければならない。どうやら、ウクライナ戦争は長期化しそうである。ロシアは、いくら経済制裁をしても、これほど抜け道があれば、そう簡単には引かないだろう。経済制裁が効いて、プーチン大統領が失脚するというシナリオは、当分来ないと見ていいではないだろうか。
新興アジアとは、ASEAN諸国にバングラディシュとインドを加えた地域。現在、世界でもっとも発展している地域で、2050年には世界の中心になっている可能性があります。そんな希望あふれる地域の最新情報、話題を伝えていきます。
※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2022年03月28日
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