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現在、日本が2020年の東京オリンピックに向けて、「外国人観光客4000万人」を国家目標に掲げていることは、誰もが知っていると思う。しかし、マレーシアもまた「外国人観光客3600万人」の目標を掲げていることは、あまり知られていない。マレーシアでは、2017年から2020年までを「マレーシア観光年」として、外国人観光客の誘致に力を入れているのだ。
マレーシア政府が推進するキャンペーン「ビジット・マレーシア2020」(VMY2020)のポスターを、空港などで見られた方もいると思う。つまり、日本とマレーシアは、現在、外国人観光客の獲得をめぐってライバル関係にある。そこで今回は、マレーシアの観光大国への挑戦を、日本と比較しながら述べてみたい。
この8月14日、マレーシアの観光ビジネスで、特筆すべき出来事が起こった。それは、5月のマハティール政権の誕生で、観光芸術文化省大臣になったモハマディン・ケタピ氏が、国民の要望を聞いて、「ビジット・マレーシア2020」のロゴデザインを変更することを決めたことだ。
これまでのデザインは、切手のような形で、首都クアラルンプールの象徴でもあるペトロナスタワーを上に配置し、その下の2020の2つの0の部分に椰子の木と海とカメ、オランウータンとテングザルのイラストが描かれていた。ところが、このカメ、オラウータンとテングザルがサングラスをかけたいたので、ブーイングが巻き起こった。ネットには、「センスがない」「時代錯誤だ」「なぜサングラスをかけているのか意味不明」「動物へのリスペクトが感じられない」などの声が溢れた。その結果、署名運動も起こったが、前任の大臣はこの声を無視し続けたのである。
※変更が決定した「ビジット・マレーシア2020」ロゴ
なぜ、マレーシア国民は、このロゴデザインにこれほどまでに怒ったのだろうか? それは、マレーシアがすでに十分に成熟を遂げた国になったこと、それを誇りに思う国民意識も高まったからだろう。いまさら、マレーシアをアピールするのに、カメ、オラウータン、テングザルでもない。それに、サングラスをかけさせるとは何事だ。とくにオランウータンは、人間にもっとも近い類人猿とされ、インドネシアとマレーシアにしか生息してない貴重な動物。しかも、絶滅の危機に瀕している。それをこんな扱いにするとは、動物に対する愛ばかりかマレーシアそのものに対する愛も足りない。そう、国民は思ったのだ。
こうしてロゴデザインは変更されることになったわけだが、今回の決定には、新大臣の地元がボルネオのサバ州だったことも大きく影響した。なぜなら、サバ州にはオランウータンのリハビリセンターがあり、密輸やペットから保護されたオランウータンを自然に返すためのリハビリが行われているからだ。
思えば、東京オリンピックもロゴデザインの変更があった、これは、パクリ疑惑があったからだが、あのデザインには日本を象徴するものはなにもなかった。単に文字をデザインしただけである。観光ビジネスにおいては、その国が持つイメージは本当に大切だ。デザインひとつが、観光客誘致に大きく影響する。つまり、ロゴデザインひとつでも安易につくってはいけないのだ。
それでは、いまのマレーシアの観光ビジネスは、世界的に見てどんな状況にあるのだろうか? 以下、ざっと見てみたい。
国連に世界観光機関UNWTO(UN. World Tourism Organization)という組織があり、ここでは、毎年、国際観光客到着数(international tourist arrivals、海外旅行者受入数)の国別順位を調査して発表している。
この2016年のランキングを見ると、マレーシアの順位は日本を上回っている。1位フランス(8206.0万人)、2位アメリカ(7560.8万人)、3位スペイン(7556.3万人)が世界のトップ3で、4位にアジアから中国(5927.0万人)がランクインしている。以下、このランキングからアジアの国を順に見ていくと、10位にタイ(3255.8万人)が入り、その後の12位にマレーシア(2675.7万人)が入っている。日本はというと、13位の香港(2655.3万人)より下で、なんと16位2403.9万人なのである。ちなみに、日本より下のアジア諸国は、20位韓国(1724.2万人)、22位マカオ(1570.4万人)、25位インド(1456.9万人)、28位シンガポール(1291.3万人)となっている。
日本を訪れる外国人観光客数が、ここ数年、急激に増加しているのはよく知られている。しかし、それでも、少なくとも2016年の時点では、マレーシアの方が日本より多いのである。つまり、日本よりマレーシアの方が「観光大国」と言えるのだ。
さらにもう一つ、注目すべきランキングがある。これは、毎年発表される「世界の観光都市ランキング」(ユーロモニターインターナショナル)で、その最新版(2017年度)によると、世界の観光都市の1位は8年連続で香港。以下、2位バンコク、3位ロンドンと続いているが、ここでもクアラルンプールが10位で、13位の東京より上なのである。以下が、そのランキングだ。
【世界の観光都市ランキング、トップ20】
1位 香港(香港) 2660万人
2位 バンコク(タイ) 2120万人
3位 ロンドン(英国) 1920万人
4位 シンガポール(シンガポール) 1660万人
5位 マカオ(マカオ) 1540万人
6位 ドバイ(アラブ首長国連邦) 1470万人
8位 深セン市(中国) 1260万人
9位 ニューヨーク(米国) 1270万人
10位 クアラルンプール(マレーシア) 1230万人
11位 プーケット(タイ) 1208万人
12位 ローマ(イタリア) 940万人
13位 東京(日本) 927万人
14位 台北(台湾) 923万人
15位 イスタンブール(トルコ) 914万人
16位 ソウル(韓国) 900万人
17位 広州市(中国) 862万人
18位 プラハ(チェコ) 862万人
19位 メッカ(サウジアラビア) 796万人
20位 マイアミ(米国) 783万人
このランキングを見て、違和感を感じないだろうか? なぜ、ニューヨークやローマなどの順位が低いのか?なぜパリは20位以内にも入っていないのか?と、疑問に思わないだろうか?それは、香港が1位であることからわかるように、観光客の中心が中国人であるということだ。いまや、中国人観光客は世界中の都市を訪れ、このようにランキングを左右するまでになっているのだ。
とはいえ中国人は、やはり、まず自国から近いアジアの諸都市に訪れる。それが、バンコクが2位に入っている理由であり、シンガポール、マカオなどが軒並み上位に来ている理由である。東京は、そんな中で、ここ数年、急速に中国人がやって来るようになったというわけだ。
それでは、マレーシアと日本の観光資源を比べてみよう。現在の世界の観光は、団体ツアーより個人ツアーにシフトしている。人々は、お仕着せの旅より自分なりの旅を楽しむにようになった。そのため、かつての観光地、景勝地巡りから、体験型、滞在型に大きく変わっている。こうしたトレンドを引っ張っているのは、もちろん、欧米人の観光客であり、私たち日本人である。中国人観光客は、こうしたトレンドを後追いしているにすぎない。そこで、欧米人が旅先になにを求めているかが、観光ビジネスのポイントになる。
このような視点で見ると、マレーシアは日本よりはるかに観光資源に恵まれている。東南アジアの中では比較的治安がよく、なによりかつて英国の植民地だったから英語がよく通じる。そして、人々はマレー系、中華系、インド系が入り混じり、文化も多種多彩だ。この文化の多様性は、欧米人ばかりか、インド系、アラブ系の人々も引き寄せる。クアラルンプールにはハラールのレストランも多く、エミレーツ航空やカタール航空といった中東のエアラインも毎日3便を飛ばしている。
歴史的な遺産も、日本のように、ほぼ単一の伝統文化による歴史遺産ではないので、東西文明に思いをはせることができる。また、古代遺跡もある。マラッカ海峡の歴史的都市群やレンゴン渓谷の考古遺跡は、マレーシアを訪れたら、足を運んでみる価値は十分にある。自然にも恵まれている。オラウータンの故郷、ボルネオのサバ州にあるキナバル山(標高4095メートル)を擁する自然公園、洞窟群とジャングルトレッキングのグヌン・ムル国立公園は、自然派のツアー客にはとくに人気だ。
さらに、世界有数のビーチリゾートがある。ペナン島、ランカウイ島、ティオマン島などのリゾート・アイランドは、欧米人の長期滞在型観光客が多い。日本には、沖縄をのぞいて、こうしたリゾートがない。さらにカジノのゲンティンハイランド、高原リゾートのキャメロンハイランドもある。もちろん、日本も素晴らしい観光資源がある。とくに温泉は世界一だが、ここを長期滞在型のラグジュアリーリゾートにしないと、欧米人観光客は増えないだろう。
観光ビジネスで忘れてならないのが、コストパフォーマンスだ。富裕層をのぞいて、多くの観光客は、宿泊、食事などのコストにこだわる。いわゆる「コスパ」だが、それでいくと、マレーシア、とくにクアラルンプールは、世界でもっとも安くラグジュアリー滞在ができる都市である。このことは、かつてこのコラム連載でも紹介したが、エクペディア・ジャパンの調査による5つ星ホテルの宿泊代は、アジアでいちばん安い。信じられないかもしれないが、バンコク、ホーチミンより、安いのだ。
リッツカールトンをはじめとするラグジュアリーホテルが、日本円で2万円以下で泊まれる都市は、世界でもここ以外にはない。そのため、私の家内の友人は、年に何度もクアランプールに行き、5つ星ホテルを泊まり歩いて、そこのスパをはしごしている。彼女に言わせると、スパの値段も安く、東京の高級スパの5分の1とか。こうしたことから、クアラルンプールのラグジュアリーホテルには、シンガポール、オーストラリアはもとより、欧米からの宿泊客があふれている。インド、中東からの宿泊客もいる。もちろん、中国人も大勢やって来る。
東京にも、世界ブランドの5つ星ホテルはすべてそろっている。しかし、クアランプールがここまで安いと、競争力では勝てない。それより、東京の魅力は、世界一ミシュランの星がつくレストランが多いという「食」の方ではないだろうか。ただ、ここで一つ指摘しておきたいのは、東京には欧米型のコンドミニアムがほぼないということ。コンドミニアム滞在ができないということも、東京がクアランプールに遅れをとっている原因だ。
では、マレーシアの2020年「外国人観光客3600万人」という目標は達成されるのだろうか?じつは、現在の伸び率でいくと、達成は難しい。2016年2675.7万人から、それほど伸びていないからだ。それに比べると、日本は2017年には2869万人とマレーシアを抜いて、順調に観光客数を伸ばしている。そして、今年(2018年)は3000万人の大台に乗ると予測されている。しかし、2020年4000万人というのは、いくら東京オリンピックがあるとはいえ難しいだろうと見られている。
ただし、皮肉なこと(?)に、マレーシア人観光客は史上最大を記録するのは間違いない。クアラルンプールでは、年に2回、「MATTA Fair(以下マッタ・フェア)」という旅行博が開かれている。ここでの1番人気がいまや日本なのだ。マレーシアでは2013年のビザ解禁以来、日本への観光客数が伸び続けており、2017年は過去最高の43万9500人を記録した。これに気をよくした日本政府観光局(JNTO)は、2018年3月に、これまでシンガポールで統括していたオフィスをクアラルンプールにも設置した。ちなみに、マレーシアへの日本人観光客数は、ここ数年45〜50万人だから、両国はほぼイーブンの関係になった。
今後も日本とマレーシアは、観光大国を目指して、アジアのよきライバルであり続けるだろう。はたして、東京オリンピック・イヤーに、マレーシア人はどれくらい日本を訪れるだろうか?
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※本コンテンツ「新興ASIAウォッチ」は弊社Webサイト用に特別寄稿して頂いたものとなります。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースを手掛けている。
著書にベストセラーとなった「資産フライト」、「出版・新聞 絶望未来」などがある。
投稿更新日:2018年08月27日
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